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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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新たなる出会いってコト? Ⅳ

 息を切らしながら寮に帰り着くと、エプロンを着けたレトリーが元気よく迎えてくれた。火の魔法で料理をしているらしく、じゅうじゅうという肉の焼ける音と香ばしい香りが部屋を満たしている。


「レイシーちゃん、おかえり! ちょっと遅かったね。何かあったの?」


「ただいま、レトリー。……うん、ちょっと色々あってね」


 レイシーはフィザーの事を話そうかどうか迷ったが、やめておいた。レトリーを信用していないわけではないが、庭でこっそり楽しんでいた事を勝手に話してしまうのはよくないように思ったからである。


「今日は作ってくれてるんだね。ごめんなさい……ばんごはんの準備、手伝うよ。もう終わってるなら食後にお皿を洗うね」


「大丈夫だよ! かわいいから、許してあげる! ……それに、いつも寝坊しちゃってるし! それにねそれにね、今日のメニューはレトリー特製、ひき肉のステーキだよ! レイシーちゃんの好物なんだよね?」


「ほんとう!? やったあ、大好きだよ! 」


「えへへ、初挑戦だよ! 召し上がれ!」


 流石火の魔法の使い手と言うべきだろうか、彼女は煮込み具合や焼き加減といった火の使用においてはプロにも届くくらいの腕前がある。反面、水を計ったり調味料を作ったりするのは大雑把にやってしまいがちなのだが。

 そうして目の前に置かれたひき肉ステーキはあつあつの湯気を立てている。鉄板の上のそれにナイフを入れればじゅわりと透明な肉汁がたっぷり、ソースやナツメグの香りと共にあふれ出す。


「うわあ、おいしそう……! いただきます!」


「あっ、中までじっくり焼いたからすっごく熱いよ! 気をつけて!」


 残念ながら遅かった。

 その晩、口を火傷したレイシーが地面を転げ回ることになったのであった。

 それでも、この料理はおいしい。申し訳なさそうにするレトリーに謝ってから、痛む口を水で冷ますレイシーは思った。




「納得いかん!」


 ゴウラは自室で屑籠を蹴飛ばし、中に詰まっていた書き損じの紙が辺りに散らばった。執政官の息子である彼は寮住まいではなく、自らが所有する屋敷の中で最も学院に近い所から通っている。


「うぐっ、いたた……」


 屑籠を蹴飛ばしただけでも、まだ少しびりびりした痛みを感じる。トウタにこっぴどくやられた後、包帯は外れ車椅子からは降りられたもののまだ少し体内が痛む。

 あの後、自分はトウタに一方的に攻撃された被害者だと主張してもみたが、目撃者が多すぎて不発に終わってしまった。執政官の権力を使って除名も考えたが学院内は王族から自治が認められているうえ、無闇にそんなことをしては足がついてしまう。


「モンスターまで送ったというのに……!」


「……ゴーちゃん」


 金髪の女がゴウラの横で、心配そうな目を向けている。


「どうしてそんなにケンカばっかりしようとするの? なんも良いことないよ。早くトウタにも謝ろうよ」


「うるさい! 僕があいつから受けた屈辱がどれほどのものか、お前は知らないだろう!」


「……いや、最初に友達になるの断られて逆ギレしてケンカ売ったとこから全部見てたけど……」


「ええい、改めて言葉にするな! 恥ずかしいだろ! それより今日は協力者を呼んだんだ。そいつらさえ来れば、僕は忌々しいトウタを倒せるだろう」


「え、あのモンスターを貸してくれた怖い人以外に、まだいるの……?」


「そうだとも! ……お、馬車が来られたようだ! 入って良いぞ!」


 しばらくして入ってきたのは数人の警護兵と、女が二人。棒のように痩せた女と、酷く肥えた丸い女だ。


「ゴウラ様、お会いできて光栄です」


「この度はお招きいただき誠にありがとうございます」


 女二人は恭しく頭を下げる。


「紹介しよう! 西の辺境からお越しいただいた、ヴァレリオン家のご息女のお二人だ」


 

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