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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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新たなる出会いってコト? Ⅱ

先週は更新できず申し訳ございませんでした。時間を見つけて頑張りたいと思います。

 トルーデの授業は朝一番だったせいで、レイシーの寝覚めは最悪だった。重い足取りに鞭打って厳しいメニューをこなし、どうにかこうにか乗り切った。

 そして今は昼前の授業。科目は魔法の利用法だ。

 この授業は、魔法がどのように生活に役立てられるかを例を用いて紹介していくものだ。魔法使いにとっては卒業後の進路を考えるのに役立つほか、使えない者でも日常で魔法とどう付き合うか考えることができるという。

 担当する教師はあの入学検査の時にお世話になったあの試験官だ。きっちりしたボブカットの髪型と丸めがねが特徴的な彼女はあの時レイシーを擁護してくれたこともあって、今でも恩義を感じている。

 しかし、レイシーは彼女の話を聞きながらもうつらうつらと前後に揺れていた。

 

「……」


 頭がぼうっとする。トルーデとの鍛錬で吹き飛ばされた眠気が疲労を連れて戻ってきたかのように、レイシーの視界と思考両方に靄をかけている。


「いけない、ちゃんと話を聞かないと……」


 レイシーはふるふる頭を振った。本を書くなら、何事も知っておいて損は無いだろう。睡眠は帰ってからゆっくり取れば良いのだ。

 それに次の時間は昼休みだ。レトリーと話しながら食事をとって、まとわりついてくる睡魔を追い払おうとレイシーは思うのだった。




「それでは、本日はこれでおしまいです。次回は魔法の属性ごとの職種を見ていきましょう」


「はー、終わった!」


 授業が終わり、ぐぐっとレイシーは背伸びした。窓から差し込む光が気持ちいい。隣で授業を受けていたレトリーも、同じように一息ついていた。


「んー、伸びするレイシーちゃんもかわいいよぉ! なでなでしてもいいかな?」


「いいよ。ごはん食べたらね」


「ほんと!? だったら、早くごはんいこう!」


「うん、今日は辛いものがいいな……それか、うんと甘いもの」


 レトリーを追いかけて荷物を纏めて足早に去ろうとすると、足下に何かが落ちていた。


「……あれ?」


 真っ赤な木の実だ。つやつやしており、新鮮なのが一目見て分かる。

それにしても、どこからこの木の実は来たのだろう。真昼の日光を通している窓は完全に閉まっているのだが。

 とりあえず拾おうとすると、ぱち、と横から伸びてきた手に当たった。


「あっ……」


 綺麗な手だった。その手の持ち主は夜空のような群青色の髪を長く伸ばした、儚げな美少女。しかしこちらと目が合うと、すぐに澄んだ湖のような色の瞳をそらしてしまった。


「ご、ごめんなさい……」


 消え入りそうな声で呟くと、彼女は手を引っ込めようとする。レイシーはそこに木の実を優しく置いた。


「あなたのものなの?はい、どうぞ」


「あ、ありがとうございます…!」


 彼女は何度も何度も御辞儀をすると、兎のように素早く去って行った。おかげでレイシーの様子を見に来たレトリーとぶつかってしまった。


「わっと! ごめん、大丈夫? あなた、フィザーさんだよね……」


「あ、あなたは……ごめんなさい……!」


 彼女はレトリーにもぺこぺこ頭を下げ、逃げるように姿を消してしまった。


「……行っちゃった。それは置いといて、レイシーちゃん、どうしたの?」


「あの人、一緒に授業を受けてた人だよね。」


「うん。あの人はね、フィザー・ランバルディ。名前の通りランバルディ家のお嬢様だよ」


「詳しいんだね。ランバルディ……確か、地方領主との交渉を担当している、王都の貴族だったよね」


「そうそう、フィザーさんはそこの長女だって聞いてるよ。だけどあの子、私は少し苦手かな……なんだか、話しかけても迷惑そうにするって言うか……」


「嫌いなの?」


「そうじゃないよ!でも、なんだか、こっちが話しかけることが申し訳なくなってくるんだ……」


「……そうなんだ」


「いつも寂しそうにしてるし、私で良ければ話し相手になってあげたかったんだけどな……」


 どうやらレトリーは彼女と過去に友達になろうとして失敗したらしい。いつも元気なレトリーは、珍しく浮かない顔をして話した。


「……大丈夫だよ。ちゃんと謝ってくれたし、きっと悪い人じゃないよ。いつかまたお話しできるときまでのんびり待っていよう」


「……そうだね。そうと決まれば、まずはごはん! レイシーちゃん、いこう!」


「うん!」

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