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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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新たなる出会いってコト? Ⅰ

 入学から何週間かが経った。

 朝はだいたい日の出前に起きる。レトリーを起こして朝食を作ると、寮を出て午前の授業へ。食堂で行う昼食は、疲れてきた脳に栄養を補給できる至福の時間だ。そして午後からの授業を終えたら学生寮に戻るのみだが、授業内で気になったことがあれば図書室で調べたりする。

 夕食はレトリーも手伝ってくれる。寝坊したときは「お詫びだよ!」と言いながら彼女が全部作ってくれることもあった。レイシーもまれに読書に熱中しすぎて帰るのが遅れてしまうことがあり、そういう時はとても有り難かった。

 それが終わったら、翌日の準備を調えて就寝だ。

 休日は週二日だが、たいていレトリーと一緒に過ごした。広大な校舎にはまだまだ発見がたくさんあったし、来て間もない王都の散策も少しずつ進めている。この生活に慣れてきたら、もっと色々な活動もしてみたいところだ。


「ふぅ……」


 レイシーは椅子に座って、空気が抜けるような長い息をついた。

 窓の外にはすっかり夜の闇が落ち、他の寮の光が闇夜のろうそくのように光っている。激動の入学式、トウタとルナの決闘も無事終わったものの、魔法学院での授業が本格的に始まってからは息つく暇も無いほど忙しく感じていた。勿論、趣味の読書に興じる時間もありはするのだが、新しく始まったこの生活に身体がついてきていないのかもしれない。


「さて、と……」


 そんな中でも日記を書くことだけは怠らなかった。同室のレトリーの寝息を聞きながら、レイシーはランプの横でペンを握る。


「今日は、魔法の構築理論と魔法史と……構築理論は面白いけど魔法史の先生はちょっと苦手だなあ。まだわたしの入学に反対してるし……仲良くなれないのかなあ」


 日記帳の上をさらさらと、ペンが動き出した。新しい生活は良くも悪くも発見が一杯で、書くことには困らない。ペンは清流のように軽やかに動く。

 思い出だけではなく、魔法に使うマナについて、魔法の研究史について。学んだことも復習ついでに書いておく。

 授業はクラス0ということでトウタと同じだが、授業まで同じではない。もっとも、魔力が全くないレイシーと六属性の魔法が使えるトウタとではプログラムが違うのは当然ではあるが。

 魔法を使ってみる機会も何度かあったが、レイシーは小石どころか砂利すらも動かなかった。


「よし、書けた。あとは明日の確認を……うぇ」


 練習着を詰めた鞄を見たレイシーは顔をしかめた。

 魔法が使えないレイシーの魔法の実践授業は、トルーデとの一対一だ。


「あんたには、もう力は十分備わってる。必要なのは技。格闘技ってやつさ」


「カクトウギ……って、何ですか?」


「要は、力の振るい方さ。アンタはあたしすらしのぐ馬鹿力を持っているが、それを使う技が伴っていないってことだ」


 レイシーの困り顔を見てイメージを掴み損ねていると、トルーデは見抜いていた。


「例えば、この前モンスターと戦っただろう。あの時は何とかなったかも知れないが、攻撃が何も当たらなかったことはあるかい?」


「そういえば……あります。少し前に戦った人がもうでした。あとは……えっと……」


「思い出せないけど複数回あるって事だね。じゃあ、あたしとの授業では、そいつらに拳を当てられるようにしよう」


「わかりました! では、わたしは何をすれば良いですか?」


「ひひひ、まずは腹筋背筋腕立てを限界までやるんだ」


「……え?」


「基礎トレもしないで格闘技が出来るかって話さ。さぁ、やったやった!」


 怪力を持つレイシーも、限界まで筋肉を痛めつければ筋肉痛が起きる。あの後身体がばきばきに痛んでしまい、次の日も一日中痛みが取れなかったことを思い出す。あの時は椅子に座るのも、ベッドに横たわるのも厳しく、レトリーやトウタをすごく心配させてしまったものだ。

 そんな悪夢の鍛錬が明日の時間割に含まれていることが、レイシーのしかめっ面の正体だ。


「……明日も頑張ろう」


 逃げてはならない、やるしかない。自分に言い聞かせながら、レイシーはランプの明りを消した。

12/12

途中で文章が切れていたので修正いたしました。申し訳ございませんでした。

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