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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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早速だけど大騒ぎ! Ⅱ

「そこっ!」


 銅鑼が鳴り終わるか否かと言う速さで、ルナはトウタの顔に手をかざす。すると、トウタの頭の周りに水の球が出来上がっていく。


「うわっ、なんだこれ!」


「私の属性は水属性。これで決める!」


 やがてトウタの顔は水の球にすっぽり飲み込まれてしまった。彼は水球を外そうとするが、水が相手とあっては腕が突き抜けて終わるだけだった。


「く、苦しい……息が!」


「ギブアップすれば許してあげますよ? ……せっかくの戦いを終わらせるのは些か残念ではありますけど」


 トウタは剣を取り落としてもがき続けるがその甲斐なく、とうとう闘技場に膝をついた。観客から歓声が上がる。


「トウタくん、大丈夫かな……」


「……わたし達から手出しはできない。信じよう」


 確かに試合の内容としてはルナの技がきっちり決まったことで盛り上がる場面なのかもしれないが、その技を食らっているのは自分の親友である。レイシーもレトリーも心配の表情を隠しきれなかった。


「まずい、意識が……」


 薄れ行く思考でトウタは考える。自分はあらゆる魔法が使えるが、この状況を打破するには。


「この世界で水に強い属性は土。だったら!」


 トウタは力を込め、自分の顔の周りに土を作り出した。土は水を吸収して泥となり、べしゃりと地面に落ちる。水が土に吸収され無くなったことで、トウタは再び空気を吸うことができた。


「ふむ。適切な魔法が使えない人なら今のでお終いなんですが。さすがはクラス0、少しはやるようですね」


「会長こそ。いきなり殺意マシマシでびっくりしましたよ」


「全力でお相手するのが私の流儀ですから。さて次は、剣での戦いをいたしましょうか」


 ルナの剣の切っ先が、トウタの喉元に素早く突き出される。彼は後ろに飛びのき、危ういところで回避した。


「うおっと!」


「躱しましたか。ですが、いつまで続きますかね?」


 ルナがトウタを追って走り始める。その華麗な姿とは裏腹に、獲物を追う狩人のように素早く、鋭い動きだった。

 魔法を使おうとしても狙いを定めようとしたときには既にルナは剣で攻撃してきている。まるで熟練の剣士のような速さだった。ルナは「剣での戦いをしよう」とは言ったがトウタの剣は最初に落としてしまったため防ぐことはできない。今は逃げていなすのが精一杯だ。


 しかし追われていく内に、トウタはルナの狙いに気づいてきた。


「まさか……会長は俺を攻撃し続けることで、反撃の余地を与えないようにしている!?」


「気づきましたか。魔法での勝負は属性の相性が物を言う。しかし魔法の能力の多彩さ、という点では全属性を扱えるあなたに私は敵いません。しかし剣術と体術ならば如何でしょう?」


「くっ……」


「それに、魔法は使い方次第。こんなこともできるんですよ?」


「えっ?」


 剣を避けたトウタは突然地面に足を取られ、転んでしまった。見れば、地面がいつの間にかぬかるんで泥沼のようになっている。ルナはトウタを追いながらも、地面に水の魔法を使い罠を張っていたのだ。


「引っかかりましたね。剣ばかりに意識を持って行かれているからですよ。とどめです!」


「くそっ、こうなったら……! 土属性魔法だ!」


 トウタはルナではなく、自分の周りの地面に手をかざす。


「盛り上がれ!」


 闘技場がぐらりと揺れ、大きな土の壁がトウタを囲うように隆起し、ルナの剣を止める。


「なるほど。狙いを定めず、とりあえず私との距離を取るための魔法。そう来ますか」


「よし、これなら!」


 トウタは壁の裏から飛び出し、ルナに狙いを定める。


「いけ、土魔法!」


 盛り上がった地面が砕け、無数の石礫となってルナに襲いかかった。


「やりますね! あくまで水魔法の弱点を突いていくおつもりですか」


 ルナも水を飛ばすなどの飛び道具にできる魔法は持っているが、相手は弱点の土属性。よってルナは距離を離す意外に対抗策は無いのであった。


「今のうちに……!」


 トウタは金属性魔法で即席の剣を生成する。試合用の剣を模して、殺傷能力は最小限に抑えた。

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