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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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早速だけど大騒ぎ! Ⅰ

 それから翌日、闘技場での決闘が行われた。


「観戦はこちらからです」


 指示に従って、レイシーとレトリーは闘技場の観客席に向かう。

 周りは人でごった返していた。制服を着た人もいれば、教師でも生徒でも無い、街からやって来た人もいる。


「闘技場って初めて来たけど、色んな人が来るんだね」


「そうそう、大人気のスポーツだからね! なんでも前まではどちらかが死ぬまで戦ってたらしいけど、新しい王様になってから武器を試合用にして、審判も置いて、降参のルールがちゃんとできたんだって。そこからもっとたくさんの人に人気が出てきたんだよ。そこに学園の有名人二人が戦うっていうんだから、もう大人気間違いなしだよ!」


「ふーん。そうなんだ。詳しいんだね」


「ふっふっふ、私も推しの剣闘士がいるんだ! 色々推してきたけど、今の推しは『雷撃』のパックっていう人なんだ。金属性魔法と剣術を組み合わせたすごい戦いをするんだよ!」


「今日はトウタを推さなくっちゃね」


「勿論。きっと大丈夫だよ」


 楽しそうに話すレトリーを見ているとほっこりして、こちらまで楽しくなってきた。


 観客席に座ると、丸いフィールドが一望できた。

 フィールドは土だが掃除されていて石ころ一つ無く、戦いに集中できる作りになっている。数え切れないくらい多くの人々がぐるりと座っており試合が始まるのを今か今かと待っている


「本日はよくお集まりいただきました!王立魔術学院主催、特別エキシビションマッチへようこそ」


「うおおおおおおおお!」


 どこからともなく聞こえてきた声に、人々が歓喜の声を上げて応える。


「すごい大声だね。こっちまで届いてる」


「これ、大声じゃ無いらしいよ。魔法で声を増幅させて、耳に届けてるんだって」


「すごいなあ。何属性の魔法なんだろう」


「これからゆっくり勉強していかないとね……あっ、みて! トウタくんが来たよ!」


 闘技場の端にある扉が開き、制服姿のトウタが現れた。手には試合用の剣を握っている。


「まずはこの男! 全属性適正あり、異例のクラス0! かつて王都を救った英雄、トウタ・オカヤマ!」


「うおおおおおお! トウタ!」


「お前に賭けてるんだ! 頼むぞ!」


 てっきり罵詈雑言が飛び交うかと思いきや、むしろ喜んでいる観客の方が多くてほっとした。

興奮した客の喧噪のせいで何とアナウンスされたのかよく聞こえなかったが。

 彼が遠慮しがちに観客に向けて手を振っていると、反対側の扉が開き始める。


「対するのは学園始まって以来の秀才! 頭脳明晰、容姿端麗、つまり才色兼備! 王立魔法学院クラス5筆頭にして現役生徒会会長、ルナ・シャイニングナイト!」


 トウタと違って彼女が着ていたのは制服ではなかった。

 それはまるで舞台役者の衣装のようにも、騎士の礼服ようにも見えた。

白銀色に輝くジャケットとすらりとしたスラックス。金色のボタンで止められた、真っ赤な前掛けがマントのように翻る。磨き上げられた両肩の肩章が日光で眩しい。

 華美でありながらもその印象は一言で言うなら「戦闘服」だった。勇壮さと華麗さを兼ね備えた出で立ちに、あちこちからため息が漏れる。


「か、会長……! きれいです……」


 トウタがルナの姿にうっとりした顔を浮かべているのが見える。

 普通なら戦う前なのに大丈夫か、と思ったところであるが。心惹かれてしまうのも無理は無いと、レイシーもレトリーも、もしかすると観客全員が思っていたかもしれない。


「お褒めの言葉、ありがとうございます。私は会長ですからね、見た目にも気を遣わなくてはなりません」


 ルナは長い茶髪をふわりとなびかせる。


「そして何より、恥ずかしい戦いはできません。全力でかかってきなさい」


「……はい!」


「ふふふ……楽しみですね。では、行きますよ」


 二人が剣を構えてにらみ合うのに合わせ、試合開始の銅鑼が鳴らされた。

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