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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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とある少女の入学当日 Ⅷ

「そうして泣き喚いて許しを請えば、皆も機嫌を直すと思う。それだけじゃない、試合前にちゃんと私が事の説明もするよ。生徒会権限を使えば事実の宣伝はたやすい。君に覗き魔の汚名は被らせない」


「それ、後半だけでいいんじゃ……」


「うん、決闘の意味ある?」


「まぁ、わがままを言うと決闘したいだけなんだけどな! ランク0の君の力が知りたいんだ。勿論ものすごい物を見せれば、覗き魔の印象も薄れるだろうというのもあるが」


「えぇ……」


 レイシーとレトリーは少し困惑しているが、当事者であるトウタは乗り気のようだ。


「俺はやりますよ。会長が望むなら、相手になります」


「うむ、うむ! 良いぞ!」


 目が爛々と輝いている。嬉しそうで大変いいことだが、危ない人のようにも見える。


「先ほども言ったが、勿論負けてくれたほうが女子達の溜飲は下がるだろう。しかし、君が望むのならば……本気でかかってきてもいいんだぞ?」


「え、それだと意味が無いような」


「気にするな! 細かい事は試合が終わってから考えればいい! それにこの学校の歴史に残るような試合をすれば、くだらない風評など流れてしまうだろう!」


 大口を開けてルナは笑った。真っ白な歯がまぶしい。


「い、意外と激しいんだね……もっと穏やかな人だと思ってた……」


「うん、もっと優しい人だと思ったよー……それと、なんかいつも光ってるような」


「なんだ、激しさと優しさを併せ持っちゃいかんのか? 別にいいだろう! 会長なのだからな!」


「というか、入学式の時としゃべり方違うような……」


 レイシーの言葉でルナははっとした。


「あっ……いけません。ついこのしゃべり方が出てしまいました。わくわくすると、つい荒っぽい口調になってしまうのです」


「わくわくって……俺と戦うことにですか」


「ええ、勿論。今日はまだ授業準備日だから、試合は明日行いましょう。場所は学校の……いや、学校近くの闘技場を借りましょう」


「トーギジョー?」


「拳闘士同士が試合をするのを見ることができる場所だよー。よく母に連れて行って貰ってたなあー。でも、わざわざ闘技場を使うんですか?」


「ええ。私はクラス5のトップ。対するあなたは計り知れない力を持つクラス0。学校の設備だと吹き飛ばしてしまいかねませんし、丈夫なところでやった方がいいかと思いまして」


 声から感じられるのは驕りでは無く自信。自らの実力を正しく認識し、未知数の相手の力と掛け合わせたらどうなるか推理した故の判断であるらしい。


「いいでしょう。当日はよろしくお願いします」


「よろしくお願いしますね、トウタさん。あなたの戦いを楽しみにしています」


「……」


 学園が誇る秀才・クラス5の生徒会長と覗き魔疑惑のかかった新入生・クラス0の行う試合の知らせは瞬く間に学校を駆け巡った。


「覗き魔なんだろ?」


「でも会長が言うには、事故だったって話だぜ」


「裸を見られたことに変わりはないわ! あんなやつ、会長に吹き飛ばされればいいのよ」


「そうよ!会長が負けるはず無いわ。無様な姿を笑ってやりましょう!」


「俺はクラス0に一票! どうせ会長が勝つだろうけど、実力未知数のヤツが勝ったらロマンあるせ!」


 わいわいと騒ぐ生徒達を、車椅子に乗って遠くから見ている男がいる。彼は制服こそ着ているものの全身に包帯を巻いており、今にも死にそうな大けが人のような出で立ちだ。

 その横にちょうど女が戻ってきた。


「ゴーちゃん……言われたとおりにしたけど……」


「わかってる! お前はよくやってくれたが、あいつめ、会長の力を借りるとはな」


 ゴウラはぎりりと歯を強く噛む。


「もうやめよう。あいつの事なんてもう放っておこうよ」


「このまま引き下がれるか! 許さないぞトウタ・オカヤマ。ボクに逆らった罪を、仲間もろとも償わせてやる! そのためなら、アレを使うことも厭わん……」


「……アレって?」


「そうか、お前にもまだ話していなかったね。……ふふふ、今度の試合が楽しみだよ」

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