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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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とある少女の入学当日 Ⅱ

「レイシーちゃんのお友達なら私もお友達だね! 私はレトリー! クラス3の新入生なんだ。属性は火だよ! クラス0なんて珍しいなあ、よろしくね!」


「それを言うならレイシーも無属性で珍しいぞ……まぁ、いいか。俺はトウタ。クラス0だ。よろしくな」


 彼女のテンションにトウタも少したじろいでいるようだが、二人が仲良くなってくれるようでよかったとレイシーは思った。


「それじゃあ三人で行こうよ。はぐれないように、トウタも手を繋ごう」


「そうだな!」


 差し出した手をトウタが取る。レイシーを真ん中にして手を繋いだ三人は、増えていく生徒達の中を歩きだそうとした。


「いました、あれがトウタです」


 その時、後ろからやけに目立つ生徒の一団がずかずかとやって来た。

 背も高く体格もがっしりした屈強な男達で、周囲の生徒を威圧し道を空けさせるには十分だった。リーダー格らしき男は周囲と比べると細身だが、長身は負けてはいない。金髪をオールバックにしてきっちり身なりを整えているが、その顔には意地悪そうな笑みが刻まれていた。そしてリーダー格らしきその男の腕にしがみつくように一人の女性がくっついている。くらくらしそうなほど強い香水をつけているのが離れていてもわかった。

 そのリーダー格の男はトウタにまっずぐ近づいてきた。


「トウタくん、この人もお友達なの? はじめまして、私はレト……」


「どけ、女!」


「きゃあっ」


 自己紹介しようとしたレトリーが乱暴に突き飛ばされる。


「ひどい! 何をするの!」


「ふん、お前は無属性の娘だろう。お前にも用事は無い、消えるがいい」


「……」


 レイシーは無言で彼をにらみつけるとレトリーを助け起こした。

 男はその様子を鼻で笑い、トウタに向かい合った。


「やあ、ボクはゴウラ。クラス5、火属性さ。王都の執政官の息子で、東の地区を管轄している。キミと同じ新入生だよ」


「……それで?」


「是非キミと友達になりたくってね。クラス0の力と能力を、是非ボクに伝授して欲しいんだ」


 ゴウラが真っ白な手袋をした手を差し出した。


「ああ、パスするよ」


「なに、このボクの申し出を断ると? 理由を聞かせて貰おうか」


「あいにく弟子は募集してないんだ。俺の友達に酷いことをする前なら考えたかもしれないんだが」


「ほう、あれが友達なのか。クラス3と無属性など、キミには釣り合わない。人付き合いは選びたまえ」


「今の発言でもっとイヤになった。帰ってくれ」


 ゴウラの顔から笑みが消えた。もう不快さを隠そうともしていない。


「むむむ……僕の言うことが聞けないのか! だったらいいだろう! 友達になるのはやめだ。僕の手下になって貰おう!」


 ゴウラは隣の女性を下がらせるとその手に巨大な火球を生成した。周囲の生徒達が悲鳴を上げ、一目散に逃げていく。

 すごい熱風だ。少し離れたところにいるレイシーすら、焼けてしまうかと思うところだ。


「レトリー、大丈夫!?」


「わ、私は平気だよー! トウタくんは……」


「……わかりやすくて良いな。俺もお前が気に入らなかったところだ、喜んで喧嘩を買わせて貰うぜ!」


 トウタの手に現れるのは水の玉。どんどんどんどん膨れ上がり、家一つ飲み込めるほどに大きくなった。


「ボクに、従ええええええ!」


「イヤだねえええええええ!」


 火が爆発に、水が激流になってぶつかり合った。鼓膜が破けるかと思うくらいの衝撃に空気が震えた。レイシーはレトリーを掴んで地面にしがみつく。


「レトリー、大丈夫!?」


「大丈夫だよー! これ言うの今日二回目ー!」


 水蒸気がもうもうと上がり、霧に包まれたように見えなくなった。レトリーを決して離さないように掴み、勝負の行方をこの霧の中から捜す。


「ば、馬鹿な……ボクの魔法が……」


 地面に倒れ滝に投げ込まれたかのようにずぶ濡れになってしまったゴウラと傷一つなく立っているトウタを見つけたとき、二人の少女は歓声を上げた。


「やった! みてレトリー、トウタが勝ったよ!」


「すごーい!」


「帰れ。今ならまだ許すよ」


「言うことを聞かないばかりかボクに命令するかぁっ! 許さないぞ! おい、お前達!」


「はい、ゴウラ様!」


 号令と共にレイシーとレトリーの周囲を取り巻きの大男達が取り囲んだ。戦いのどさくさに紛れ、こちらに近づいてきていたようだ。そしてその大半が獲物を見つけた獣のような下卑た笑いを浮かべている。


「ボクの言うことを聞かないと、手下達がうっかりお友達に傷をつけてしまうかもね?」


「お前、汚いぞ! 二人は関係ないだろ!」


「キミと関係があるなら、もう無関係ではないのだよ。それにボクの手下は女が大好きでね……可愛がってもらえるだろうね! アッハッハッハッハ!」


「あああ……」


 体格差のある相手に囲まれたレトリーは怯えきってかくかくと震えている。

レイシーは立ち上がり、男達を相手取った。


「やめなよ。先生がこのことを知ったら、きっと怒られるよ? 怪我をする人が出たら大変だよ?」


「ゴウラ様の権力を舐めているな。その気になればこの程度、もみ消せるさ」


「おい、大丈夫か! 今、助けに……」


「おっと、これ以上動くと男達はあいつらを襲うぞ。さぁ、トウタ。早く跪いて靴を舐めるがいい!」


 ふんぞり返って勝ち誇るゴウラ。歯噛みするトウタ。動けないレトリー。その後ろからレイシーはウインクした。

 「まかせて」という意味を込めて。



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