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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第三章 少女と魔法のがっこう
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落ちこぼれから始まる学園生活かと思ったら、特殊クラスに入れられた件 Ⅲ

「おっ、気に入ってくれて良かった。それじゃ、俺もいただきまーす」


 ずるずる、ずずずー。トウタは美味しそうに麺を啜る。


「普通は音を立てながら食べるのは行儀が悪いんだけどなあ。こうやって味わうのも、ラーメンの醍醐味さ」


「トウタ、それなに?」


 彼はレイシーのようにフォークを使わず、日本の細長い棒で摘まむようにして麺を食べている。


「これは箸っていう道具だよ。ここでは珍しいだろ?」


「知らなかった。箸もラーメンも知らないことだらけだよ。ラーメンってどこの地方の料理なんだろう?」


「どこの地方の料理でも無いと思うよ。俺が考案したからな。箸も俺の要望で置いて貰っているんだ」


「ええ! トウタが!? すごいなあ……一体どうやって思いついたの!? その時何をしてたの!?」


「いや、俺が思いついたわけじゃないんだけど……昔食べてたというか、その……何というか……」


「言いにくいの?」


「……ああ」


「じゃあ、今後の楽しみにしておくね」


 レイシーは好奇心をぐっと抑えた。もしかしたら人に言えないことなのかも知れない。そういうことなら無理に聞かず、いつか自分から話してくれることを願おう。


「でも、その前に自分でも当ててみるよ。そのためにはもっと食べてみないとね! おかわり行ってくる!」




「あぁ~、食べた食べた……」


 膨れたお腹をぽんぽんはたき、レイシーは満足げな笑みを顔いっぱいに広げていた。


「五杯も食べるなんて……こんな小さい子なのに」


「わたし、食べるの大好きなんだ! あんなに美味しいものならたくさん食べられるよ!」


「それにしても、すごすぎるというか……」


 トウタも驚きを隠せないようだ。


「ところでそんなに食べて、午後からの魔法力検査は大丈夫か?」


「……あぁあっ!? 忘れてた!」


 完全にラーメンの虜になっていたレイシーの背筋がぴんと伸びる。食堂を出てからはトウタについて行くままに歩いていたが、そういえば、検査の会場に向かって歩いているのだった。


「何をするのかな? 食後だから、あんまりばたばた動くものじゃないと良いけど……」


「大丈夫大丈夫。魔法が使えるかどうかを見るだけの試験だよ」


「そっか。ならよかった」


「だからといって、満腹で寝ちゃわないようにするんだぞ」


「心配してくれるの? 大丈夫だよ。絶対、ちゃんとやるからね」


 二人が話しながら歩いていると、やがて検査の会場となる建物が見えてきた。今までばらばらに歩いていた学生達が一本の長い列になって並んでいる。


「検査は一人ずつ行います! 一列になってお並び下さい」


 門のところにいた人と同じ服装の女性が列を整理している。二人は指示通り列の中に入っていった。


「どんな風に検査をするんだろう。知りたいなあ」


 レイシーは背伸びして覗こうとしてみた。


「おっ、前が見たいか? 肩車してあげよう」


「ありがとう、トウタ!」


 トウタによって身長の大きく伸びたレイシーは、列の一番先に目を凝らす。一番先頭で検査を受ける生徒たちは何やら石のようなものを渡され、それに力を込めようとしているようだ。


「あの石は魔法力を感知する特別な石なんだよ。あれで魔法の習熟度を計って、それに基づいてマナの属性とクラスが決定されるんだ」


「マナの属性は知ってるよ。たしか属性は7つあって、金と、水と火と、木と土と、あと光と闇だったよね。生まれつき決まる、その人が持ってる魔法の適正で、使える魔法の種類がそれで決まるって昔教えて貰ったことがあるよ。だけど、くらす? って言うのはは初めて聞いたな」


「おっ、物知りだな。いいところの屋敷にでもいたのかな? じゃあ属性の方の説明は置いといて……クラスっていうのは簡単に言えばレベル別に生徒を分けて勉強させるって事かな。クラスは全部で5つあって、クラス1から5まであるんだよ」


「なるほど。魔法ができればできるほど、いいクラスに入れるんだね」


「そういうこと。まぁ、実力が計れない、とかの理由で特殊クラスもあるみたいだけど。そっちは滅多に出ないらしいからな……クラス0って言うらしいな。異例中の異例だよ」


 検査では何も起きない人もいれば、石が光る人もいた。炎が上がったり、風が吹いたりする人もいた。

 そして真剣な顔の試験官がその結果を詳しく書き留め、「あなたの属性は火、クラス2」「あなたの属性は水、クラス3」というように属性とクラスを伝えていた。何も起きなかった人も何かしら言われていたことを見ると、どんな結果でも判定はされるらしい。試験官の後ろには学生より20年は年上の人たちが7人座っている。細かく検査の様子に目を配りながらもどっしりと構えるような座り方で、どこを見ても威厳たっぷりだ。あれが先生だろうか。


「全力で頑張ろうね」


「そうだな、一緒に頑張ろう。 ……おっ、俺の番だ!」


「トウタ・オカヤマ」という名前が前から呼ばれると、彼は元気よく返事して試験官の前に座った。


「よし、いくぞ!」


 トウタが石を持つと、空気がずっしり重みをもったように感じられた。何かが起きる。レイシーの直感がそう告げる。


「はあぁっ!」


 炎、風、水、雷が混ざり合った静かだが熱い衝撃が検査会場を迸る。会場内が明滅し、一瞬の嵐が吹きぬけ、ありとあらゆる人々の注目を奪っていく。


「何だ、今のは!?」


「すごい……」


「素晴らしいな。この学校始まって以来の逸材だ」


後ろから生徒達の、前から先生たちの感嘆の声が上がった。


「あなたは、全属性に適正あり……クラス0です!」


 クラス0は異例中の異例。魔法の能力を数値化できない場合に配属されるクラス。


「素晴らしい魔法力だ。さらに複数の属性を持つなど前代未聞。クラス5決定かと思ったが、我々教員さえもその力を正当に評価できない。よって、今回はクラス0とさせて貰うよ」


「ありがとうございます!」


 拍手する先生たちにトウタは頭を下げた。

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