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レイシーのぼうけん  作者: 偶像兎
第二章 少女とたたかいの鬼
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夜に働く Ⅰ

 その男は汚れた鉱山に似合わない小奇麗な服装をしていた。もしかすると、レイシーが以前に会ったラムラよりも貴族らしい格好かもしれない。

 また、ラムラほどではないが彼もでっぷり太っていた。骨と皮ばかりになった子供たちと並んだ様子を見れば、誰もが文字通り「私腹を肥やしている」と思うだろう。

 彼の仕事は子供たちの仕事を監督することだ。怠けている者はもちろんの事、動けなくなった者、倒れた者、気絶した者、死んだ者。それらすべてに鞭打って、無理やりにでも立たせるのだ。死んでいた場合は別の子どもを呼んで、運ばせて捨てる。たまに死体を運ぶ子どもも死ぬことがあるが、そうなるのは面倒が増えて嫌いだった。正直この仕事には飽きて来ていたが、コルベスから直接頼まれた仕事であるので仕方がない。


「……あの」


「何だ?」


 一人の少女が声をかけてきた。酷い怪我をしているらしく、全身を包帯で覆っている。


「仕事をさぼるな。早く仕事に戻れ」


「いえ、その……今夜、どう、ですか……?」


「今夜……?」


「はい。私を、抱いてほしいんです。貴方の部屋で、情熱的に」


「ほう……」


 監督の男は舌なめずりをした。この娘は傷こそ多いものの声は凛として透き通っており、包帯の下の顔は美しいのだろうと察させてくれる。


「そういえばこの声は……お前、昨日のサボり娘か? ぎゃーぎゃー騒いでた……思い切り殴ってやったのに、俺に抱いてほしいのか?」


「はい。貴方に殴られてから、身体が疼いて、火照って、どうしようもないんです。ああ……今すぐここで、もう始めてほしいくらい……」


「ほう……お前、見どころがあるな」


 昨日の彼女は鼻血を吹き出して血塗れだった。どんな顔かまでは詳しく覚えていないのが口惜しかったが、少女の発情した様子を見るとどうでもよくなった。

 子どもとは思えないほど艶のある声で呟く少女は、待ちきれないという風に股の辺りを撫で始めた。何と言う逸材だろうかと、監督は彼女を抱き寄せようとした。


「わたしもです。わたしも抱いてください」


「何だお前は……?」


 もう一人の少女が声をかけてきた。さっきの娘は金髪だったが、こちらは長い黒髪だ。顔だけを包帯で覆っている。


「わたしもあなたが好きです。どうか今夜、わたしの相手もして下さい」


 無感情とも取れる堅い喋り方で、黒髪の娘は話してきた。


「うーむ……その包帯は何だ?」


「病気で、顔に酷い傷ができているんです。そんな傷をお見せして抱いてもらうのは不作法だと思って、包帯で隠してきました」


「そうか……心がけだけは感心だな」


 男はもう一度二人を見比べてみた。どちらも鉱山で働いているにしてはあまり汚れてはいない。きらきらの金髪に、吸い込まれるような黒髪。まるで朝の光と夜の闇のように、並ばせると更に美しい。

 それに、顔が隠れているというのも必ずしも悪い要素ではない。隠れているなら不器量でも抱けることを男は知っていた。何よりもこの態度なら献身的な奉仕が期待できるだろう。


「いいぜ、今夜は俺の部屋にきな」


 男の口角がにやりと上がった。

 飽きつつあった仕事で、唯一飽きない部分。それは働く少年少女を慰み者にできる事だった。




 それ以降の二人は鉱山を抜けることを許され、仕事が終わるまで別室で待たされていた。

 監督の仕事が終わってから、二人の玩具を馬車に乗せる。


「嬉しいわ……憧れの人に、相手をしてもらえるなんて……」


 夢見心地で呟く金髪の少女は、監督のずんぐりした身体に寄り添った。その様子はまるでその肥満体をクッションにしているようにも見える。


「子どもの癖に淫乱な奴だ。御望み通り滅茶苦茶にして、お前が気絶するまで相手してやる」


「まぁ、嬉しいわ……」


 少女を抱き寄せ、頬を撫でる。包帯のせいで肌の感触が味わえないのは残念だが、それも悪くない。


「殴られるのが好きなのか?」


「はい……乱暴に、私を扱ってください」


「わたしも、お願いします」


「よし、いい子だ」


 監督は上機嫌だった。素晴らしいご馳走が二人も手に入ったのだ。どのように弄ぼうか。どのように痛めつけようか。そしてどのように犯そうか。それを考えるだけで、身体が熱を帯びるようだった。




 監督の部屋は机とベッドがあるだけの簡単な部屋だった。彼にとってはほとんど寝に帰るだけの場所なのでそれでもよかったが、少女との遊び場になるベッドだけは品質にこだわっていた。


「さっそく始めようか……」


「お願いします……」


 男は手始めに、擦り寄っている金髪の少女の唇を奪った。そのまま舌も絡め、彼女の口内を蹂躙する。少女の唾液が最上の甘露のように、男の味覚を満たしていった。


「ん、むっ」


「うっ……」


 黒髪の少女が引きつった声を上げる。接吻を見慣れていないのだろうか。抱かれることを望んできた割には、初心なようだった。


「ぷはっ」


 数秒にも及ぶ接吻が終わった時には、男と女の口どうしが唾液の糸で結ばれていた。


「よし、いい子だ……ベッドに横になれ」


「はい……服を、脱ぎましょうか?」


「いや、いい。俺が脱がせてやる。本音を言えば、その包帯の下が気になる所だがな……今日は勘弁してやるか。時間はたっぷりあるからな」


 傷だらけの少女は、ベッドの上に無防備に横たわった。男がその上に馬乗りになり、胸元に手をかける。


「待って。最後に聞いておきたいことがあるの……」


「何だ? こんな時に……早く言え」


「コルベス様がどこにいるか、知りたいの……」

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