8話「デートの終わりはあっけなく」
なんだかんだ俺はあれから一週間白井さんに、映画につれていかされたり、またあのお店でケーキ食べさせられたり、よくわかんないバンドのライブを見に行ったりしてもう、体が限界だった。
『どーにかならんかねぇ、俺は辛いぜ』
教室の机でぐったりとしながら俺はレイナに話しかける。
『まぁ、普通に考えたらあれはただのデートなんだけどねぇ』
「でっデート!?」
「そりゃあどう考えてもデートでしよぉ!」
いきなり表れた空が俺のうなじ辺りをトンっと叩く、すると首から脳にかけて稲妻が走るるような感覚に襲われるその一瞬だけレイナとの会話が途切れ、頭に言葉にならないような痛みが走る。
「いってぇ……」
だがその痛みは一瞬で消え失せレイナとの回線も無事回復した。
なんだったんだ今のは……さすがに夢ってことはないよな……。
『なんか変な感じだったね……』
「おーい聖夜くーん生きてるー?」
せっかくのレイナとのトークタイムを邪魔するとはなかなかやるじゃねえかこいつ。
「生きてるわ」
「急に黙るから死んだのかと思ったよー」
「で、用はなに?」
こいつが来たってことはどう考えても悪いことしか起きないことはもうしっている。だが、一応聞いておく、聞いておけば対策が寝れるかもしれないしな。
「いや、べつにで……最近なんかデートばっかしてるから大変なのかなぁと思って」
「そーなんだよまじで大変なんだよーこれがさぁ本当毎日毎日来るんだけどさぁ、天然だからあんま気にしてないのかわかんないしー本当大変!」
「お前ぐらいだと思うぞ、あんな可愛い女の子とのデートをしたくないとか言ってるの。」
「してみればわかると思うけどまじで大変だからな!」
噂をすればなんとやら……とうとう原因が来てしまったようだ。
「ねーねー明日さぁ! 聖夜は暇でしょ?」
白井は半ば教室のドアをぶっ壊すかの勢いで開け、そこから大声で俺が呼ばれた。
「俺の暇を勝手に決めるな! 暇だけど」
「じゃあ明日は駅前の銅像集合ね! あとでメールしとくねー! じゃっ!」
「あれ?もしかして今日は、なんにもないっ! やったぁ!」
俺は今日はなんにもない日だと気づき普通に喜ぶ。
「どんだけ辛いのかわかんないけど一回ぐらいあいつとのデートしてみたいわ」
「絶対やめた方がいい。断言する」
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昼の2時なのにずいぶんと暗い駅前で俺は木製のベンチに座りながら白井を待つこと約一時間経過した。
『ねーセーヤ、あんなに付き合っちゃっていいの?』
「別にまだ全然大丈夫だよ」
休日に女の子と会うというのにも関わらず、いつもの制服とあまり変わらない服装を纏っている俺はいつのまにかレイナからの突然の質問にさらっと答えていた。
俺があそこまで付き合ってあげているのには理由がある、それは簡単で俺がただ断れないってだけだ。
あんな女の子にあの雰囲気でお願いされたら男子なら誰でもオーケーするに決まっている。
というか、いつもクラスであんな大声出されたら断れるもんも断れない、もっと彼女には自重してもらいたいものだ……
「まぁ、別に今んとこそこまで苦じゃないしな、アニメが見れなかったりするのは少し辛いとこではあるけど……」
『ふーん、じゃあセーヤはあの人のこと好きなんだ』
「はぁ!? 何をいっているんだ! あの人のことを俺が好きなわけないだろ。」
これは確実だ、そもそも俺はあんな感じの女の子には苦手なのだ……多少かわいかったからと言ってそれが解消される訳ではない、むしろレイナのような方が話しやすく、好きだ。
『ほんとかなぁ……』
「ほんとだってばぁ、信じてくれよぉ」
俺はそもそも百合を恋愛対象として考えたことすらなかった、毎日無理矢理いろんなところに遊びに行かしてくれる、かわいい女の子ぐらいにしか思っていないのだ。
『でもかわいいとかは思うでしょ?』
「そりゃかわいいとは思うけどね、普通に」
『じゃあ私にはなんにも感じないの?』
俺はまるで後ろからレイナにじっとりとした目で見られているような感覚に襲われる。
『かわいい女の子で興奮するなんて……変態』
「いやいや! かわいいってだけで興奮してたらこの世の中絶対生きてけないから! てか俺にはそもそもレイナがいるんだから!」
『はぁぁぁ!? ちょっつなにいってんのよ! 恥ずかしいじゃん!』
「あれ? 照れちゃったの?」
この一連の流れは最早日常的に行われているにも関わらず、レイナは毎回引っ掛かってしまう、そんなところがまた愛らしいのだ。
『もっもう知らない!セーヤはかわいい子と一緒に遊んでくればいいじゃない!』
「何だかんだいつもレイナは優しいなぁ……」
「そ、そんなことないし……」
「お、あいつも来たようだ、じゃな」
レイナとの話がちょうど切れたぐらいで、百合が走ってこっちに向かってくる。
まぁ、普通なら待ち合わせ程度であんなに走らなくてもいいのだが俺はここでかれこれ1時間以上待っていたのだ、これだから……。
あれ? ちょっと待てよ今こっちに走ってきているのは本当に百合なのか?
俺は自分の目を擦り再び目の前の景色を認識しなおす。
「んーちょっとかわいすぎやしないか?」
今日の百合の服装はいつもの制服とはまた違ったかわいさを醸し出している、茶色のコートに白のロングスカートそれにハイヒールというかわいさというよりは大人っぽい感じの服装だ、これならいつもの子供っぽさも消えて、おとなしい系の美少女に見える。
「聖ー夜ーもぅどこいってたの? 探したんだからね!」
「それは俺のセリフなんだが……」
「え、? だって西口じゃないの?」
「ほら、東口の銅像の前だ。」
俺は百合にもわかるように、自分のスマホのメールの履歴を見せる。
「ありゃりゃこれは失敬!」
失敬ってお前はなに時代の人間だっちゅーの!
「まぁ、いいよ……で、どこいくの?」
驚くなかれ、俺はこの時点で百合からどこにいくのかすら聞かされていないのに集合場所に集まっていたのだ。
「うーんと……映画館にでもいこうとおもってたんだけど、聖夜の服装がひどいからなぁ……」
「制服以外の服とかこれしかねぇからなぁ……」
よくいろんな人に服を買えやら、たまには他の服を着ろとか言われるが俺はこれ以上服にお金を掛けるつもりもないし、これから買う予定もない。別に俺の事を見てるやつなんてレイナぐらいしかいないんだから服にお金をかけるなんてばかとしか言いようがない。
「じゃあとりあえず……聖夜の服を買いにいこう! こんな変な服の人と一緒にいたくないし」
ちょっと待てよ俺は今心の中で服なんて買わないみたいな話をしていたはずなんだが……
「じゃあ帰る」
「そーじゃなくてっ! ほら、いくよ! あお金持ってきてる?」
「10万」
「ひやあぁぁお金持ちは違いますなぁ……じゃあ私の知ってる一番いいとこにつれてってあげるね!」
「どーせお前のセンスなんだから大したもんじゃないんだろ」
ここに来て服を買うことになりめんどくさいと感じた俺は極力嫌な態度をとって、帰ってって言われるよう作戦を変更する。
「お前っていわないでよっ!私には百合って名前があるんだから百合って呼んでよ!」
「百合かぁ……恥ずかしくね?」
「ひどーい私の名前なのに!」
最初に来たときに感じた大人っぽさおとなしい感じの女子という感じは全くなくなり、いつものめっちゃうるさいけど変な女の子へとランクダウンしてることなんて百合は絶対に気づいてないだろう。
「もーいーや力業だ!」
そして俺は無理矢理百合に手を引かれどっかの服屋につれていかれるはめになった……この場合は仕方がないよなぁ、断れないしな。
「よしっ!ついたよ!」
駅から歩いて10分割りと近場にあったその店の前面のほとんどは通常の3倍ほど大きな扉で出来ていて、百合が選びそうな場所だなとは思った。
ここのドアはいかにも中世のどっかの城の大きな木製の扉をイメージしているような感じでなかなか圧倒されるものがあった。
「ねぇ、これなんなん?」
「洋服屋さん」
「そ、そうか……」
俺はとりあえず入ってみなきゃわからないと思い、扉についていた金属のわっかを持とうとする、するといかにも両開きだろうと思っていた扉が自動で横にスライドした。
「あ!聖夜先にやっちゃったの?驚かせてやろうと思ったのに!」
「この扉で自動ドアって……」
ほんとに百合が好きそうな所だな。
空いたドアから見えた店内はわりと普通な感じでよかったのだが……女子は買い物が長いという噂、あれは本当だった。俺は百合に引っ張られながら高校の体育館ほどしかない店をを延々と歩き回っていた。
「いやぁ!いい買い物ができたね、よかったよかった。」
「あれだけ回って買ったの3つだけかよ……」
「そりゃそーだよ。そんなたくさん買えないしね」
「じゃあ帰るかぁ……」
俺はさりげなく疲れたアピールをしてこの場からの早急な脱出を試みる、だがっ!
「じゃあすごくゆっくりできるお店あるからそこにいこっ!」
「ええ……まだ歩くの?」
「じゃあ変身してくれるの?」
「それは無理。」
「じゃあいこう!」
「あーもーわかったよ!転装すればいーんだろっ!わかったよしてやるよ!」
「やっとかぁ……じゃあこっち来て」
「え、あっああ」
なんだ、場所を変えてくれるなんて……百合にしてはちゃんと考えてるなぁ。
俺らは町から少し外れた道に出ておそらく30分ほど歩いた頃だ俺はある疑問を思い付く。
「なぁ……ここって学校の近くじゃね?」
「確かに!お兄ちゃんに言われたとこにこいって言われたけど……」
「おいちょっと待てお兄ちゃんって怖いやつらのボスやってんじゃなかったっけ?」
「え?お兄ちゃんはやさしいっていってるじゃん!」
「あ!おいあぶない!」
聖夜には見えていた、聖夜の方に振り向いた百合の後ろに突如として現れた高身長の誰かが百合を連れていこうとするのを。
「きゃっ!」
百合は相手のいいように腕から体を持っていかれ、腹の辺りをそいつに抱え込まれるようにしてとらえられてしまう。
「間に合わなかったか!」
俺は五メートルは離れた百合を捕らえられないように、そいつをどかそうとするが、そいつの足の速さは異常でほとんど毎日走っている俺が全力疾走しても追い付けない。
「なんだよっ!なんだよこんな展開ありかよっ!」