6話「ヒーローっぽい事」
『おしょーがつ?』
「そう!お正月!」
今日は1月1日、元旦だ。
俺の家であるラボには冬の風物詩ともいえるこたつがない、だから今俺はその代わりといってはなんだが、ベッドの掛け布団にくるまりミカンを食べている。
他に今やっていることと言えば、テレビで謎の漫才を観ながらスマホの中の少女との交渉ぐらいだ。
『おしょーがつは休まないといけないの?』
「そうなんだよ、これは国で決められていて、誰も働いたりしちゃいけないんだよ!」
全くの嘘を堂々とつく何てこと本当はしたくない、だが、これも自己防衛の為だ仕方がない。
『でもテレビはやってるじゃん』
「それは……先にとっておいたやつを流してるんだよ!」
『え~でも……』
よし、行けそうだぞ!このまま行けばしばらくは走らなくてもよくなる!
「じゃあ、誰も働いてない証拠を見せてあげよう」
『ほんと?』
全く信じられていないのは悲しいが、これを見せれば確実に俺はこの正月をずっと寝て過ごすことができる!!
「ほらこっち。」
俺はベッドから降りて、すっかり冷えきった床を踏みしめクローゼットへむかう。
『ねぇ着替えるってことは外にいくの?』
「ああ、そうだよ」
『ふーん』
レイナ絶対驚くだろうなぁ。
ジーパンとチェックのシャツを着てその上からジャンパーを羽織り、レイナにも景色が見えるようにと眼鏡2号をかけて外に出る。
「うぅ、寒い…………」
『そりゃ寒いでしょ冬なんだもん』
「まぁ、そうだけど……ほらいくぞ」
そろそろ昼になるって頃なのにまだ薄暗く、暖かくなっていない道をたんたんと歩く、うちの周りは普通に住宅街で、たまに近所のおじさんとかに挨拶をされたりもする。
『ねーぇーどこにいくのぉ?教えてよぉーー』
『もうちょっとでつくから待ってろって。』
『うーん、それにしても全然人がいないね』
『おっ、いいところに気づいたな!今日はみんな休みだからな、こんなところに人がいるわけがないんだ。』
『ほんとかなぁ?』
レイナが首を傾げているのが容易に想像できるのが不思議だ。
てかまだ、信じてなかったのか……どんだけ俺を走らせたいんだよ。
住宅街を抜け、少し歩いたらちょっとずつ人混みが見えてきた。
『あれ?セーヤーあそこにたくさん人がいるよ!』
だんだんと人の話し声やピーピーといろいろな音が聞こえてきて近づいてきたことをより確実なものとする。
『俺らも今からあそこに向かうんだよ』
『え?そーなの?』
『今日はみんな仕事がお休みだからあそこで遊んだり、親戚の家に行ったり家で寝てたりしてるんだよ』
『遊ぶとこっ!?』
レイナが遊ぶってワードへの食い付きが激しかったことに今更ながら驚く。
『ああ、遊ぶとこだ!ほーらついたぞ』
『ほぉぉぁぉぉ!』
今俺と、レイナの目の前には大きな鳥居と、いくつあるのかわからないぐらいの色とりどりの屋台と、暑苦しいぐらい楽しそうな人が大勢いる。
『そう!正解は、ここ!毎年お正月にやっている大和神社のお祭り会場でしたぁ!』
『やったぁーーお祭りだぁ!!』
今日はいつもより一層レイナが騒がしくなりそうだ。
『いやぁ、お祭りって1回来てみたかったんだよー』
浴衣姿にフォルムチェンジしたレイナはそんなことを呟いている。
『ほら、みんな遊んでるだろ』
『よしっ!じゃあまずはあんず飴から食べよう!』
俺の話ガン無視じゃねえか、どんだけいきたかったんだよお祭りに、でもまぁ、楽しんでんならいっか。
『早く!早くいこーよーセーヤー』
『わかったわかった、で、あんず飴は……あそこか』
レイナからしたらこういう景色ははじめてなんだろうな…様々な色の屋台、着物を着た人々、いや、そもそも神社自体が初めてなんじゃないか?
普段と違う、規則正しく石で舗装された道をたくさんの人が行き交う、それだけではじめての人はかなり興奮するだろう。
大和神社はこの辺りでは珍しくかなり大きい神社で、毎年正月と夏にはこういったお祭りをやっている。
「お祭りで食べるあんず飴ってなーんかおいしく感じるんだよなぁ。」
かなり前に食べたあんず飴の味を思いだし店に向かって歩いていると……。
『あ!』
「レイナ?なんか発見した?」
『いや、私食べれないじゃん!』
『え?』
はっ!!確かにレイナはAIだから景色や食べてる姿は見えるけど食べれないじゃないか!
あぁ、何でそんな初歩的な所に気づけなかったんだ!そして何てかわいそうなことをしてしまったんだ……あとでなんかしてあげよう。
『うーんじゃあどうしよっか、帰る?』
『ううん、セーヤが私の代わりにたくさん食べて!で、その感想を私は聞ければいいや』
『え、俺そこまで腹へってないけど……』
『ダメダメ!セーヤは私を満足させるまで食べてもらうからね!』
『うひゃあ』
鳥居をくぐって200メートルほど歩いた所にその店はあった、肌色のテントの量端に赤いりんごのような絵が書いてあり、そして真ん中に店の名前が大きく、筆で描いたような文字で書いてある。
『じゃあまずは1件目ぇ!《あんず飴屋大将》!!』
「あんず飴屋で、大将ってネーミングセンスが……」
『うーんちょっとね……』
「あ?お兄ちゃんなんか言ったかい?買わないならさっさとそこどきな!」
声のした方に顔を向けると、日サロでも行ったのかってぐらいガングロのいかついおっちゃんがこちらを睨んでいた。
こりゃさっさと買って離脱したいところだ。
「すみません、あ、じゃあこのあんず飴一個!」
近くにあった一番大きそうなあんず飴を手に取り、200円をいかついおっちゃんに渡す。
「はいよー!じゃあこっちのルーレット回していってなぁ!」
「ルーレット?」
「おうよ!このルーレットで大当たりにこのボールが入ったら追加で3個、当たりに入ったら追加でもう1個もらえるってやつさ。」
このルーレットは屋台には似合わないずいぶんと本格的なもので、どっかのカジノからそのままとってきたような豪華なものだった。
最近はルーレット何てあるのか……面白そうだな。
「ほい、じゃあこれをここに置いてっと、よしっ、さぁ回してくれ」
俺がなかなか自分で玉を置かなかったのでおっちゃんが置いてくれた。
「あ、じゃあ」
『セーヤ!頑張って!』
『あたりまえだ、俺の力を見せてやる』
俺はルーレットの真ん中の出っ張っている部分を掴みクルッと回す、
ハズレ、当たり、ハズレ、ハズレ、ハズレ、と玉はどんどん進んでいくうちにスピードを落としていく。
そして――――――――
「おおお!おーあたりぃ!」
見事に大当たりで止まってしまった。
「兄ちゃんなかなかやるねぇ、今日大当たり当てたのは兄ちゃんだけだよ」
「あ、ありがとうございます……」
『セーヤすごいねーー!!セーヤだけだって!』
俺は、あんず飴屋をあとにして、お祭りにはよくある長い椅子に座ってレイナからものすごい勢いで褒められながらりんご飴を食している。
状況を一旦整理しよう、えっと俺はレイナが食べれないことを忘れて祭りにつれ来ちゃいました、で、レイナは食べれないから俺が食べて感想を言う、だけど俺はあんまお腹減ってない、で、大当たりを当ててしまい、計4つのあんず飴を食べるはめになったと……。
地獄だっ!地獄でしかない!しかも初っぱなからこんなに食うのかっ!
肩をガックリ落とし、あんず飴を食べたあとは完全にゴミとなる木の棒もしたに落とす。下に落とした木の棒を蹴っ飛ばすと口から本音が溢れる。
『もう、帰りたい。』
『おっしゃぁ!次はたこ焼きぃ!』
あんず飴を4つもたべ、今俺の口の中では甘味と酸味で戦争をしている。そのお陰で、精神的にもぐったりしている俺に比べレイナは何故か余計に元気になってしまった。
『セーヤーはやーくーいこーよぉーー』
『ちょっと待ってくれ……口の中が……』
『私はまだ、満足してないのぉ!』
ちくしょうそれを言ったらおしまいじゃねぇか!レイナをつれてきたことを多少後悔してきた。
水を飲んである程度口の中が落ち着いてきたので、椅子から立ち上がり次の行き先を聞く。
『たこ焼き?だっけ』
『そう!今調べたんだけどこの辺りはたこ焼きが有名らしいね』
「そうなのか……どおりでたこ焼きやさんが多いわけだ。」
よくよく考えてみたらここに来るまでですでに三件ぐらいはもうたこ焼き屋を通りすぎている。
『え、?セーヤ知らなかったの!?長く住んでるのにっ!?』
『いや、まぁ、住んでるっていってもまだ、3年だしそんな周りのことなんて気にしてないしなぁ。』
石の階段を下りながらそんな会話をしているとレイナが急に話題を変えてきた。
『ふーん……あ、これやってよ!』
早速レイナの人の話を聞かない癖が出てきたようだ
『ん?どれだ?』
声だけでしか今はレイナの存在を確認できないので、あっちとか言われても困るのである。
『え~と右斜め前方!宝釣り!』
『え?これ?』
『そーだよっ!楽しそうじゃん!』
宝釣りってあれ絶対当たらないぞ?何て言えるはずもなく
「じゃあやってみるかぁ」
と、意気込んでしまった。
さっきの店とは打ってかわってこの店は店の外観の大半を閉めているショーケースの中に長い紐で吊るされた商品がたくさんはいっている。あと着物を着たおばちゃんが一体。
紐は一点に集められていてどれがどれだかがわからない仕組みになっているようだ。
小さい頃はこれに何度も苦しめられたものだ、何回やっても欲しかったゲーム機や、変身ベルトやらが一切でなかったからだ、初めは俺もほんとにゲットできるもんだと信じて疑わなかったのだが、ある時にこんな疑問を思い付いてしまう。
《あれ?これって当たりのやつは紐が繋がってないんじゃないか》と。
それがほんとかどうかは宝釣り屋さんをやって見ないとわからないわけだが……とりあえず確実に損するのでやらないようにしている。
『セーヤー早く引いて引いて!』
さっさと引けとレイナからの催促がくる
『わかったって引くよ……』
あぁもったいないこんなことに500円も……つらい
仕方なく財布から500円を取りだし店のおばちゃんに渡す。
「はーいありがとね、じゃ男の子はこっちの青い方の紐引いてね。」
んなもんわかってるっつーの……どーせいーの何てでないっての……。
『セーヤ行けるよっ!』
ほいほいほいっと、ど真ん中のやつでも引っ張っとけば当たるだろ。
俺は紐を握る手に力を入れて軽く引っ張る。
ん?なかなか重いな、よし、本気で引いてやろうじゃないか!!
「おりやぁ!!」
両手を使い本気で引っ張るとしばらくは紐が動かないぐらい重かったのにパッと急に軽くなって、商品がショーケースの天井部分?に思いっきりバーーンと音を立てて当たる。
『おおおお!!セーヤ!これってセーヤの欲しかったやつっ!!』
どうやら俺は当たりを引いてしまったらしい、今日はずいぶんと運がいいな、なかなか珍しいだろ一日で2回も大当たりを引くなんて。
引いた勢いで砂利の所にずっこけてしまった俺は商品をもらうために立ち上がり、息切れしたままおばちゃんへ声をかける
「はぁ、おばちゃん……商品……お願いします……」
あれ?おばちゃんがいない?
「あれ?おばちーゃん」
心配になり頭だけショーケースから乗り出して店の中へと目を向ける…………するとそこには息切れをして悲しそうな目をしているおばちゃんが見えた。
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「ったくおかしいとは思ったんだよ、子供が遊ぶおもちゃなのにあんな重いなんてあり得ないって」
たこ焼きを買ってまた、さっきの椅子の所に戻ってそんなことを呟く。
どうやらおばちゃんいわく、ほんとは引っ張るつもりなんてさらさらなかったが、俺が一発で当たりを引いてしまったのであわててしまい、つい紐を引っ張ってしまったそうだ……。
『けどいいじゃんこれ、欲しかったんでしょ?』
これ、とは俺がさっき引き当ててしまったこの変身ベルトまがいの物だ。
本当なら全く要らないし、むしろ大きくて邪魔な訳なんだが……あそこまで見られているところで要らないなんて言えるわけもなく、もらってきてしまったと言うわけだ。
『小さいときはな、今はただ邪魔なだけだ。』
また一個また一個と、たこ焼きを食い進める。
『そんなことを言いながらほんとはちょっと嬉しいんでしょ♪』
「………………」
まぁ、嬉しくないと言ったら嘘になるな、普通にこういうの好きだし、なによりも宝釣りで当たりを引けたって事実が嬉しい。
『でも、もう、こんなのなくても転装できるしなぁ……』
『確かに言われて見たらそうだね♪でもセーヤのは変身ベルトじゃなくて変身手袋だけどねーー♪!』
『変身手袋ってダサすぎだろ』
『じゃあ変身ベルトならかっこいいってこと?着ける?』
『絶対着けない!』
『着けてよ……』
『やだ』
『着けて』
『ダメ』
『着けて着けて着けて着けて着けて!』
「うるさーーーーーい!!!」
俺はつい、ここが祭り会場なのを忘れて大声で叫んでしまう。
周りの目が一斉にこっちに向いてきているのを横目で見ながらやり過ごす。
「はぁ、ちょっとだけだぞ」
『やったぁ!』
俺は最後のたこ焼きを食べて、楊枝とプラスチックのケースを真横にあったごみ箱へと、ほうり投げる。
近くに使えるトイレがなかったので神社から少し離れた公園のトイレでベルトを巻くことにした。
トイレにした理由はある程度周りから隔離されていることと、鏡があることだ、鏡がないとレイナは俺がベルトを巻いているところが見れないからな。
昼間だと言うのに公園には子供や保護者が誰一人として居ないことに多少驚くが、理由はすぐにわかった。
祭りがやっているからってのもあるだろうが、おそらくあそこにいるいかにも俺様怖いぜ感を醸し出している輩のせいだ。
その輩は全員が全員、真っ黒に染まった学ランを着てその中の誰かのであろうバイクの回りで煙草を吹かしながら騒いでいる。
その騒いでいる内容はいかにも下らなく、そしてゲスなものだった。
誰々が誰を倒したーとか、でっかいスーパーで盗んできたーとか、何人退学させたとか、もう何日も学校いってないとか、そんな下らないことを自慢しあっている。(まぁ俺も学校はそこまで行ってないけど)
『かわいそうな人……』
「あぁ、さっさとこんな場所離れようぜ」
『そだね……』
そんなことを話しながら、俺らは男子トイレの個室へと足を踏み入れる。
「うわっくっせぇ」
まぁ当たり前といっちゃ当たり前だがほんとに公園のトイレって臭くて汚い、ヘドロの中にいるみたいでさっさと出たいという気持ちに駆られる。
よしっ、さっさとつけてしまおう。
「うっわこのベルトきっつ!」
『子供用だしね、仕方がないでしょ』
さすがにこのベルトは高校生が着けられるようにはできていないようできつい。
ベルトはバックル部分がやけに盛り上がっており、謎の刻印が押されている。
あと、横についているボタンを押すと真ん中のライトが光りながら変身待機音的なのが流れる仕組みになっているようだ。
「うう、もうはずしてもいいかな?」
『ダメだよーまだ私見てないし』
「あ、そうか」
レイナに見せてと言われたから着けてるのに見せるのを忘れていたとは……。
俺は周りを気にしつつ、誰もいない時を見計らって個室から出る、そして洗面器の前にある鏡の前に立つ。
「ど、どうだ……」
『全然似合ってるんじゃない?わりとかっこいいと思うよー!』
「待ってそれって子供っぽいってことだよね」
『いや、普通にかっこいい!』
レイナにもう見せたし腹も痛いしそろそろ外そう。
「よし、じゃあそろそろ外すか……」
と、呟きながらちらっと外の様子を確認する、いきなり大勢入ってこられて出られないみたいな状況だけにはなりたくない。
「はっ!」
俺は外の景色に驚愕する。
何を……やっているんだ……あいつらは。
「「「おらおら!!もっとやっちゃえ!」」」
あの学ラン野郎の蹴りが砂煙の中心の人物の腹に当たり、そいつが吹っ飛ぶ。
俺の眼には、しっかりと見えた、その蹴られている女の子の眼に映る苦しい、悲しい、さびしい、そんな思いが。
「おい……レイナ……あれは何をしているんだ?」
確認と言うか、状況を整理するためにレイナに問いかける。
『ひどいね……あれはただの集団リンチだよ……』
レイナが見ても、そう思うならあれもう確実にただの集団リンチだ。
「だよな……ぶっ殺す」
『待って待って、まさか転装何てしないよね……』
俺が出ていこうとすると、焦り気味のレイナに止められる。
「大丈夫、リミッターの解除なんてしないしそもそも本気で殺す訳じゃない……制裁を与えるだけさ」
『でもギリギリまでダメだからね!……』
「あぁ」
よし、じゃあとりあえず眼鏡だけでも起動しておくか。
「コマンドa」
俺はコマンドを発しながらバッグから手袋を取りだし両手にそれを装着する。
さぁて、いくか……。
トイレのタイルから、一歩踏み出し公園特有の砂利と細かな砂が混ざった地面に足を着ける。
そしてまた一歩、また一歩と、奴等の元へと近づいていく。
「おい、お前らにしてんだよ」
「あ?なんだこのガキ!なめてんのか?」
本当にバカは扱いやすいなぁ、すーぐ話しかけてきちゃう。
「その子から離れろ」
「こいつ変身ベルトしてるぞ!」
困ったさんが俺の声を遮るようにすさまじいことをいってのける。
「わひゃひゃひゃひゃなんだよこいつヒーロー気取りかよっ!」
「おもしれぇ、かかってこいよ!」
なにっ!ちくしょう俺はなんてことをしてしまったんだ!!お前らのせいだぞ!俺が外す前に変なことするからだぞ!よしとりあえずこいつは最優先で潰そう。
『セーヤ、変なこと考えない』
「はーいよ」
そろそろ殴ってくる頃だろうと予想してたら、右側から、手が飛んできた。
「勝手に話しかけんなよ雑魚がっ!」
「この場からきえろっ!」
いつも通り俺の目の前で繰り出されたパンチはこの体に少しも当たることなく消えていく。
「あたんねぇよ」
「ふざけんなっ!!」
まだわからないのか……何回やっても俺に攻撃を与えることはできないってのに、察しろよ……。
「痛いっ!痛い!!」
奥の方でまた女の子の声が聞こえる。
「まだお前はそんなことを!!!」
俺が周りの雑魚どもを相手していたら奥の方で、今時珍しいリーゼントのやつが女の子を蹴っている。
あーもう!!なんで逃げてねぇんだよっ!
攻撃を避けながら女の子に近づき、リーゼントから打たれた蹴りを足で受け止め俺はその女の子前にたち他のやつらの攻撃からその子を守る。
「大丈夫か……さっさと逃げろ、あとは俺がどうとでもしてやるから、ほら!早く!」
「でっでも……」
「いいからはやく!」
突然の大声でビックリしたのか女の子はさっさと神社の方へと逃げていく。
ここでもまた学ランどもはその女の子を追いかけようとする
「おい!!」
今度はほとんど絶叫に近い声でやつらの気を引く。
「お前らの相手は俺だろ?」
「黙れ、おいっ!あの女を捕まえるぞ!早く!」
「お前らふざけんなよ……女の子をいじめちゃいけないって教えてもらわなかったのかよ……男は女の子を守るもんだろ…全くもってお前らのやっていることは異常なんだよ!」
もはや自分でも何を言ってるのかわかんなくなって来た、いつまでも執拗に女の子つけ回す奴等に対しての怒りが頂点に達し、あの言葉を呟く。
「………………転装」
俺はそう小さく呟くと、手をクロスさせその右手を頭に持っていき左から右へと振り払う。
俺の右手から突如として出現したブーメランはすぐさまその矛先を奴等に向ける。
「はっ?なんだこれっ!!」
「ブーメラン??いってぇ!」
様々な声が聞こえる中、今回は大仕事をしてくれたブーメランが俺の額へとピタリとくっつく、するとアーマーが転送され俺は漆黒のロボットへと変化する。
「さぁ、貴様らに罰を与えよう。」
は?なんだなんだ?急にロボットが出てきたぞ?
みたいな声が続々と聞こえるなか俺はそんなことを無視して一人ずつ学ランのやつらを潰していく準備をする。
「はやいぞみっ!うぉえぉぉぇ!!」
一番始めに動き出すやつは天才かバカだと言われているがこいつは明らかに後者だろうな、なんも考えていない無計画、そもそも攻撃なんて当たるわけないのに突っ込んでくるとかただのバカでしかない。
ロケットパンチのようにまっすぐに打ち出された拳を体を左に半回転させかわす。
するとみぞおちが完全にフリーになるのでそこへ向かって垂直に膝をつき出す、これだけで簡単に人間は落ちてしまうからつまらない。
「はい次ー」
別に何人いようとほとんどはバカばっかりで同じことを何回も繰り返せば終わるだろう。
たまにげろをそのまま俺にぶっかけて来るやつがいるのでほんとに困る、汚いのと臭いのは本当に嫌いだ、気分が悪くなる。
「そーやって吐かれると困るんだよなぁ、こっちも」
俺が少しコメントをしている間にもどんどんパンチやらキックやらが飛んでくるが、装甲が厚すぎるせいか、もはや痛みすら感じない。
動きの遅いやつはひたすら、ももかんで痛みに倒れたとこを踏んだら気絶するし……こいつら弱すぎないか?
「お前らは、自らのやった行いを自分の体をもって知れ。」
学ランの襟を掴み、その勢いで思いっきり頭突きを食らわす、気絶したそいつを真横からの攻撃を防ぐための盾として使い、盾としての人生が終わったら、ハンマー投げさならがの力でぶん投げて三人ほどを気絶させる。
「こんなもんかよお前ら。」
リミッターを解除していない状態のマニュプレートだとそこまで破壊力はないようで、おそらくパワースピード共に総合格闘技チャンピオンよりちょい上ぐらいだろう。
てか、リミッター解除してたら確実に殴っただけで体が粉々になってしまうだろうし。
「俺はそんな汚いのは嫌いだからしないけどな!」
俺は、最後の一人を潰すために滑り台に飛び乗りすぐさまそこから思いっきり腕を振り上げ飛び降りる。
振り上げられた拳を彼の脳天にぶつけ、最後のリーゼントを倒す。その流れで俺は右手のブレスレットのスイッチを押し、転装を解除する。
「おーい、生きてるか?生きてたら答えろ!なんでお前は女の子を殴ったりなんてしたんだ?」
少ししゃがみリーゼントを手袋越しにガッツリ持ち、うつ伏せのかれを無理矢理起こす。
そしてお互いの息が当たるか当たらないかの距離まで顔を近づけ、睨み、リンチをした理由を問いただす。
「な…………ぶつかって……ら」
一言一言に血が混じっていて何をいっているのか全くわからない、こんな時ですら使い物にならないなんてほんとにくずだな……
「あーもう!お前はいい寝てろ!」
乱雑にリーゼントの頭を地面に叩きつけ、ついでに顔面を蹴り飛ばす。
「うっ!い…………がっ」
そろそろ祭りに戻ろうかな……神社の方へ振り返りふとそんなことを考える。
公園をあとにする俺の後ろにはヤンキーが10人ほどうつ伏せで寝ているが、そんなことは気にしないで祭り会場に戻る。
『はぁ、結局よくわかんないまんまだったな……おい、レイナわかったこととかあるか?』
女の子を殴ったりした理由がわからなかったのが少し気がかりだがまぁ、仕方がない。
『特になーし、あるとしたらリミッター解除してない時の火力が弱すぎることかな』
『いやいや、あんぐらいで十分でしょ』
ヤンキーとか倒すのにあれより強かったらワンパンだからなぁ
『対人ではちょうどいいかも知れないけど……人命救助時にはまだ不十分だよ』
人命救助なんて考えてなかったな……確かにそういう使い方もあるのか、そんな場面が来ないことが一番だけど、来てしまったら真っ先に使おう。
『でもさだったらリミッター解除すればヨユーじゃね?』
『リミッター解除は普通に負荷が大きいからね……いつもの何倍も疲れるし、何よりも思考が動きに間に合わないと、勝手に思考が追い付くように改竄されちゃうし。』
え、待ってなにそれ怖い、そんなにダメージ大きいのかよ、最後のやつ知らなかったし。
『ほうほう、君はそんな負荷があるものを所見で俺に着せたと……。』
『ほんと悪かったって思ってるからね!』
正直全く気にしてないが、このネタは何回も使えるので便利だ。
『まぁ、別にいいさ……最後におみくじでもやって帰ろっか。』
普通は来たときにやる、あの定番のおみくじを俺らはまだやっていなかった。
そもそもここに来たきっかけが変則的過ぎるので仕方ないとも思うが。
『おみくじかぁ……楽しみだなぁ……』
俺は、神社の本殿のすぐ横にあるおみくじの入った箱のあるところまで走る。
よかった、おみくじ販売してるところに人がいない、ここで人がいたらどうしようかと思ってたけど、これなら俺が一人で2回引けるっ!
誰にも見られないように素早く200円を箱に入れてパパっと2つおみくじをひく。
一回目のを右手に二回目に引いたのを左手に持ち、ちかくのベンチに座る。
『よーし、じゃあ俺の運勢はっと……』
おみくじにくっついてる薄い紙をピリッとちぎり、折り畳んであるおみくじを開くと……
『よっしゃあ大吉ィ!』
『ええええ!!なんでセーヤがっ!!』
レイナがドン引きしているがまぁ、気にしないで置こう。
てかこれ、あながち間違ってはないな、あんず飴も当たったし宝釣り一発だったし、女の子を救えたし、今日の俺は大吉だ!
『なんでそんなに悲しそうなんだよ、次はレイナだ、覚悟しな!』
『ううう、大吉来い大吉来い大吉来い!!』
『そんなにやっても無駄だ!いっけぇ!!!』
眼鏡を通してレイナにおみくじを見せる。
『キャーーーー大凶ォォァ!!!』
俺の頭に聞いたことのないような絶叫が駆け巡る。
うるせぇぇぇぇ!!!
『たかがおみくじでお前はどんだけ悲しんでんだよ、ほら帰るぞ!』
『うっ、ううう、一年に一回しかない大事なイベントなのに……』
『別におみくじなんていつでも引いていいんだぜ?』
『え!?ネットには引けないって書いてあったよ!?』
『なーにいってんだか、いつでも引けるよ!』
『じゃあ今!今引こっ!ねぇねぇ!セーヤーおねーがーいー』
『でも一日に引いていいのは一回だけです!また今度な』
『ちぇーーセーヤに負けるとかちょっとショックー』
『ふん!今の俺は最高に運がいいからな!最強だぜ!』
そんなどうでもいいことを話しながら俺らは帰路に着いた。
神社から少し離れた住宅街からいまだにベルトを巻いたままの男を眺める目線が1つ。
「あっ!あの人だ……まだベルトしてるし……今度また会えたら……」