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希望へ  作者: 桜本 結芽
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第5話 決意を固めて!

 新たに仲間になった美月の治癒能力で怪我を治した晴久達は先へ進む前に研究所の話を聞くため、草原で円になって座りしばらく黙っていた研二は重い口を開くと語り出した。


 超能力研究所は戦争に使う地球上で最強の人間兵器を創り出すため地球人達だけの時代に造られ、〔マウス〕と呼ばれる独り身で大人の男女を集め彼等から検体を採取しそれに電気刺激を加えた後、培養液で育てるのだが何度も失敗してその検体は捨てていき研究所が造られてから十年後にある検体が偶然成功して育ったのが研二で、彼は成長する度に能力値が高くなっていきそれに恐れた研究員達は、研二に手錠を付け他の〔マウス〕と共に閉じ込めていたのだがさらに十年後突然地震が起きたと思った次の瞬間銃声がして、その後変わった発砲音がすると研究員達の断末魔の様な声とむせ返る様な血の匂いがして、そのすぐ後に牢屋と廊下を繋ぐ扉を蹴破る音がするとそこから金髪で耳が尖った〔何者か〕が入って来て、彼等を見た研二は咄嗟に自分の〔時〕と〔姿〕を止めた後侵入者は横の誰かと何かを話し合うと、銃口を騒ぎ立てる〔マウス〕達に向け炎を吹き付けた直後気を失った研二はフッと目を覚まして辺りを見回すと炭と化した牢屋の中に倒れていて、曲がった格子を跨ぎ外へ出てみるとあの時の〔何者か〕が研究の続きをしていて、その時通りすがった宇宙人の会話で地球は侵略されすでに百年が経った事を知り、命の危機を察知した研二は逃げる決意を固め扉に手をかけたその時目眩がすると、頭の中に黒い髪の青年が奴隷商人の牢屋から抜け出し宇宙人二人と共に旅に出てさらにもう一人増える光景が浮かび、自分と同じ超能力をもつ青年は『晴久』という名という事も分かったので、いざ扉を開けようとした瞬間宇宙人の研究員達が『晴久』は実験台として奴隷商人に売りつけ、どれ程能力値が伸びるかを研究している事を聞き研二は怒り宇宙人三人の前に姿を見せて驚く彼等を殺害すると、扉を開け生まれて初めての外へと飛び出し決意を固めて『晴久』と会うために昼夜を問わず走り続け、四日後に能力波を感じた研二はそこに近付くと悪党がフードを深く被った人物の首元に小刀を当てていて、フードを被った人物の仲間達も苦戦を強いられているのを見た研二が悪党だけに限定して能力を使うと、フードの人物が苦しげに息をしている事に気づき彼は自分の能力波に共鳴しているのだと確信すると、急いで近付き簡単に説明してその場を離れ今に至る事を全て話すと、冷静に話していた研二はレイラと美月が目を赤くして泣いていてテレンスとアミディオは俯いて震えていたのだが、晴久は納得した様な表情で研二を見つめているのに気づいて研二は微笑みながら、

 「あまり驚かないんだな、晴久は」

 と言うと彼は気まずげに俯いて、

 「お、俺は水の中で奴隷商人に売られる事はある程度知っていたから……でも、あんな扱いを受ける事までは分からなかったけど……」

 そう言うと驚いた研二は目を丸めながら、

 「培養液の中にいた時の事を……覚えているのか? それも、言葉の理解もして?」

 と次々に質問された晴久は戸惑いながら頷くと、研二が大きくため息をついて頭を抱えていたのでアミディオが間に入って、

 「ど、どういう事だ? 俺らにもわかるように説明してくれ!!」

 そう大きな声で尋ねると研二は疲れたように、

 「晴久君は産まれる前からある程度の知識とその時の記憶が残っているという事だよ、それを逃げた研究員達が漏らしてしまえば、彼等は血眼になって晴久君を消しにかかるかも知れない……手配書には我々も載って生死問わずと書かれるはずだ、そうなれば地球を救うどころではなくなる」

 淡々と説明する研二にテレンス達は顔を青ざめて見つめていると、ニッと笑いながら研二が人差し指を立て、

 「でも、我々が先手を打てば可能性は高まる」

 と言って立ち上がり座っている仲間に微笑むと、

 「早く行こう、首都を目指して!!」

 そう言うと晴久達も立ち上がり頷き合うと進む為に歩き出し、その日の夕方にはオルペクールの街が見える丘の上で野宿を始め、その時晴久が美月と研二の仮の名前を決めようと言い出しテレンス達は悩みながら呟いている中晴久が閃いた様に顔を上げて、

 「美月がレイネ·ロビンソンで、研二がイワン·フォルフってどうかな?」

 と緊張気味に言うと美月が目を輝かせて、

 「ありがとう! お兄ちゃん!!」

 そう手を握りながら言うと晴久は口元をひくつかせながら、

 「い、いや……どう、いたし……まし、て?」

 とぎこちなく言っているとテレンスとアミディオが笑いを堪える様に震えていたのでそれに気付いた晴久が、

 「し、仕方ないだろ! ありがとうなんて、言われた事がなかったんだから!!」

 そう不機嫌そうな顔で反論するが声を上げて笑うアミディオに腹を立てた晴久は、人差し指を上にすっと上げ能力を使い地面を隆起させてアミディオに当てると不意を付かれたアミディオは、

 「いってぇ!」

 と声を上げ隆起している地面を睨み次に晴久を睨むと、

 「なにすんだよ! いってぇな!!」

 そう怒ると晴久はつんとして、

 「アミディオがずっと笑うからだろ?」

 と言って席を外すと負けじと喧嘩をする体勢のアミディオを止めようとテレンスが仲介すると、

 「てめっ、裏切り者ー!! お前も笑ってただろうが?!」

 そう言ってさらに怒るアミディオを苦笑しながら羽交い締めにするテレンスを見ていたレイラと美月が笑いだし、赤面して力を抜くアミディオにテレンスはニヤつきながら小声で、

 「またレイラに笑われたな、あんまり晴久と喧嘩すると嫌われるよ?」

 と言うと驚いて振り向いたアミディオが、

 「う、うるせぇ! って言うか気付いてたのかよ!?」

 そう小声で返すとニヤリと笑い返すテレンスに面食らった表情で、

 「おまっ、試したな?!」

 と衝撃を受けたアミディオは固まっているとテレンスが背中を叩きながら、

 「連れて行ってもいいけど、泣かせたら僕が怒るからね?」

 そうアミディオの肩に腕を絡めて真剣な眼差しで言うので、アミディオは顔を青ざめてテレンスを見返しまたニヤリと笑う彼が今度は強く背中を叩いてから、

 「嘘だよ! アミディオはレイラを大事にするってちゃんと分かってるからね! まぁ半分は本当だけど」

 最後の一言を小声で言うとアミディオが、

 「マジかよ?!」

 と振り向いて声を上げて笑うテレンスに憤慨といった様子で文句を言っていると、少し遠くで様子を見ていたレイラと美月はまた楽しげに笑っていて、それを焚き火から離れた場所で座って見ていた研二と晴久も口元を綻ばせていてその後沈黙が続きふと研二が、

 「晴久君は確か、培養液の中にいた頃の事を覚えているんだったよね? 昔の記憶はどの辺からあるんだ?」

 そう十歳とは思えない程大人びた表情と声音で尋ねられた晴久は座り直すと遠くを見つめながら、

 「最初の記憶は赤い水の中にいる俺の手足で、その後は金髪の宇宙人だったな、耳が聴こえる様になったのはその少し後で、水の中で寝てると知らない声がして起きたんだ、そこには見た事がない藍色の清潔で手入れが行き届いた身なりの良い宇宙人が俺が入ってる赤い水の前にいて、その人が俺を何度も見て最後には微笑んでから立ち去って、その後も何度か来ていたのを覚えてる」

 と説明していると研二が何か脳裏をかすめたのか眉根を寄せながら真剣な顔付で、

 「その藍色の服を着た宇宙人はどんな髪の色をしていたか覚えているかい⁈」

 そう凄い剣幕で尋ねられた晴久は面食らって目を見開きながら、

 「た、確か……銀髪だった、はず……だけど?」

 と答えると研二は怒りが混じった表情になり怯えた目付きの晴久に気付くと穏やかな顔に戻して、

 「すまない、昔の事を思い出していたんだ、私が閉じ込められていた牢屋を燃やした宇宙人の事を……確か、スヴェン·オーリスという名前だったはず、でも……宇宙人は百年も生きられるものなのか?」

 そう思案にくれている研二の後ろに回ったアミディオが、

 「俺達宇宙人でも年が経てば歳もとるけど、あの方みたいに若さは保てねぇよ」

 と平然として言うと晴久は驚愕といった顔で、

 「どういう事?」

 そう尋ねるとアミディオは困惑気味に、

 「俺はあの人が100年前に自分の身体をサイボーグにしたから歳を取らないってのは聞いたけど、本当かは分かんねぇ……」

 と言っているとテレンスが真剣な顔で、

 「でも、オーリス陛下は僕のお婆ちゃんもあの人は特別なんだって言ってたな、それに酒場で酔ってた近所のおじさんも陛下のその事を言っていたら、軍人に聞かれて連れて行かれた後帰って来なかったって噂もある、きっと事実なんだよ」

 そう言うと一同はゾッとした顔で俯き晴久がふと顔を上げると、

 「で、でも、そのオーリスって人に直談判すればいいと思うんだ……」

 語尾が小さくなりながらも話す晴久の言葉にテレンスも顔を上げ、

 「そうか! 今の地球で奴隷制度を廃止できるのはあの人しかいないんだ! 一刻も早くサーベルに行かないと!!」

 そう言うと立ち上って仲間を見回すと、

 「明日の朝は早く起きて急ごう!!」

 とガッツポーズをしながら言うと視界が明るくなった表情の一同は立ち上がって頷き、テレンスが初めに右拳を突き上げると仲間達も右拳を突き上げて皆で固い決意を表した。

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