第4話 待ち受ける試練
研二と出会って歩き出してから2週間後やっとの事で山を抜ける事が出来てホッとした一行は、ため息をついているとエルベルトが何かに気付き小さな声で、
「また来る、でもそんなに人数はいないと思う」
そう言って今来た山の反対方向を指差して数分後大型電動バイクがけたたましい音を放ちながら走って来て5人に気付くと、更にスピードを上げて近付いて来てバイクを止め5人を軽蔑の眼差しで見下しながら、
「なんだガキだけか、こりゃあ早めに終わりそうだな!」
と言って全員で下品に笑うと後ろで立っていた男二人に人差し指で合図を送ると、男達は鉄の棒を持って走って来ると1番手前にいた研二に襲いかかるが、棒は男の頭の上で浮いていて訳が分からない男達が呆然と上を見上げていると、突然棒が動き出し一瞬で伸してしまうと他の男達も空中に浮く棒に攻撃され逃れた数人はアミディオやレイラに倒されていき、電動バイクの男達は一目散に逃げて行くのでそれを見送ってからアミディオが研二に向き直り、
「あんた、そんな事も出来たんだな!」
そう言われた研二は不思議そうに首を傾げるとアミディオは苛立ちながら、
「あの棒を動かしたんだろ?」
と言って未だに浮いている棒を指差すとやっと気が付いた研二は納得したように、
「あれも私の〔能力〕だよ、小さい方が彼への影響が少ないからね」
そう平然と言うのでアミディオはため息をつくと研二は気にせずに歩き出し、4人も慌てて付いて行くと三日後には町外れの畑が広がる場所にたどり着き、畑仕事をしていた宇宙人達はフードを深く被った2人組を守るように、宇宙人の子供3人が囲っている光景を怪訝そうに見つめていたがすぐに畑仕事に戻りそんな街の宇宙人達を見ないように、エルベルトは俯いて歩いていると突然彼は〔何か〕を感じテレンスに小声で、
「テレンス……この近くに白くて古い建物があるはずなんだ、そこに行っても……いい、かな?」
と言われたテレンスは不思議に思ったが、
「分かった! エルベルトが行きたいなら、行こう!」
そう笑顔で言った後研二の顔が曇ったのを見逃さなかったテレンスは尋ねると、
「大丈夫だ、私はなんら変わりない、行こうか」
と微笑んで言うがまだ心配するテレンスの肩を軽く叩いてから顔を寄せると、
「何があっても晴久君を頼むよ、我々には君達のような宇宙人が必要なんだから」
そう小さな声で言うと先に行った仲間に追い付くために走って行き、テレンスはさらに心配したが顔を叩いて気を引き締めると右手を強く握り、走って仲間の元へ走って行き合流して彼等が道を外れて草原を歩く事数時間ほど、夕方近くに白くて古そうな建物が見えたので近付くとその建物の外観は筒の様で窓は一切無く、エルベルトが建物の壁に触れると何かが見えたのか目を見開いて、
「ここに、いるんだな? ……美月」
と呟いてドアの溝を見つけて軽く触れるとドアはすんなりと開き、その瞬間エルベルトが何かに取り憑かれた様にフラフラと中へ入って行くので、テレンス達は困惑気味に入るとドアが勝手に閉まり元々怪奇現象的な物が苦手なレイラはアミディオの腕にしがみつくが、実は彼も苦手な方なので2人して震えていると後ろから肩を触れられたアミディオは叫び声を上げそうになり口を塞がれると、
「しっ! 私だから安心してくれ、今から灯りを付ける」
と言うと右ポケットから四角い箱を取り出し片端が繋がっている蓋を開けると、油臭さを漂わせて箱に火がつくと驚く宇宙人3人に研二が、
「これは昔の地球人が作った創った〔ライター〕だよ、でもこの暗さでは意味なかったな、それに……」
そう途中まで言うと唐突に建物の電気が一斉につき、
「私達は入って来た瞬間から囲まれているから電気が着くと思うよ」
と最後まで冷静に説明する研二に怒鳴ろうと口を開けかけたアミディオを止めながら、テレンスが2回にずらりと並ぶ宇宙人の大人達を睨んでいるとその内の1人が両手を広げてエルベルトに、
「こちらに来なさい、晴久」
そう言うとエルベルトはフラフラと歩いて行き、咄嗟に止めようと腕を掴むテレンスの手を振りほどき階段を上がって行くと、宇宙人の前で止まり茫然と見ていたテレンス達は状況が呑み込めず立ちつくしていると後ろで研二が苦しげに頭を抱え、
「恐らく彼は脳波を乗っ取られているはずだ、超能力を持つ人の脳波は普通の地球人や宇宙人とも違うから……それに我々の脳波を捕まえる事はこの施設では容易い事なんだ……」
と言って膝をついて更に苦しむ研二に宇宙人は、
「久しぶりだな、この地球上で唯一の奴隷では無い地球人、そして前超能力研究所で〔地球人〕が創り出した超能力者、香月 研二!」
そう勝利に浸り高笑いをする大人の宇宙人を見返してテレンスが、
「創ったって……どういう事だ?!」
と目を吊り上げ怒鳴るテレンスに宇宙人達はバカにしたように笑うと、
「どういう事も何も、人間兵器を創ろうとした地球人の代わりに我らが超能力を持つ地球人を創っていたんだよ! ここにいる彼もね!!」
そう言ってエルベルトの肩に手を置くと彼は少し身じろぐが、それもすぐに治まりテレンスは歯ぎしりをしながら、
「エルベルト! 目を覚ませ‼ そこから離れるんだ!!」
と怒鳴るように彼に呼びかけると彼は反応して脳波を打ち破ろうとするのだが、彼の後ろにいる宇宙人が慌てて何かの機会を取り出すとダイヤルを回すと、エルベルトの抵抗が小さくなり動かなったのだがその時の波動で研二の苦しみ方も強くなり、レイラが近づいて支えられていると宇宙人が大きなレバーを降ろすと、1階の奥まった場所の真っ暗な場所で檻が開く音がして次に獣が唸る声が聞こえてきて、数秒後に暗がりからたてがみが生えた大きな獣が牙を剥き出して出て来ると、口からは緑っぽいヨダレが垂れていていかにも毒を持っていそうだと考えていると、
「その獣の牙やヨダレには致死量の毒が入っているからかするだけでも楽に死ねると思うよ」
そう案の定嬉しそうに言われ焦るテレンス達の後ろで苦しげに息をしていた研二が力を振り絞り、獣を浮き上がらせると吹き飛ばして大きな機械へぶつけ獣を伸してしまうと、先程より楽になったのか汗を手で拭いながら一つ深く息を吐くと2階を睨み、
「晴久君を返せ!!」
と怒鳴りつけると怖気付いた宇宙人達は次に違うレバーを下げ檻を開けると、出てきたのは複数の少年少女達で彼らの耳朶にはタグを付けられている事に宇宙人が、
「彼らは我々が創り出した戦闘用能力者だ! さあ、その細腕で彼らを倒せるかな?」
そう言われたテレンス達はムッとして大人の宇宙人達を睨み付け戦う構えをとると、2階の宇宙人達は口元を歪ませ怒りながら、
「あの生意気な小僧共を始末しろ!」
と大声で命じると指示を待っていた地球人の子供達が一斉に飛ぶような速さで駆けてきて、テレンス達と戦闘になり攻撃を難なく避ける彼らを見て慌てた宇宙人達は、機械のダイヤルを回すと子供達の動きが早くなったので、テレンス達は防戦一方になっていき苦しげに戦うテレンスは後からの攻撃を受け吹っ飛んで壁に激突したが気を失う事は免れ、満身創痍でまた構えると宇宙人達は身体を震わせ怒鳴るように次の命令を送ると、更に強く攻撃してきた子供と戦っている間に研二は姿と気配を消してそっと抜け出し、晴久が言っていた〔美月〕と言う人物を探して研究所の中にある牢屋のとある部屋を歩いていると、一番奥に1人の黒髪でロングヘアの少女を見つけ能力で鍵を壊すと怯える少女に手を差し伸べ、
「安心してくれ、私は君を助けに来たんだ、君のお兄さんが戻れなくなる前に何とかしたいんだ」
そう手を差し出された少女は見上げると研二は本気だと悟り怯えながらも手を取った。
そして研二と少女が大広間に戻ると人間の子供達は一人残らず倒されていたのだが、テレンス達は息を切らせて膝を付いていて目の前には風をまとった晴久が立っていたので、テレンス達は晴久と戦っていると研二は気づき、それを宇宙人達は嬉しそうに見ていたので怒りが湧き上がった研二は飛び出そうとしたが、少女に止められ振り向いて目で問うと彼女は首を振って前へ出ると瞳を閉じ集中をし始め、晴久が一瞬動きを止めて苦しげに顔を歪めると2階の宇宙人達が忌々しげに機械のダイヤルを回し、更に苦しそうに膝をつく晴久を見た研二は怒りで我を忘れ能力を発動させて機械を壊すと、晴久の脳波を操っていた電磁波が途切れ気を失い倒れた彼をテレンスが抱き上げすぐに呻きながらも目を覚まして微笑む晴久に、テレンスも微笑返した途端宇宙人の1人が隠し持っていた銃でテレンスの肩をを撃ち、血を流して倒れる彼を見た晴久は目を見開いて呆然としていたのだが次の瞬間叫びながら竜巻を起こし、建物が軋む音がして壁の塗装が剥がれ出すと危険を察知した研二が止めようとするが風に拒まれ近づけず、その時気を失っていたテレンスが目を覚まし涙を流して莫大な能力の放出をしている晴久の手を取り、
「晴久……僕は、大丈夫だから、安心して……」
と腕の痛みに顔を歪めてそう言うと晴久は能力の放出を完全に止めテレンスを見返すと、
「テ……レン……ス……」
そう言うとその場で倒れ晴久の横に少女が走って近付くと怪我をした2人を見て顔をしかめながらテレンスの傷を治癒能力で治し、そのすぐ後に晴久も治していると2階の宇宙人達が一斉に銃を構えているのに気付いた研二は、全ての宇宙人と銃へ辺りにあった石を飛ばすと殆どが息絶えたのだが残った宇宙人達は逃げて行きため息をついて仲間に近付くと、目を覚ました晴久に一安心して仲間の中心で大粒の涙を流す少女は、
「お、お兄ちゃ……ん!」
と言った後大泣きする少女の頭を撫でながら、
「美月……だよな? やっと……会えたな……」
そう言って微笑むと周りの仲間達も微笑みながら2人を見守っていた。




