第1話 テレンスの友人と
晴久が決死の覚悟で脱走してから一夜が経ち奴隷部屋は早朝から、誰かがいなくなったという噂でざわついていて、そのせいで何人もの奴隷が看守に意味なく怒鳴られていたのだがその間も奴隷商の部下たちは右へ左へと駆け回っており、奴隷達の一日に一度しかない貴重な食事を出さずにいたので彼等は腹が減っていたのだが誰も言い出せずにいて、もうじき労働の時間が近付いて来ていたので看守達は慌てて支度をして奴隷達を労働場所に連れて行き、またあたふたとしていたのだがその頃の晴久はというと生まれて初めて見るまともな食事に戸惑いながら、
「こ、これはなんですか? 本当に食べ物ですか……?」
そう尋ねるとテレンスは少し悲しげな表情で、
「そうか、晴久はこういう食事を食べた事無いんだよね」
と言ってから元気に微笑んでガッツポーズをすると、
「それじゃあ、晴久はこの食事が初体験だね!」
そう肩を軽く叩きながら言うと晴久も微笑みながら、
「そうだですね」
と言ってから食事を取ろうと椅子に腰掛けた途端ドアが激しく叩かれたので、晴久は驚きで身を固くし緊張していると、
「おーい、テレンスー! こんな朝っぱらに呼ばれて来たんだから、早くドアを開けてくれー!」
そう気の抜けた声がしたのでテレンスは小さな声で安心してと晴久に言ってから、ドアまで歩いて行き開けるとそこには1人の宇宙人の少年が立っていて、彼はシャーロットに挨拶をしてから晴久の目の前に来て、
「よお! お前が話に出てた地球人か⁈ 見た目は俺より年下だけど、ホントは俺らより年上なんだよな? でもこれからの旅ではよろしくな!」
と明るい笑顔で言うのだが未だに緊張して下を向いている晴久を見て少しムッとしたように眉根を寄せると、
「なんだよ、挨拶も無いのかよ?」
そう言われ怯えた様子の晴久は恐る恐る手を差し出して、
「は、晴久です、よろしく、アミディオ……」
と挨拶をしかけたが晴久は自分がまだ相手の名前を聞いていない事に気付き、固まって困惑しているとアミディオは突然吹き出し、
「あの話は本当だったんだな、テレンス! 未来が見えるなんて羨まし過ぎだろ!」
そう言って楽しそうに笑い続けしばらくして収まるとまた手を差し出し、
「もう知ってるだろうけど、アミディオ・フェニックスだ、よろしくな晴久!」
そうにこやかに言って握手を交わすとアミディオも朝食を取るため椅子に座り4人は今後の事を話し合い、その内容はテレンスとアミディオと晴久の3人はこの街を出て首都へと目指し、全宇宙連盟地球本部総長に地球人の奴隷制度を廃止して貰うための直談判に行くというもので、この街から首都まで行くには歩いて約数ヶ月はかかる上に途中で晴久が捕まる可能性もあるのだが、テレンスとアミディオは戦闘力が高いため問題は無いという事だが晴久は不安そうに眉根を寄せて、
「俺は……どうすればいいですか? 守られているだけでは申し訳ないです……」
と遠慮がちに言うとアミディオが、
「それじゃあ晴久は未来が見えるんだし、俺達が戦っている時に次にどこから攻撃が来るのか指示をくれよ、俺達はそれで戦うからさ」
そう言われた晴久は真剣な表情で、
「わかりました!」
と頷き朝食時の会議から1時間が経ち3人は出掛ける準備が終わると、テレンスとアミディオは家族に学校が長期休校に入ったので友人と旅行へ行くと伝え、晴久は地球人だという事を隠すためにフードを深く被り屋敷の外へ出て街の中を歩いて進み、出口へと足を踏み出すとそこには岩山が突き出ていて、テレンス達の街は岩山の谷間にあった事を晴久は初めて知り驚愕の表情で声が出ずにいるとそれに気づいたテレンスが、
「すごいよね、この岩山……地球人だけの時は雪山だったらしいよ」
そう微笑みながら言うと晴久は頷いて返事をしていると横からアミディオが、
「この街は100年前までは反逆者が住んでたって先生が言ってたな、それを俺達の祖先が奪ったって話だぜ、ホントに先人達は酷い事するよなぁ」
少し寂しげに言って晴久を振り向き、
「晴久、ごめんな……俺達の祖先や親父達が辛い思いをさせて」
と本当に申し訳なさそうに言うと晴久はもう迷いが無い真剣な表情で、
「そんな事もう忘れましたよ、地球人の奴隷制度を無くすのが俺達の役目ですから……さぁ、行きましょう!」
そう言って歩き出しテレンスとアミディオも後ろを歩き出した。
そして街を出て歩き出してから12時間が経って夕方になると、3人は山の中腹辺りで野宿をするため手持ちコンロを取り出し料理を始めようとした時、晴久は何かが見えたのか突然止まりそれに気づいたテレンスが、
「どうしたの?」
と尋ねると晴久は眉根を寄せ険しい顔つきで、
「もうすぐ5、6人の男達が俺達の持っている物を奪いに来ます! 戦いになるから火は消した方がいいと思う」
そう言うと2人は頷き冷静な動きで火を消してからしばらくすると、数分後に爆音を鳴らしながら大型バイクに乗った男達が来てテレンス達に気付くと、
「こんな所でガキ共がなにやってんだぁ? 俺達お兄さん達に何かくれるのかなぁー?」
とニヤつきながら言っていたのでアミディオが怒りの余り顔を赤らめながら、
「てめーらにやる物なんか何一つねえよ!」
そう怒鳴ると男達は額に青筋を浮かべ怒りで顔を曇らせると、
「何だと……? ガキのくせして生意気言ってんじゃねぇぞ!?」
と男が大声で言うのと同時に晴久が、
「アミディオ、顔面めがけて来る!」
と言うのが聞こえアミディオは男のパンチを片手で受け止めると驚く男をよそに、今度はアミディオが顔面を殴ると周りにいた男達が呆然としているとアミディオが見下したように、
「もう終わりかよ? 弱すぎだろ!!」
そう挑発するとさらに青筋を浮かべたもう一人の男が、
「ガキが俺達にたてつく気か!? 生意気なんだよ‼」
と声を荒らげて言うのだがアミディオは気にもとめずに、
「弱いくせに吠えんなよ、見苦しい!!」
そう小馬鹿にした言い方をすると男達は我慢の限界が来たのか、一斉に顔を赤く染めながら殴りかかって来たので、テレンスは晴久の横で守りながら近寄って来た男を伸していき、晴久はテレンスとアミディオに次にどこから攻撃が来るか指示を出し、数分が経つと2人だけで全員を倒してしまって気が付いた男達が逃げて行くのを見送ると、また野宿を始め夕食後3人はまだ寒さの残る山の中で眠りについた。
次の早朝目を覚ました3人は冷たい朝食を取ると支度を始め、山を下るため歩き始めて昼頃に食事を取るとまた歩き続け夕方頃には一つ目の山を越えていて、テレンスは小型のナビを開くと今の場所を確認して、
「うん、もう少し歩くと山を出られるはずだ、明日も頑張ろう!」
と言ってナビの画面を2人に見せて頷くのを確認すると満足気にテレンスも頷き、3人はまた野宿の支度をして2日めの夜を迎え3日目の朝3人は手馴れた様子で朝食を取り、支度を済ませると進みだしその途中晴久はテレンス達に宇宙人達の常識や言葉使いを教えて貰い、晴久もその全てを必死に覚えさらに山を越えるのに5日ほどかかったが3人は山の麓にある街へ着き、宇宙人がたくさんいる中で晴久は身を固くし緊張してテレンスと手を繋ぎながら歩いて入ると、その2人を好奇の目でみながら通り過ぎる宇宙人達をアミディオが睨みながら進んでやっと安宿へ入ると部屋を1つ取り、すぐに夕食を食べると部屋へと戻り首都までの道のりを話し合うため一つの机を囲みナビを見ながらモンティスが、
「この街から首都の《サーベル》まではまだ歩かないといけない、もちろん休憩はするけどもう少し歩くスピードを早めた方がいいね」
そう言うと晴久を見ながら、
「大丈夫? 辛かったら絶対に言うんだよ? 君はもう奴隷ではないんだからね」
と真剣な面持ちで言われた晴久は戸惑いながらも、
「わ……わかりました」
そう返事を返すとテレンスは微笑みながら頷いた。
翌朝3人はレストランで朝食を取り宿屋を出ると、街の南門の手前で門番に引き止められ緊張して止まると、
「そこの3人! 特にフードを被っているやつ! なぜそこまで顔を隠しているんだ? 今すぐ顔を見せろ!!」
と言って銃を突きつけられ晴久は喉を鳴らしさらに緊張しているとテレンスがスッと前へ出て来てフードを取ると、
「僕はモンティス家のテレンスです、僕達は今友人達と共に旅をしているところなんですよ、それにあなたが無事に仕事をしたければ僕達を通した方が身のためですよ」
そう睨みつけるような上目遣いで言うと次は門番が喉を鳴らし、
「し、失礼いたしました! どうぞテレンス様!!」
と横へ移動しながら汗だくの門番の前を通る時に晴久はあえて足を大きく上げ自分の足を引っ掛けようとした足を避けると、門番はあからさまに舌打ちをしたのでそれに気づいたテレンスが、
「彼、何かしようとした?」
そう晴久に尋ねると彼は小さくため息をついて、
「足を引っ掛けようとしてたから、避けただけです」
と遠慮気味に言うとアミディオは、
「まったく、心の狭い大人は嫌だな!」
そう少し憤りながら言っていたのだがテレンスは小さく笑うと、
「仕方が無いよ、僕の父さんは権力を使って色んなところを押さえつけてるから、内心疎ましい人もいるんだろうね」
という2人の会話を聞いた晴久はしみじみと、
「宇宙人側も大変なんですね」
そう言うとそれを聞いたテレンスとアミディオはキョトンとしてから大笑いしていたのだがふっとアミディオが笑い止まり、
「そうだ、晴久の偽名をつくらないとな? 今の地球人名だとすぐにバレるだろ?」
と言われテレンスと晴久も頷き立ち止まると考え始め三つほど案が出たが、しっくりくるものはなくずっと考えていると晴久が、
「エルベルト・ケンプ……」
それを口に出すとテレンスとアミディオは晴久を振り向き目を輝かせながら、
「それいいね! 君は今からエルベルト・ケンプだ! アミディオ、絶対間違えちゃダメだよ!!」
と嬉しそうにテレンスが言うのでアミディオも嬉しそうに、
「そんなバカなことするかよ!! それより、エルベルト自身が間違えんなよ!」
と晴久もといエルベルトの頭を優しく撫でるとエルベルトは嬉しげに、
「うん、ありがとうございます」
と言って微笑むと宇宙人2人も微笑んで3人はさらに先へと進んだ。




