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身勝手な願いの結末は、幸せか不幸か  作者: 氷雫月
第一章 それぞれの"物語"
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ある平民の少女の物語


あるところに、一人の少女がおりました。

ピンク色の髪に水色の瞳を持った、とても愛らしい少女です。

小さな田舎町で優しい両親との三人暮らし。家は少し貧乏でしたが、笑顔が溢れる、幸せな毎日を過ごしていました。


しかし、何の前触れもなく、幸せな日常は終わりを迎えたのです。


本当に、突然の出来事でした。


少女は一人、立っていました。

村全体が炎に包まれ、少女の家も、崩れ、燃えています。

少女は家族を探しました。声を張り上げて、周りを見渡します。

パパッ!ママッ!

少女は叫びました。

ガサッと、少女の後ろで何かが動きました。

ッパパ!?ママ!?

少女は振り返ります。そして、見てしまいました。

幸せな日常を壊したモノの、正体を。


それは、巨大なトラでした。

魔物と呼ばれる、体内の魔物を暴走させた理性なき、化け物です。


-------------ドスッ。

トラの魔物は、ゆっくりと少女に近づいて行きます。少女は恐怖や驚きに縛られ、動けません。

-------------ドスッ。

ガチガチと煩い音は、少女の歯音でしょうか。

少女はその場に座り込んでしまいました。腰が抜け、膝に力が入りません。

-------------ドスッ。

少女の心臓が、ドクンと脈打ちました。内側から熱い何かが込み上げて来るようです。

-------------ドスッ。

あと一歩のところまで魔物が迫って来ています。

ドクンッと、更に強く、胸が鳴りました。

-------------ドスッ。

魔物が、目の前で、大きく口を開けています。

牙には村人のものでしょうか。赤黒い血がベットリと付いています。


ドックンッと、心臓が鳴りました。

少女から何かが溢れ出し、少女の意識は暗転しました。

そのとき、少女が薄く笑ったのは、きっと、見間違いだったのでしょう。


時間は飛んで。

少女が暮らしていた小さな村は、燃えて無くなってしまいました。村を壊滅させたトラの魔物は、見るも無惨な姿で転がっていました。

少女は、魔力持ちだったのです。

暴走した魔力は、魔物と周囲にあったものを吹き飛ばしました。


村唯一の生き残りな少女は、その魔力の多さから、村を治めていた男爵家に養子入りすることになりました。


少女は部屋に籠りました。

周囲の人々は家族を失って悲しんでいるのだろうと、そっと見守ることにしました。


少女は引き取られた男爵家の部屋の隅で、蹲っていました。そして、込み上げて来る"歓喜"という感情を、必死に抑えていました。

少女は微塵も悲しんでいませんでした。


どうして悲しむの?全てストーリー道理なのに!


少女は前世の記憶があったのです。

前世の少女は乙女ゲームが大好きでした。

そして、幼いころに気付きました。


ここは乙女ゲームの世界であるとッ!

自分はそれの、主人公であるとッ!!


少女はこの転生した世界が、自分の為の世界だと信じきっています。


さぁ、楽しい楽しいゲームを始めましょう♪



少女は、気付きませんでした。

この世界のシナリオが、既に狂い始めていることに。

狂者が、少女の敵であることに。

少女は、気が付かない。





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