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ドキドキしながら迎えたクリスマス。
19時に優海と待ち合わせの約束をしたのは
昨日の部活帰り。
「明日何時にしようか」
『19時くらいかな?』
特別な日の約束だからといって変に畏まりもせず
これは二人の素の状態なんだなぁ。
にやにやしていたのがついさっきのような気がする。
それもそのはず。
僕は無論、女の子とクリスマスを
迎えるのは初めてで、
昨晩から今日起きるまで
いや、起きてもなおドキドキが止まらない。
時間感覚など正常なはずがない。
待ち遠しい反面
逃げ場のない19時が刻一刻と迫っている。
そうだ!!!
じっとしているから考えてしまうんだ。
僕はすぐさま、行きつけの美容院に連絡した。
「今日、大丈夫ですか?」
《おお。そらくんか!
1時間後くらいに来れるかな?》
「はい!大丈夫です!お願いします。」
クリスマスということもあり
いつにも増してお客さんが多い。
多いどころか座る場所がないくらいに。
《そらくん!いらっしゃい!こっちおいで。》
言われるままに鏡の前の椅子に腰掛ける。
《クリスマスに来るなんて、彼女できた?》
「実はその通りなんです!
かっこよくしてもらいに来ました!」
いつもの美容師さんは
《よし!任せといて!!
芸能人の○○くんみたいにしよう!》
え…?
いやいやいや。
顔が。
似合わないだろ。
そう思っている間に切り始められる。
覚悟を決めて目を閉じた。
少し時間が経ったと思い目を開けると
《お!起きたか。そらくん寝てたね〜》
なんて言われる。
時間を見てもそのようだった。
思わず鏡を二度見する僕に
《気に入りそうかな?》
「はい…びっくりです…似合ってる。」
大袈裟な表現かもしれないけれど
僕にはこの髪型が一番似合うだろう。
そう思わざるをえない出来だった。
気分が高鳴り
「ありがとうございました!またお願いします!」
《彼女を惚れ直させるんだよ!》
そんな本気とも冗談とも取れる表情で
見送られお店を後にした。
時間は17時。
一度帰宅してプレゼントや
服装を整えてから向かおうか。
ディナーはどうしようか。
山ほどある考え事を一つに
まとめ帰宅した。