表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

7

惚気話をするつもりはないけれど

僕の思いはまさに"それ"だった。


ストレッチがメインの練習。

夏の公式戦はベスト4という結果に終わり

3年生は引退していた。

どのみち僕が出場出来るのは来年の夏になる。

それまで焦らず調整をしていこうと決めていた。

野球のピッチャーが投球練習が出来ないように

ラグビーのフォワードが

コンタクト練習が出来ないように。

サッカー選手がボールを蹴れないのは

苦痛でしかない

そんな気持ちを彼女の一言で一蹴される。

『健康が一番だよう。

元気なら何でもできる。だから焦らないで。』

優海が思いつく最上級の優しさが伝わってくる。

だからこそ、僕は目標を明確にできたし、

達成させるために出来ることをしようと思えた。


優海は僕を連れ回すようになった。

この言い方だと強制的に聞こえるが、

僕も楽しかった。

いつも彼女がデートの計画を立ててくれる。

観たい映画。行きたい場所。

食べたい物。気になるお店。

部活が終わり同じ目的で

街に出る。この恋人同士の何気ない

時間がとても幸せだ。

彼女はバイトもしているから

いいのいいの。とお金を出してくれる。

男としてはあまりいい気分ではなかった。

『私は宇宙とこうして時間を

共有出来るのが幸せなの。

宇宙のためにバイトもしてるから。』

「よし!俺もバイトする。優海のために。」

優海が恍惚の瞳で…そうかと思えば

涙を溜めて…幸せを感じているのが

伝わってくる。

あぁ僕はなんて幸せなんだろう。

そんな気持ちにさせてくれる。

こんな幸せをこの先ずっと続くだろう。

いや、続けていこう。そう誓った。


足が完治した。医師から

《彼女のおかげですね。

後は君の気持ち次第だよ。

また繰り返すかもしれないという恐怖心に勝つこと。》

そう言われた。


うちの部活は、基本的に土日はOFFだ。

強豪にしてはあまりに少ない。

と思いきや、平日は鬼のような練習量だ。

短時間ながら内容が濃すぎる。

朝練が一時間半。ボールは使わない。

筋トレを三十分やる。毎日。

月曜日は腕を。

火曜日は足を。という感じで。

それが終わると、一時間走り込む。

5キロの持久走。30mダッシュ。10mダッシュ。

クタクタで授業を受ける。

昼休みに昼食を取ったらすぐに

自主練がある。内容は主に決まってないが

僕はシュート練習をする。

放課後練習は、連携や紅白戦だ。

四時間程。


それからバイトをするという優海。

流石に僕には無理そうなので、

幸い休みの土日バイトをしようと考えた。

引越し屋だ。テレビCMでお馴染みの。

これなら出たい時に出れるし

給料もかなりいい。

肉体労働で身体も鍛えられる。


クリスマスが目前に迫っていた。

バイトで稼いだお金で

プレゼントを考えている。

こんなの僕らしくないと思ったけれど

それは違うよなぁ。そんな葛藤を繰り広げられる

脳内。

僕は練習後、大型ショッピングモールに足を運ぶ。

あるブランド店に

目を奪われた。

このネックレス…

似合うだろうな…。

そう思っていると若い女性店員さんが

ニコニコ話しかけてくれた。

《彼女さんへのクリスマスプレゼントですか?》

「はい!大好きなんです。彼女の事が。」

《なんだか素敵ですね。

私が恥ずかしくなっちゃいました。》

「このネックレスください!!」

ニヤニヤが止まらない。プレゼントって

相手を思いながら買う物で

渡す僕がこんなに嬉しい気持ちになるんだなぁ

と感慨深かった。

《彼女さん。幸せ者ですね。》

「いえ、僕が幸せ者なので。」

お店の外まで見送られ、僕はお店を後にした。


彼女を。優海を幸せにすることは

僕の幸せなんだ。

その幸せを共有していきたい。

僕の頭の中は、初めてサッカーのことを忘れていた。

間違いなく。彼女が僕にとっての一番になっている。

ボクはプレゼントが入った袋を大事に握りしめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ