2
一時間目のホームルームが終わり
10分ほどの休憩を挟む。
周りに人だかりが出来ているのに
気づかないほど鈍感ではない。
「そらくんはモテるでしょ?」
「そらくんは本当に彼女いないの?」
「サッカー部入るの?私、マネージャーやろうかな」
九割がた女子の質問攻めにあっていた。
授業の準備の為
各々が席に着くと、
夏田さんが鞄から取り出した鏡を向けて
「どう?自分の顔はー」
意味の分からない言葉に
あっけらかんとしてしまう。
「そらくん、あっという間に人気者だねぇ」
少し間延びした口調が彼女らしさなのだろう。
「僕は人気なんてないよ」
そう心から思ったことを口にすると
「そらくん、イケメンだから
みんなほっとかないのかもねぇ」
これまた意味の分からない事を。
そんなやり取りをしていると
時間丁度に先生の声に呼び戻された。
これからの学校生活を説明するとのこと。
その時になりやっと鞄すら
忘れてしまっていたことに気付く。
「はい!これ貸してあげる!」
夏田さんが笑顔でシャーペンと消しゴムを
僕の机に置いてきた。
「やっと気付いたの?鞄忘れてることに」
彼女はくすくすと笑っていた。
初日からうっかりさんアピールも度が過ぎている。
帰りのショートホームルーム改めSHRが終わり
彼女に借りた物を返す。
「本当にありがとう。すごく助かったよ。」
そう伝えると、彼女は
にこにこしながら
「明日は忘れたらダメだよー」
と印象的で女の子らしい微笑みを
僕に投げかけた。
夏田優海。
間違いなく最初の友達と言えるだろう。
僕は嬉しくなって教室を後にした。
運命とも偶然とも
好きなように言えるだろう。
どちらにせよ、この日が僕らの始まりで
終わりまでのカウントダウンが
始まったのかもしれない。
そんなこと、今を生きている誰もが思わないこと。
例外ではなく僕もまた同じだった。