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電話を受け取った僕は

耳を疑った。

間違いなく優海の電話番号だ。

それなのに電話をかけてきたのは

優海の母親だったからだ。




《宇宙くんだよね。優海の母です。

あなたに話さなきゃいけないことがあるの。》

はい…とだけ口から出た僕に

《優海に絶対に言わないで

って言われてたんだけどね…

あの子心臓病なの…

それで余命がもって半年なの。》




僕は理解できなかった。

言葉なんて出てくるはずがない。

病気?

余命?

あと半年?


僕はすみませんとだけ伝えて

電話を切っていた。

それ以上聞きたくなかった。

電話を切ってからも

グルグルとさっきの言葉が頭を駆け巡る。



なんで優海は黙っていたのだろう。

1人で抱え込んで

辛かったはずなのに。


さっきの優海の言葉も

辻褄が合う。


本人に直接聞こう。





そう思ってから二週間が過ぎた。

メールを送っても返事はなかった。

電話すら出てもらえない。


この時に会いに行っていればよかった。

しかしそれは後になって気づくこと。


冬休みも終わり、

学校が始まる。部活にも顔を出さない優海のことを

心配して登校すると、

何もなかったかのような笑顔で

『おはよ〜!!!』と言う彼女。

僕は頭が痛くなった。

というより、理解に苦しんだ。

え?

どういうこと?

それが本音だった。


上手く話を切り出せな僕は

「放課後話しあるから。」

そう伝え席に着いた。


その日の放課後部活を休んだ。

優海と話すために並んで歩く。

「なんで黙ってたの?」と僕の口からこぼれた。

ん?と言いたげな顔で僕の顔を覗いてくる優海。


「お母さんから聞いたよ。」

『やっぱり。ごめんね。クリスマスの日。帰ってから具合悪くなってさ〜。入院してた。』

「なんで黙ってたんだよ!!!!」

思わず大声で言い放ってしまった。


「ごめん…大声出して。」

『言ったところで何も変わらない。

言って変わるのも怖かったから。

もし伝えてさ?そんな女嫌だって

思われたくなかった。』

「そんな…。そんなこと思うわけないだろ…。

僕は優海を一人ぼっちにしてたんだね。」


優海は何も言わず、

僕より数歩前で立ち止まった。

振り返らず鼻声で言った。

『小さい頃から心臓が悪くて、

ここまで生きてられる予定じゃなかったんだ。

長生きしちゃったから、

死にたくなくなっちゃったよぉ…』

肩を震わせながら

地面にポタポタと涙を落とす彼女。


僕は大丈夫だよと何の根拠もない言葉を

かけるしかできなかった。


『こういう時は抱きしめるもんでしょーが』

言われたからじゃなく、

本当に僕もそうしたいと

抱きしめた。

どれくらいそうしていたか分からないほど

抱きしめていた。




ずっと続くと思っていたのは

僕だけだったんだ。

同じ幸せを共有していたはずなのに。

未来に対する期待は?

これが最後と思っていた彼女と

僕の考えは交わるはずがない。

大切にしようと思う気持ちも同じはずがない。

僕は来年はもっと。今よりも未来を考えていた。

その来年は彼女の視野にはないのかもしれない。



僕は僕自身を責めることしかできなかった。


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