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着替えを済ませ、
待ち合わせ場所に向かう。
当然早歩きになっていた。
待ち遠しかったし、少しでも早く会っ
て少しでも長く一緒にいたいと思ったから。
19時になり、姿を見せない優海を特に気にせず
待っていた。
19時15分になり慌てて走ってくる彼女。
『ごめんね!!本当に!!』
「僕も今着いたところだよ!」
『髪の毛切ったんだね!!とっても似合ってるよ〜』
素直に恥ずかしい。照れくさい。
イルミネーションに彩られた町並みは
クリスマスを強調していて、
とても一人で歩くには心が痛む。
それでも僕達二人を祝福してるように思えたのは
優海と過ごせて幸せな気持ちがそうしてくれているのだろう。
先ほど予約を済ませておいた
(ちょうど一席だけ空いていた)
お店に足を運び
場違いな雰囲気満載で
席に着く。
特別なコース料理が運ばれ、
優海は驚きの表情のまま固まっている。
僕はしてやった感にどや顔をプラスしたなんとも
憎たらしい顔をしていることだろう。
マナーなんてわからない僕をよそに
僕が見ても凄い!と思うほど
優海のしっかりした面を改めて
見ることが出来て満足していた。
食事が終わり、
綺麗なイルミネーションのある
夜景スポットに向かった。
幸い、都会ということもあり
近くに有名スポットがある。
『すごい。綺麗…』
優海の方が綺麗だよ…
なんてお決まりのセリフは言えるはずもなく
僕は「そうだね…」と言った。
会話なんて覚えていられないほど緊張していた。
ここでプレゼントを渡す。
驚いて声も出ない優海に
「いつもありがとう。
こんな時しか素直に言えないから。
大好きだよ優海。」
涙を堪えていた彼女は
ついに堪えられなくなった涙をポロポロと
頬を伝わせた。
『いつまで一緒に過ごせるのかな…』
そう言う優海に僕は
「ずっと一緒にいよう」と答えた。
『来年は…過ごせ…るか…分からない…』
僕は耳を疑った。
確かに聞き間違いかもしれない。
でもこの幸せな時間を噛み締めていたとはいえ
ハッキリ聞こえた、ぼそっとした声。
余計に耳に残っていた。
「どういうこと…?」
そう聞く僕に
彼女は
ニコリと笑い
『なんでもないよ〜!!』
と彼女らしい笑顔と口調で答えた。
僕はこの時何も知らなかった。
何も気付いてあげられなかった。
もっと早く気付いてあげれたら
何か変わっていたかもしれない。
今になって後悔が押し寄せる。
あの時の優海を救えたのは
間違いなく僕で。
あの時の優海を救えなかったのも僕。
ーーー 一人にしていたのも僕だったんだ ーーー。
その後、帰宅した僕の携帯に一本の電話がかかってきた。