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僕の名前は春山宇宙。宇宙って書いて…そら。

高校2年生、17歳。生きていれば……。





ピピピ…

鳴り止まない不快音によって

僕は現実に連れ戻される。


その不快音を止めるべく

寝ぼけ眼でそれを確認して目が覚めた。

それと同時に

「いつまで寝てるの!!!!」

とお母さんの声が家中に響く。


昨日までとは違う一日が始まる。

顔を洗い、歯を磨き

寝癖をさっと直し着替えを済ませ

リビングのテーブルに着く。

朝食は決まってパン派の我が家。

隣には一足も二足も先からいるであろう

妹のゆきが

「お兄ちゃん!!!遅刻しちゃうから早く!」

なんてお節介な一言を言ってくる。


黙々と食べ終わる僕は、

気合をそこそこに入れて

「行ってきます!」

そう言い残し僕は家を後にした。


そう、僕は今日から高校生になった。

これから待ち受けている未来に心を躍らせて

颯爽と通学路を進む。


そう

この時はまだ気付かず、知る由もなかった。

筆箱を持っていないことに。いや

鞄すら忘れてしまっていたことに。



学校に着くと

クラス発表の紙が張り出されている。

あ、あった。一年三組だ。

その通りのクラスに行き

黒板に張り出されている座席表を

確認していると、

小柄な女の子が声をかけてきた。

「おはよ!君どこの席? 」

僕は慌てて無言で指を指す。

「あ!隣なんだね!よろしくね!」

彼女はそう言い残し

一足先に席に着く。

少し冷静を取り戻した僕が

後を追い席に着く。


公立校なので、本来ならば

中学の頃の友達がいるのが当たり前だけれど

珍しく僕の中学からは僕だけだった。

彼女は僕とは逆隣の女の子と話をしている。

それから少しと待たずに先生が入ってきた。


ホームルームの時間割は

自己紹介と告げられ

僕の番がやってきた。


「春山宇宙です。中学の頃はサッカー部でした。よろしくお願いします。」

そんな簡易的な自己紹介を済ませると

黒板に書いた名前を見て

「宇宙って書いてそらって読むんだー!」

「俺もサッカー部入るからよろしくな!」

「彼女はいるのー?」

なんて思いのほか受けが良くて驚いた。

いや、最後のは余計だろ。

柄にもなく

「みんなよろしくね!」

口から出た後に自分でも驚いた。

今日は驚くことが多いな

そう思いながら席に着く。

間髪入れずに先程の彼女が

「彼女いるのー?」

なんて聞いてくるから

「秘密」

と意地悪を言ってみた。

間もなく彼女の番がやってきた。

夏田優海。

そう書かれた黒板をぼーっと

眺めていたら、

隣に腰を下ろす彼女。

「ねえ、私の自己紹介聞いてた?なつだうみ!」

少し拗ねた顔をして

すぐさま隣の女の子と話し始めた。


これが僕と彼女の始まりで

僕にとっての唯一無二の存在になり得るなんて

思ってもみなかった。

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