表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

再来の騎士

『英勇』という言葉がある。


英雄よりも勇者よりも多くの成績を残し、活躍する者。あまりに大それた意味合いゆえ、世界的称号だ。


– 英勇メルディアン。


歴史上ただ一人、その称号を与えるにふさわしい男が現れるまでは。

無敵無能、史上最強、あるいは人外れ。人間の強さを例える言葉は数あれど、英勇メルディアンを例える言葉は物足りないだろう。


あえて言うならば「理解不能」。


人間はもちろん、世界を統べる三界の

– 地上の竜、– 天界の天使、–冥界の悪魔 たちと何百年にもおよぶ激戦を繰り広げて無敗。さらにその後、世界終焉の危機となった大戦をもあっさり終わらせてしまった。


それが四百年前のこと。 後にも先にも、彼に匹敵する者は現れないと言われている。


……いや、言われていた。


「おめでとう。諸君らは選ばれそして機会を得た」


聖フィラン学園・入学式。


普通科学校の入学式にあたる日、初級学生騎士として入学した メル をはじめ、入学生に向かって学長が発した第一声だ。


「歴史上、英勇メルディアンただ一人が有する

『英雄』の称号を、諸君らが手にするという機会。君たちがこの学園で大した経験を積み、信頼すべき同志を見だし、そして『英雄録』を発見する成績に期待しよう」


それが二年前。あの時はまだ、学長の言うように自分も少しは期待されていたと思う。厳しい入学審査を通過した入学生として。


だが。


「メル、お前またクラスでビリか」


……成績の良し悪しは置いといて。

……どうして俺の成績だけが大声で発表されるのか。


メルは無言でその紙を受け取った。


「冬の進級試験に合格することでいよいよ上級生へと進級する。昨年の初級生から始まり、現在の中級生。そして上級生、卒業を控えた最上級生。冬の進級試験まで気を抜かずに頑張ること。ーーーメルッ!」


「はい」


「お前は皆より更に頑張らないと上級生にあがれないぞ」


「……はい」

下を向き暗い声で小さく返事をした。


午前中の授業のチャイムがなり、みんなが学食へと走った行った。メルは一人屋上へ行き鍵を開けた。端の方に腰掛けると朝買っていたパンを食べ始める。


「英勇録……か」


メルは、その単語をぼんやりと言っていた。

英勇メルディアンの遺品のなかに剣、装備品、その他の所持品は遺されていたが、たった一つ、彼の手元にあるべきはずの物がどこにも無かった。


メルディアンの手記『英雄録』。


地上のあらゆる秘境や聖域、天界から冥界に至る全ての旅をした男の手記だ。


その価値は、単なる英勇の遺品というだけではすまされない。終焉戦争の全容が記された唯一無二の歴史書であり、英勇自筆の剣技指南書であり、数多くの古代遺跡や精霊の住処が記された世界地図でもある。

たとえば、秘境や聖域といわれるエリアは、武器の原料となる希少金属の採掘地でもある。そこの場所が記されていたり、天使や悪魔や竜、あらゆる大型との怪獣との交戦記録も記されているという。


ーしかるべき者が英勇録を手にすれば。

ーそこに記された情報価値は、世界の覇権を掌握するに余りある。


「だからこそ、見つけだせば英勇か……」


”英雄録を発見した者に、歴史上二人目となる

『英雄』の称号を授与する”


世界連合協力会議で正式発表された提案だ。

全世界が新たなる夢見る時代。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ