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6話:狂人衝突

日付が変わってからの投稿。

いつの間にか寝てました。


新キャラがたくさん登場しています。

混乱防止のため、今度キャラ紹介の場を設けたいと考えてます。

甲高い音が鳴り響く。ドアノブを握っていた悠斗が少しびくつきながらも一気に開く。

すぐに悠斗は壁をまさぐり、電気のスイッチを探す。ぱちりと音を立てて部屋ひ光が灯された。

酷い有様だった。

床には資料が散らばり、整頓する余地のあるはずの棚にはぎっしりと資料が詰まっており、引き出すことなど不可能な様子だった。

「ふぅ……センセーも酷いこと押し付けるよな。俺なんか二回目だし。んで、この間よりさらに……」

散らばっている、という言葉を飲み込んだのであろう悠斗は、床の資料に目を落とした。

「アンケート、授業で使った資料の余り、その他色々……これ資源の無駄って言っていいよな?」

「そんな事言ってる暇あるのか? ほら、さっさと片付けよう」

俺は少しの心配事を家に置いてきていたことを忘れていた。怜那のことだ。

おそらくここで掃除をしていたら日が暮れてしまうだろう。それで俺は家に帰ると怒られるわけだ、主に飯について。

「何、何そんなに焦ってんの? 夜はこれからだぜ玲夜~?」

意味もなく肩を組んでくる。 もしかして、前のトラウマを思い出して変なテンションになっているのかもしれなかった。もちろん悠斗が、だ。

俺はうっとおしそうに悠斗の絡みを解くと、床に散らばった資料を集め始めた。

悠斗もケータイで時間を確認してから作業に取りかかった。


しばらくしてやっと床が見えてきた。 それに微妙な感動を覚えつつも俺は変な違和感を感じていた。

かさばっていた資料の下から鎖に繋がれた何かが出てきたのだ。 ソレに俺は見覚えがあった。

あちらの世界に居る人・・・・・・・・・・間は誰もが持っている・・・・・・・・・・はずのもの・・・・・

通行石トゥラフィック・ストーン。細めの錆びた鎖が巻きつけられていた。

しかし、石の輝きを抑えることは出来ていない。

赤。燃えたぎるような赤。かつてこんな色の通行石は見たことはなかった。

灯花さんが言っていたことを思い出す。あちらの世界に行く回数によって色が変わる、と。

怜那は青。灯花さんは黄。颯鬼は捨てたらしく持っていない。

では、この赤色の通行石は何を示すのだろうか。

幾度もあの世界へと旅立った者の存在? しかもこの学園で、滅多に人の来ない資料室に。

俺は混乱していた。こんなにも身近に、非日常の欠片が落ちていることに。

悠斗にばれないようにそれをポケットにしまいこむ。その瞬間、悠斗が叫ぶ。

「うわぁぁぁぁぁっ!」

「何だっ! どうした!?」

俺は自分の行動がばれたという可能性と何か他の嫌なことに対する可能性の二通りを心に留めていた。

悠斗を振り返るとこちらの方は見ておらず、何か一枚の資料を見ていた。

俺は第一の可能性が否定されたことに胸をなでおろしつつ、悠斗に近づいて行く。

「どうした、いきなり大声なんか出して」

「いやさ、このプリント見てくれよ。 ほら、この間のテストの模範解答」

にへら、と笑って見せた悠斗の頭を思いっきり叩く。

「あいたぁ! 何だいきなり!」

「うるせぇ馬鹿野郎! そんなリアクションするものでもねぇだろうが!」

「この間のテスト最悪だったんだよ。 それより何をそんなにも怒ってんだよぅ」

「いや、お前のさっきの顔がな」

それはもう殴り倒してもいいレベルに。

「顔て、……実はもう一枚。面白いものを見つけた」

「んだよ。どうせくだらないものなんだろ?」

「見てみ、いいから見てみ。 不審な金の動きですぜ」

へっへっへ、とよくわからない笑みをこぼしながら一枚の紙を掲げてさらに近寄ってくる。

うっとおしいと思いながらもそのプリントに眼をやる。

0がたくさん並んでいた。

「どう?」

「どうって……」

正確に言おう。 一千万だ、一千万円という数字がそこに書かれていたのだ。

おそらくこれは会計報告書。学校の備品、収入等の支出について書いてあるのだからこれは機密事項じゃないのだろうか。

そんなものが放って置かれていいのか……。

それよりも、問題はこの取引をした品だ。『鏡』とただそれだけが書かれている。

鏡一枚で一千万。これはなんの冗談なのだろうか。だが、俺はそれに対する答えを知っている。

「ふざけた会計報告書だよな、これ。 誰かが遊びで作ったとしか思えないよな。 鏡一枚に一千万円とかどこの富豪だっつうの」

悠斗のそんな言葉を聞き流しつつ、思う。

これは。

もしかしてこの取引された鏡とは。


魔境イビルミラーではないのだろうか───────────────。





赫逢騎士領団の面々は、『第二の鍵』を探すために世界を広げていた。

この世界を広げる仕事は元は赫逢騎士領団階位六と七が担当していた。それは彼らの能力が行動に適していたからではなかった。そもそも、赫逢騎士領団は世界を知ることなどを目的とはしていなかった。

存在理由はただ一つ。この世界に存在する能力。その限界を知ることであった。

だからこそ彼らは戦うし、キリカを団員としていた。

今となっては戦うことだけが赫逢騎士領団の存在意義だった。強い者はより上の階位へ、弱いものは死にこの世界の塵となる。そしてまた力のあるものが団員となる。

赫逢騎士領団は団員定員数は決まっているが、内部に居る者たちはこの世界の一年で三分の一は変わる。

現に、階位三のデリィが入った時には永久欠番である八と灯火の五を除いて三人は消えた。

言うまでもなく、元階位三の者は消えた。

このことから、赫逢騎士領団は仲間意識というものがほとんど存在していないことが分かる。

隙があれば殺し、順位を上げる。

言うなれば戦闘狂の住処。そう表現した方が正しいとさえ思える。

ただ、その中でほとんど動くことのない階位一、トモはどうして赫逢騎士領団の面子を生き返らせたのか。

そのことが分からなかった。

意図は何だったのか。それとも隣に居るリムという女に何らかの制約を付けられているのか。

少なくとも今は絶対に理解できないと分かっていた。

ブレンが死んだとき、全員がそう思ったに違いなかった。

赫逢騎士領団階位九の彼女は思う。

折角生き返ったというのに、わけのわからない女の私欲のために働かされるということが不満でならないと。

自分がここに居るのは、トモ様のためだというのに。

あの女はトモ様の隣に居る。悔しい、憎い、辛い。

トモ様を愛する権利があるのは私だけなのに、隣に存在するべきは私のはずなのに。

でもトモ様は分かっている。私がどれだけ愛しているのかを、どれだけ自分が愛されているのかを。

だから心配することはない。トモ様の隣は未来永劫私だけのものだから。

今は一時的にあの女に貸しておいているだけ、すぐにトモ様は気付く。隣には私がいないといけないことを。

だって、それが私の存在意義だから。 現実世界を殺した私の真意だから。

私が赫逢騎士領団に居る理由だから。

「おい、何をニヤニヤしてやがる。気持ちが悪い、早急に止めろ」

広大な赤い砂で構成される砂漠の一角。自分の少し前を歩いていた赫逢騎士領団階位七のイルはこちらを向いてそう言った。

気持ちが悪い。トモ様以外の男の顔など見たくもない。死ねばいい。そう、では、いっそのこと殺してみては。

そんな考えが過るが、彼女は思いとどまる。ここでこいつを殺そうものならトモ様の計画に支障が出る。

私は頭の回る女なのだ。どういう行動をしたときに、どのような結果が生まれるのかを考えることが出来る。

だから今は何もしない。いや、殺しはしない。

「なんなの? 私に命令できるのは階位一と最上階位だけ。 あんたには何を言われようと知ったことじゃないわね。 ふん」

「はぁ……。またトモ様トモ様か? そういうのも早急に止めろ」

彼は立ち止り、私の前に立ちふさがる。

赫逢騎士領団階位七、イル。 適度に鍛え抜かれた身体に鉄の胸当てを拵えて背には自身の倍はあるであろう弓が在る。 しかし、肝心の矢の方はどこにもない。

そんな奇怪な出で立ちをしている彼。右目はなんの真似か糸で縫われていて開くことが出来ないようになっている。 ゴッツリとした黒髪は後ろで束ねている。

彼の能力の予想は大体つく。それが自分の思った通りなのであれば、殺すことは容易い。

「なんなの? 私に指図しないで。あと、階位一のことを軽々しく名前で呼ばないで」

「何故俺がお前などと一緒に行動しなければならないのか。 早急に止めていただきたい」

「なんなの? 階位一とあのいけ好かない女の命令だからに決まってるでしょ。馬鹿なの」

「だから嫌なのだ。 暴言も早急に止めろ」

むかつく。やはりトモ様以外の男は自分に不快感しか与えない。

でも、そのおかげで余計トモ様が輝いて見える。最後に話をしたのはいつだっただろうか。早く会いたい。

そんな考えがグルグルと頭の中を巡る。おそらく、そのせいで前方の敵に気が付けなかった。

「おい、脳内妄想は早急に止めろ。 敵だ」

「なんなの? 今いいところ──────────────」


ゾクリ、と悪寒のようなものを感じた。


殺気の発せられる方向に目を向けると、いた。

背の高い男と背の低い女の凸凹二人組。


「ねぇ、兄様。 あの方たちからは愛には程遠い低俗な臭いがしませんこと?」

「そうだな、メタスタシス。 それに比べ僕ら家族は愛に溢れていると思わないか?」

「そうですわね、兄様。 あら、低俗なお方たちがこちらを睨んでいらっしゃいますわよ?」

「心配することはないさ、メタスタシス。 君は後ろに居てくれるだけでいいんだ」


ゴスロリと呼ばれるであろう恰好をした人形のように美しい少女に、なんの変哲もないただの開襟シャツに藍色のズボンを合わせた格好の青年。

異色なコンビが放った一番最初の殺気。とんでもなく可笑しく狂っているものだと理解できた。

なんだか同じ匂い・・がする。彼女らが言っていた言葉の意味通りではなく。同じ者、という意味で。


「なんなの? 私がイルなんかと共闘しろってこと?」

「俺も不満なのは同じことだ、アイナと共に戦えと? そんな冗談は早急に止めてほしい」

「なんなの? 気安く名前を呼ばないで。ふん」

「不服なら早急に終わらせればよい。 早急に、だ」



狂った四人が衝突したのはイルの言葉が途切れた瞬間だった。















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