もう、しないように
「全くオマエは! 何度同じことを言われれば気がすむんだ!」
「はい……すみません……」
また、同じミスをしてしまった。
またとは言うが、これで四回目。しかも全く同じ場所を同じ方法でミス。この怒り方も仕方ないさ。
「何度教えれば出来るんだ! ええ?!」
「すみません……次は、ミスらないようにしますんで」
「ようにじゃなく、絶対に失敗するんじゃない!」
「はい……」
確か、三回目の時も同じ会話したな。
「もういい! さっさと持ち場に戻れ!」
「はい……すみませんでした」
背を向けて歩き去る姿を見て、思う。
よく、同じミスを四回目もする人間を雇ったままだと。
そして、思ってしまった。
瞬間、歩き去るその前に、この世の物とは違う生物が現れた。
ダレかが、悪魔と呼んでいた。
その通り、闇のように黒い肌、血のように赤い瞳、同じ四足歩行の生き物と比べるまでもない巨体な肢体を震わせ、咆哮を響かせる。
こんな生物がいて、普通の人なら、どうするか?
もちろん、逃げる。その選択肢で構わない。
「ひ、ひぃぃ!! また出やがった!」
しかし突然の出現に腰を抜かしたら、それは出来ない。
最悪の場合、そのまま悪魔のエサになってしまうだろう。
悪魔もそのつもりか、逃げたくても逃げ出せない絶好の獲物目掛けて、牙剥き出しの口を開いて―――
―――その口内に、鉄の塊を撃ち込んだ。
ベースが犬なのか、怯んだ犬のような鳴き声で鳴いて食事を停止した悪魔に向け、止まることなく、取り出したライフルで銃弾を与え続ける。
当たる度に、鳴き、怯み、退き、睨み、怒り、吠えた。
その隙に、赤い瞳を撃ち抜く。
悪魔は涙と違う赤い液体を流しながら、その場に倒れ込み、塵のように消え去った。
「あ……う……」
「……」
お礼を言いたいのだろうけど、今さっき怒った相手にそれはどうだろうと思ってるんだろう。次の言葉は出てこない。
「大丈夫ですか?」
言われたい訳ではないけど、安否を確かめる。まぁケガとかは何もしてないけど。
「お、おぅ……ったく! 毎回毎回何なんだあのバケモンは!」
「……」
かれこれ、三回目だ。全部現れたその場で撃ち抜いたけど。
何故かよく狙われる。その理由、
呼ばせるようなことをするからだ。
いわゆる悪魔と呼ばれる物。
その、わりと高貴な血筋を受け継いだ。人とのハーフ。
その高貴故に、下に使える物が幾つかいて、感情の変化、主に怒りを覚えるとそれを覚えさせた対象に襲いかかる。
だから、呼んだ者として責任を持って撃ち抜いている。
今のところ、怪我人が出ただけで済んでいる。だが悪魔が本気を出せば、人の頭は腐りかけた林檎。身体はただの色々詰まった紙の箱でしかない。
だから、まず、呼び出さないように、感情を左右しないといけない、のに…
「次は、ミスらないようにしますんで」
また、同じミスをしてしまった。
以前書いた『目に見え』の流れを持つ作品となります。
前は、つながりの無い物語と言っていたのに、やはりつながりは欲しいですので。
感想及び評価、お待ちしています。
それでは、