第51話 戦いの後
ジュンメウキ王国の王宮における悪魔との戦いから1週間後のこと。
「……んん。ここは? ……はっ!」
シシラは目覚めた。そして、すぐに意識を失う直前の出来事を思い出して慌て始めた。
「悪魔との戦いはどうなったの!? ガミオ殿下や護衛の皆さんは!?」
「シシラ様!? 目を覚ましたのですか!?」
「え!?」
自分が騒いだ直後に現れた侍女の姿にシシラは驚き、一旦落ち着こうと思い直した。周りをよく見るとジュンメウキ王国の王宮の医務室にいるのだと気づく。……かつて暴れたアビスに怪我をさせられたことがあっただけに記憶に残っていたから気づけた。
「あ、あの、私と一緒に戦った皆は!? ガミオ殿下はどこに!?」
「今お呼びしますのでお待ち下さい!」
侍女は嬉しそうに部屋を後にした。すると、五分も経たないうちにガミオがシシラのいる部屋に入ってきた。
「シシラ! 目を覚ましたんだな!」
「「「「「シシラ様!」」」」」
「ガミオ殿下! 皆さん!」
シシラとガミオ達は互いに無事だったことを喜びあった。特にシシラは気を失って一週間も眠っていただけにガミオ達の感動は深かった。彼らは喜びながらもシシラの体調を心配して質問攻めしたり、涙ながらに感謝と喜びの言葉を繰り返すのだった。
しばらくしてから勝利した後の流れを話すことになる。
「王宮は4割が破壊されたうえに怪物を見た民衆も多い。それだけですでにパニックが起こっていたが、国王が直々に民に説明して聖女シシラが元凶の悪魔を倒したと宣言してからある程度だけ混乱は治まったんだ」
国王が説明したから混乱の全てが治まるわけではない。だが、根気強く詳しく説明したということもあり『ある程度だけ』は効果があったということだ。何しろ聖女伝説に出てくるような悪魔が現れたのだ。国王が「もう大丈夫だ」といって安心できるのは半分くらいだろう。
ただ、この国の聖女であるアビスが悪魔の復活に関わったことは伏せられたらしい。さらなる混乱を避けるためだが肝心のアビスは処罰を受けることになった。
「当然のことだが、聖女アビス――いや、アビス・アリゲイタは聖女から降ろされて、この国の教会本部で厳しい再教育を受けることになった。故意ではなかったとはいえ悪魔を復活させたからな。その両親である公爵夫妻も責任を問われて爵位を男爵にまで降ろされた。最も、彼らはそんな生ぬるい処罰にも文句を言っていたがな」
ガミオは悔しそうな顔をするのはアビスとその親達がどうしても許せないからだ。その理由は悪魔の復活もあるが、それ以上にシシラに対する扱いの悪さだった。
「あいつらは、シシラに縋ろうとしていた……自分たちが虐げてきたくせに、シシラが悪魔を倒したからって掌を返して……!」
「ガミオ殿下……」
どうやらアビス達はシシラの功績を自分たちのものにしようとしたらしい。ガミオの怒りの形相からシシラは察した。
「奴らは、シシラの親族だからという理由で……自分たちを褒め称えろなどと喚いていた……反省して罰を受けなければならない分際で……!」
「ガミオ殿下、もういいです。アビス達が救いようのない人達だってことはよく分かっていますから……」
「……それもそうか。そういう意味ではあの男も同じだったな」
「それってもしかして……?」
「ああ、この国の王子も似たようなことを言っていたさ」
この国の王子とはユームのことだとシシラも分かる。ガミオが顔を顰めるくらいなのだから。
「あの男は、あろうことかシシラとよりを戻したいなどどとほざいていた。だから、俺にもシシラを返せなどと言い出してきた……シシラを何だと思っているんだ! あれで王族だと? ふざけたことを……!」
「ユーム殿下らしいですね……」
「そのユーム王子は元聖女アビスとの結婚を強制されている。ある意味一番重い罰だがな……」
シシラは呆れ果てた。呆れるだけで怒りや憎しみは抱かない。それほどまでにアビスとユームの愚かさを昔から分かっていたからだ。勉強もしないで遊んでばかりいるような者のことがよく分かるのは虚しいことである。
「ガミオ殿下、彼らのことはもういいので……他に大きな動きはあったのでしょうか?」
「ああ、それは通信魔道具で父上にこの件を報告したんだ。勿論、ジョケア国王もな。それで――」
ガミオは罰を受けた者たちの話を切り替えて今後の両国の方針について話し始めた。




