第50話 VS悪魔6(決着)
「シシラ! 不味い! もう、すぐそこまで迫ってきている!」
「……ガミオ殿下、もう一度悪魔の動きを抑えてもらえますか?」
「っ!」
シシラの手には大きな弓矢があった。光属性の高密度の魔力で作られた光の弓矢が。その弓矢を持つシシラの顔は真剣そのもので、一切の恐れが見えなかった。そんな彼女に気圧されたガミオは、自身の恐怖も吹き飛んだかのように悪魔に向かって最後の魔法を放った。
「分かった! 【パラライズシュート】!」
「キッキエエエエエッ!?」
残っている魔力を全部使って、ガミオは麻痺性の魔法を巨大パラドキサにぶつけた。そして、魔力の枯渇によるその場で倒れ込んだ。
「殿下!? なんて無茶をなさるのです!?」
「お、俺に……できる、ことなら……なんだって……」
倒れ込むガミオをギューキが支える。シシラも心配して声をかけようとしたが、ガミオの目がシシラに訴えるのが分かった。
(俺は大丈夫だ)
「……!」
ガミオの気持ちを感じ取ったシシラは光の弓矢を巨大パラドキサに向ける。弓矢は輝きを増して更に大きくなった。
「キッ、キエエエエエッ!?」
巨大パラドキサはシシラの光の弓矢に気づき、叫びながらもがこうとする。だが、ガミオの魔法で麻痺しているためたいして動けない。シシラが矢を当てるには十分だった。
「悪魔よ。この国を多くの人々を苦しめ陥れた報いを受けなさい。【ライトファング】!」
シシラが矢を放った。放たれた矢は強烈な光を発しながらのものすごい速さで巨大パラドキサの胸(?)の中心に刺さった。刺さった先でパラドキサの本体が現れた。
「ギィィィギャアアアアアアアアアアアアアッッ!?!?」
パラドキサ本体は大きな光の矢が刺さったことで苦しみ叫んでいた。更に、その体がどんどん崩れていく。本体を守っていたであろう巨体とともに。
「シ、シシラァァァァァァッァァァァァッァァァァァッァァアアアアア!!」
最後にシシラへの怨嗟の声を叫んで、パラドキサは完全に消滅した。光属性の聖女の力に悪魔が倒された瞬間だった。その光景をジュンメウキ王国の国王と騎士たち、それにバッファロード王国の王子ガミオと護衛たちが目にした。
「悪魔が……消えた……シシラ嬢が?」
「聖女が……聖女シシラ様が倒したんだ!」
「悪魔を滅ぼしたんだ!」
「シシラ様こそ、真の聖女様だ!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」
今度こそ悪魔に勝利した。それを誰もが確信して歓喜の声が上がった。戦った騎士は勿論、見ていた使用人やこの国の国王でさえ興奮を隠せなかった。無理もない。聖女伝説に伝えられた悪魔などという化物を今の時代の聖女が倒してしまったのだから当然の反応だ。
ただ、肝心の聖女がこの場で喜んだのは一瞬だった。
「俺達は勝ったんだな……! シシラ…………シシラ?」
ガミオも悪魔との戦いで勝利したことに興奮していたが、シシラを振り返って気持ちが切り替わった。一番の立役者であるシシラが倒れていたのだから。
「シシラ!? しっかりしろ! シシラ! シシラ!」
勝利の興奮から冷めたガミオはシシラに必死に呼びかける。直ぐ側で様子を見るとシシラは意識を失っていた。どうやら魔力の全てを使い、体力も使い果たしたことが原因のようだ。
「ギューキ! シシラに回復魔法をかけろ! できる者をすぐに!」
「とりあえずこの王宮の医務室に運びましょう。この戦いで医療設備が駄目になっていなければいいのですが……」
「急いで運ぼう! 魔法使いも集めろ! 絶対に、絶対にシシラを死なせない!」
ガミオはシシラを抱えて立ち上がり、魔法を使える者がいないか叫ぶ。更に、体力を疲労したその体でこの王宮の医務室へと急ぐ。ガミオの戦いは終わっていない。




