第49話 VS悪魔5
巨大パラドキサは王宮の庭園まで進んでいた。その間に使用人や兵士が逃げ惑っていたが、目もくれずに進んでいた。その進む先にあるのは貴族街、より多くの人間がいる街だ。そんな場所に現れれば、多くの人々が恐怖し絶望することだろう。その負のエネルギーをパラドキサは欲しているのだろう。シシラから負わされた傷を回復するために。
――というのが、シシラの推測だった。つまり、今がパラドキサを討ち滅ぼす絶好のチャンスだったのだ。
「【ライトライナー】解除」
シシラ達は庭園を見渡せるほど高い場所に移動していた。そこは西側の塔だった。移動速度を高める魔法を解除してシシラは目に魔力を集中させて巨大パラドキサを『視る』。
「――やはり、本体が隠れています。そこに強力な攻撃をすれば巨体も元の害虫達に戻る可能性が高いですね」
「シシラの遠距離攻撃魔法で隠れた悪魔を射抜く。それだけの魔力を練る間は俺達が君を守ればいい。いい作戦だ」
シシラは魔力を練る。残った魔力を最大限に活かすために時間が許される限り魔力を練り込んで魔法威力を上げるためだ。ただ、その間は無防備になるため、守りも必要になる。だからこそガミオ達も一緒に来た。
そして、その判断は本当に正しかった。
「巨大悪魔がこっちに気づいたようですね。進路方向をこちらに変えてきました」
「ちっ、感のいい奴だ。だが、俺達だって守りは不得意ではない。皆、いくぞ!」
シシラのいる塔に迫りくる巨大パラドキサを食い止めるためにガミオ達は魔法で守りを固める。
「「「「【ジャンボウォール】!!」」」」
「【アースバインド】!」
「【パラライズシュート】!」
魔法が使える護衛達によって形成された巨大な壁、そこに土壁による拘束、麻痺性の雷撃、ガミオ達も残った魔力をすべて使って戦う覚悟を決めたのだ。
更に、地上にいる騎士たちが巨大パラドキサの肢を斬って動きを妨害する。両国の騎士たちがだ。
(悪魔を確実に倒すためにも、ここから強烈な一撃を当てる……そのために限界まで魔力を練り込んで、限界まで近づいてきた時に確実に……)
ガミオ達が足止めを続けていても巨大パラドキサは近づいてくる。ゆっくりと。それでもシシラは黙々と魔力を練って強力な魔法を構築する。それができるのは聖女としての使命感もあるが、それ以上に元から集中力が高すぎるからかもしれない。
聖女になる前からシシラは、多くの役割を担ってきたのだから。
(あのアビスの尻拭いや肩代わりをずっと続けてきたんだもの。怪物が迫りくる中で魔力を練って魔法を構築することくらい大した問題じゃないわ!)
皮肉にも、アビスの過去の所業がシシラを悪魔と戦えるほど成長させていたわけだ。




