第46話 VS悪魔2
シシラとガミオ達は悪魔パラドキサの眼の前までやってきた時にはすでに多くのジュンメウキ王国の騎士たちが傷ついていた。中には動かない者もいたから死んでいるかもしれない。そんな光景にシシラは思わず口元を覆った。
「うっ、これは……」
「なんてひどいこと……!」
「ひ・ど・い~? キヒヒヒヒ! シシラ~? お前本気で言ってんの~? コイツラはお前を蔑ろにした国の騎士どもなのに~?」
パラドキサはわざとらしく首を傾げて嗤う。それでいて本気で疑問に思っているようだった。確かにシシラはこの国にいい思い出がない。実家ではアビス優先で使用人扱い、王子ユームもシシラが婚約者であるにもかかわらず蔑ろにしていたのだ。学園でもシシラの味方は一人だけだった。
だが、シシラにとってはどうでもよかったし関係もなかった。
「アビスやユーム王子のことは思うところはあっても悪意を抱くようなことはありません。今は貴方の非道な行いの方が許せないのです……!」
「キヒヒヒヒ……ハッ! これだから聖女ってのはムカつくんだよ! どこまでも善人の聖人君子振りやがって! 選ばれた成人の中でまともなのはアビスくらいしかいねーんだからッ!」
「「えっ!?」」
シシラとガミオは耳を疑った。パラドキサにとっては『聖女アビスこそがまとも』だというのだ。パラドキサはアビスの侍女として側にいたからアビスの我儘自己中ぶりは目にしているはずなのに。
「アビスほど人間らしい人間はいない! 分かりやすいくらい欲望のままに生きていて誰よりも面白みがあるんだ! 聖女が皆アレだったら、どれだけ良かったか! お前らには分からないだろーな!」
「……貴方の言っていることは何一つ理解できません。ですが、貴方をここで倒さなくてはならないことだけは間違いありませんね」
「キヒヒヒヒ! やれるものならやってみろよーッ!」
パラドキサが手の鎌を振り回す。すると魔力の斬撃がシシラ達に向かってきた。
「っ! 【ライトウォール】!」
斬撃が襲い来る直前にシシラが魔法で防いだ。だが、斬撃の衝撃は思いのほか重く、シシラは思わず低く唸った。
「キヒヒヒヒ! まだこんなもんじゃないぞォッ! オラオラオラオラ!」
「ぐっ! くうぅぅ……!」
パラドキサからの斬撃の嵐が襲いかかる中でシシラは結界を保ち続ける。それでいて勝機を探っていた。
(……やはり私が前に出た途端に、私だけに集中攻撃してきた。よほど私の魔法を警戒している。だからこそ、それが大きな隙を作る!)
シシラとガミオはパラドキサと直接対峙する前に作戦を立てていた。それはパラドキサが一番警戒しているであろうシシラが惹きつける役割を担うことで別働隊が隙をついて奇襲することだった。




