第31話 見知らぬ天井
「んんっ……」
目を覚ましたシシラの目に写ったのは知らない天井だった。
「あれから……私は……?」
シシラは意識を失う直前の記憶を思い出す。そして慌ててベッドから飛び起きてこの状況に困惑した。
「え? え? ええ!? 何この状況!? どうして私がベッドに!?」
動揺するシシラは少しでも状況を把握しようと周りを見る。今の自分は上級貴族が使うようなベッドの上。部屋も似たような感じに見える。着ている服も公爵家で着たこともないほど肌触りの良いきれいな寝間着。窓から日が差し込んでいる。
(公爵家で部屋の掃除をしていた時から貴族の部屋の特徴は把握してるけど、ここは公爵家以上に綺麗……)
そう思う理由が公爵令嬢らしい扱いを受けたからではないのは悲しいことだが、そう思う以上にシシラは気になることがあった。
「シュバリア様たちはどこにいるんだろう……?」
記憶を辿れば、シシラは自分が祖国を脱出するために大森林に入り、祠に魔力を十分注ぎ終わったところで意識を失ったと気づく。そして、意識を失う直前で気になる言葉を聞いたことも思い出した。
「殿下……シュバリア様にそう言っていたわよね? それはまさか……」
シシラは以前から思っていた。シュバリアは上級貴族の出自ではないかと。だが、『殿下』と呼ばれていたことを察すると、それ以上の立場……というよりもバッファロード王国の王族ということになる。
(バッファロード王国にシュバリアという名前の王子はいない。偽名? なんのために? ああ、だめ……寝起きだからかしら、考えがまとまらないわ……)
シシラが考えている最中にドアをノックする音が聞こえ始めた。シシラは慌てて衣服の乱れなどがないことを確認してから入って大丈夫ということで返事をした。すると、侍女らしき人たちが入ってきた。
「おはようございます。シシラ様。すぐにお着替えのお手伝いをさせていただきます」
「え? そ、そうですか……ではなくて、ここはどこなんですか? 私はいったい……」
「その後は俺が説明しよう」
「っ!? シュバリア様!」
侍女の後からシュバリアが現れた。ただ、その格好は普段からよく知る学生服の姿でもジュンメウキ王国から脱出するときの姿でもなかった。まるで王族のような格好だったのだ。
「シシラ、君は祠に魔力を注ぎ終わった後で気を失ったんだ。無理に起こすのも悪いという話になったから、そのまま俺達は一緒にバッファロード王国に着いたんだ」
「そ、そうだったのですね。ここはシュバリア様のお屋敷なのですか?」
「ま、まあ、それは……」
何やら気まずそうな顔をするシュバリアだったが、侍女が不思議そうに口を挟む。
「シュバリア様のお屋敷? ここは王宮ではないですか、ガミオ殿下」
「っ、それは、そうだが……」
「っ!?」
侍女の言葉にシシラは目を見開いて驚いた。ここが王宮だということもそうだが、それ以上にシュバリアが『ガミオ殿下』と呼ばれたことだ。
「シュバリア様、貴方は……バッファロード王国の王族なのですか?」
「……全てを話す。まずは起きる支度をしてくれ」
シュバリア――ガミオは覚悟を決めた。自身の素性をはっきりシシラに伝えることを。




