第30話 祠の恩恵
封印の祠とは、遥か先代の聖女に呼ばれて力を貸した天使が大悪霊を封印したとされる祠と言い伝えられている。天使をかたどった像が封印の要であるため、毎年聖女が魔力を注ぎ込んで封印を強化するしきたりになっていた。この年も、ジュンメウキ王国の聖女が祠に魔力を注ぐことになっていたため、聖女であるアビスがその役目を担っているはずだった。
しかし、ジュンメウキ王国の今の聖女はそれを怠っていたようだった。
「祠に込められた魔力は少ないですね……」
今、シシラは祠の中心に立つ天使の像の前に立っていた。天使像の魔力量を測るためだ。その結果は、悪い予想が的中してしまった。その要因は聖女の怠慢だと考えられるため、シュバリアはジュンメウキ王国の方を向いて嫌悪感を顔に出した。
「聖女アビスはそんなことまで怠っていたのか?」
「我が妹ながら恥ずかしい限りです……。あの時は珍しく私が一緒に同行していなかったせいで……」
「君が恥じることではない。これは聖女の問題……更に言えばジュンメウキ王国の問題だ」
天使像に魔力を込めるのは封印の為だけではない。祠の魔力は森全体に影響を及ぼす効果があり、魔物たちもその影響を受けて人間に害を及ぼさない穏やかな性質になっているのだ。
つまり、祠の魔力が魔物から人を守るのだが、逆に言えば祠の魔力が少ないと魔物の危険度は上がるということだ。
「先程の魔物のことを思うとこのままにしておけません。祠に私の魔力を注ぎます。聖女ではないのですが何もしないわけにもいきません」
「いいのか? さっき魔力を使ったばかりじゃないか」
「大丈夫です。頼もしい皆さんが私のそばにいてくれるのでしょう?」
「もちろん君を守るが無理はしないでくれ」
シシラとシュバリアは互いに苦笑した。そして、シシラは己の光属性の魔力を祠の天使像に注ぎ込んだ。すると、祠全体が金色に光り輝きはじめる。
「おお……なんと美しい……」
「森の空気が……なんだか良くなった?」
「なんだかバフをかけられた気分だ……」
祠の魔力が増えていくと森の空気が良くなってきた。それだけでなくシュバリア達も気分がよく感じる。
「……祠に十分な魔力が供給されたようだな。これならもう魔物達も襲いかかってはこないだろう。シシラには感謝しかないが……」
シュバリアはシシラの力に感謝する一方で、彼女の身が心配になってきた。
(シシラの魔力は多い。おそらくは聖女アビス以上だろう。だからこそ祠に十分な魔力を注げている。だが、光属性の魔力は希少だが聖属性に比べると劣る。それを補えるほどの魔力を注ぐとなるとシシラはまた休んで寝ていたほうがいいな……)
「ふぅ……」
「シシラ!?」
天使像に十分な魔力を注ぎ終えたシシラはその場で倒れてしまった。シュバリアが心配していた通りシシラは魔力を使いすぎたことが原因だった。
「魔力の過剰な消費による疲労です。殿下、落ち着いてください」
「それくらい俺でも分かる! だが……」
倒れたシシラの意識は薄れていく。そのまま眠りにつきそうな勢いだが、その直前、シシラは気になることを耳にした。
(殿下? それってシュバリア様のこと?)
※明日から一日二話投稿に変更します。7時と19時です。




