第27話 理不尽な家族
だが、現実はそう甘くはない。やってきた騎士団は大体の事実を知っているのだから。
「アリゲイタ公爵、それではアビス嬢の不正や魔法を使用しての暴挙はどう説明されるのですか?」
「それはシシラが悪いのだろう!」
「そのシシラ嬢はどちらに?」
「あ、あいつはすでに追……」
追放と言いかけて止める公爵。この場で自分の娘を追放したと言えば不味い気がしてならないため、シシラの立場が悪くなるように嘘を吐くことにした。
「シシラは……逃げ出したのだ! 私達の追及を恐れて屋敷の金品を持ち出して屋敷から去ってしまったのだ! こんなことなら追いかけていけばよかった!」
「はぁ……シシラ嬢が逃げたと?」
「そうだ! 学園でそんな事になっていたとは許しがたい! 我が家も責任を持って探し出してくれる!」
訝しむ騎士に対してアリゲイタ公爵は、シシラが逃げたことにして公爵家で探し出すと叫ぶように言い放つ。騎士団は納得はしていない様子だが肝心のシシラがいないので渋々と引き下がっていった。
「シシラめ! よくもアリゲイタ家に泥を塗ったな! 真実がどうであれ、全ての責任を被ってもらうからな!」
シシラとアビスの父イマジニ・アリゲイタは、全ての元凶をシシラと決めて怒りを顕にした。
◇
両親に自室で大人しくするように言われたアビスだが、姉シシラに対する怒りはおさまらない。
「お姉様のせいで、お姉様のせいで……!」
そんなアビスの部屋に入ってきたのは、ボブカットの濃い茶髪に平凡でそばかすのある顔に眼鏡をかけた侍女。彼女はつい最近アビスにつけられた侍女アン・デッドだ。
「アビスお嬢様、お菓子をお持ちしました」
「いらない! アン! それよりも聞いてよ!」
「かしこまりました」
アビスはシシラに対する理不尽な怒りと罵詈雑言を叫ぶように口に出す。それに対してアンは淡々と聞くだけだった。
「はぁ、はぁ……それもこれも、お姉様が悪いのよ……!」
「そうですね。姉君が悪いでしょう」
長く続いたシシラへの愚痴はアビス自身が疲れるまで続いた。通常に人ならうんざりするような理不尽な話だったのだがアンは無表情で聞き続けていた。
「お姉様が捕まった後は、私に恥をかかせたことを後悔させてやるんだから! 擦り切れるまで私のために働いてもらうのよ!」
「アビスお嬢様は姉君をご自分のためにまたそばに置くのですか?」
「当たり前よ! 迷惑をかけた分たっぷり返してもらわないと気が済まないわ! 今度は一切の自由なんて与えないんだから!」
話だけでもアビスに問題があるのに、アビスはシシラに罰を与えてやるという強い意志を持っていた。ただ、その意志はアンの言葉で大きく揺らぐことになる。
「確かに姉君が悪いのでしょうが、彼女が戻ってきた後はアビスお嬢様の思い通りにならない可能性のほうが高いと思いますよ?」
「え? なんでよ!?」
自分の思い通りにならない……というアンの言葉にアビスは耳を疑った。思わず怒りをぶつける対象になりうる直前にアンは決して聞き捨てならないことを口にする。
「今の姉君はアビスお嬢様を凌ぐほど魔法の力が強くなったご様子。どのような経緯でそうなったかは不明ですが、それほどの力を権力の強い方々は放っておかないことでしょう。何しろ多くの貴族の生徒たちと王太子殿下と側近の方々の前でしたのなら」
「そ、それがどうしたっていうのよ!?」
「王家は間違いなく姉君のシシラ様を手元に置きたいと思うでしょう。そうなればアビスお嬢様と離れ離れにするのは当然のことになるかと」
「はぁ!? なんでよ!?」
「お嬢様と姉君の確執は大勢の生徒が証人。勿論王太子殿下も入ります。魔法をぶつけ合うほどの確執となればアビスお嬢様と引き離すべきだと思うはずです。そのうえでアビスお嬢様に負けない高い地位を与える。姉君の力を利用するにはそのほうが都合がいいでしょう」
「そ、そんな!」




