第26話 都合の良い両親
(どうしよう……お父様もお母様も都合のいいことしか知らない。でも、私の口から都合の悪いことを口にしないといけないなんて……嫌だ)
シシラが学園の体育館でしたこともアビスがしたことも言いにくいことだった。ましてやシシラに魔法で負けたなどと口にするなど屈辱すぎる。そこでアビスは演技をすることにした。
「お父様お母様、追放なんて残酷ですわ。私は身内がそのようなことになるなんて耐えられません。きっとどこかで野垂れ死んでしまいますわ」
「なんて優しいのアビス。でも……」
「……その点なら心配無用だ。物好きな留学生が隣国に連れて行ったからな」
「は?」
「あのような出来損ないの世間知らずを庇うような者がいるとは思わなかった。まあ、あの娘も顔立ちだけはいいからな」
「はぁ!?」
留学生、そう聞いてアビスは思い出した。シシラを断罪していたときに一人だけ異を唱えた男のことを。
(そういえば、お姉様とよく一緒にいる留学生がいるって……体育館でも叫んでたあの男? 留学生だから隣国に連れて行ったの? なんてことするのよ……!)
アビスは心の中で憤慨する。姉のシシラに泣いて謝らせなければ気が済まないと思っていただけに、戻って来るどころか隣国に逃げるなど許せなかった。
「きっとその留学生は悪い人なんだわ。お姉様が心配だから連れ戻さないと!」
「「??」」
だからこそ、シシラを連れ戻さなければならないと思い、悲しそうな顔で必死に両親に訴える。いつものようにすぐにお願いを叶えてもらうために。ただ、今回は親が折れるのに時間がかかった。
「はぁ、仕方ないな。そこまで言うなら一応探しておいてやろう」
(やったわ! これで反抗したお姉様に痛いお仕置きができるわ! それから、その口で全部ウソだって言わせるのよ!)
アビスにお願いされて、両親が渋々ながらシシラを探す手筈を始める。
その直後だった。
「旦那様! 王宮の騎士団の方々が参られました!」
「「「っ!!??」」」
王宮から騎士団がやってきて事情聴取するという流れになった。
◇
「アビス! どういうことなんだ!」
「学園であったことは本当なの!?」
(なんでこんなことに……)
いきなりやってきた騎士団を相手に憤慨していたアリゲイタ公爵夫妻だが、学園の体育館で起こったことの詳細を聞いて驚き、アビスにも詳細を求めた。
「本当というか……お姉様が全部悪いのよ……う、嘘ばかりついて……」
「つ、つまりシシラが悪いのだな!?」
「そ、そうよ! きっとあの娘が全部悪くてアビスが迷惑しているのだわ!」
アビスは必死に聞き出そうとする両親には何から説明すればいいか迷い、とりあえず「お姉様が悪い」の一点張りで通した。そして、両親はアビスの言う通り「姉のシシラが悪い」と思い込んで納得しようとした。




