第24話 水晶の光
その騎士たちの中に魔法水晶を持った男がいた。魔法水晶とは、魔法の属性を当てるための魔道具だ。
(……魔法水晶まで持ってきたなんて、しかもあれはこの国で一番高度な……)
一番高度な魔法水晶、そうシシラが思ったときだった。魔法水晶が少し金色の光を灯したのだ。
「「「「「っっ!!??」」」」」
「魔法水晶が光ったぞ!?」
「光の属性の魔法だ!」
「目当ての公爵令嬢は近くに!?」
騎士たちが騒ぎ出した。どうやら魔法水晶に光魔法を見つけ次第反応するように術式を仕組んでいたのだ。
「……まずいな」
「いかがいたします?」
「ギューキ一人ではもう誤魔化せまい。俺が前に出ても無駄だろう。突っ走るしかない」
「その前に私に試させてもらえませんか? 賭けに出てみたいのです!」
「シシラ?」
馬車の中で話しているうちに騎士たちがシシラの馬車たちに近づいてきた。
「そこの馬車止まれ! 中の者たちを出すのだ!」
騎士たちの怒声が聞こえる中、シシラは窓から顔を出して魔法を発動した。
「【ライトインビジブル】!」
追ってくる騎士たちに向けて白い光が放たれる。すると、騎士たちは立ち止まって不思議そうな顔で困惑し始めた。
「俺達、何をしてるんだ?」
「なんで国境門から離れたところに?」
「仕事を続けないとまずいぞ。戻ろう」
さっきまで追ってきた騎士たちが国境門に戻っていく。その姿をシュバリアやギューキが確認して驚いた。
「シシラ、一体何をしたんだ? 何故追ってきていた騎士たちが戻っていく?」
「さっきの魔法は少し前のことを一時的に忘れさせる効果があるのです。魔法水晶の反応のところまで忘れていただきました」
「そ、そんなこともできたのか……」
「ですが、一時的なので後になって思い出すはずです。今のうちに早く大森林を通過しましょう」
「ああ、そうだな。ギューキ!」
「はい。少し飛ばしていきます」
シシラたちの乗っている馬車は少しずつ速度を上げていく。後ろを振り返ると国境門から追ってはまだ来ない。その事実にシュバリアは安心するが、それ以上に関心がシシラに向いていた。
(シシラ……彼女はやはりすごい。それなのにあの公爵家は何故シシラを蔑ろにしたんだ? そんなことをしなければシシラは学園でも……そもそもジュンメウキ王国の聖女に対する価値観に問題があるようだが……)
シシラを通してシュバリアはジュンメウキ王国の価値観に嫌悪感と疑惑を感じていた。聖女伝説のことがあるから聖女にこだわることは分かるが、ジュンメウキ王国の聖女アビスのことをどうもおかしく思えてならないのだ。
(祖国に戻ったら聖女に対する価値観を見直そう。聖女伝説についても調べ直したほうがいい。その際はシシラも一緒に……いや、まずは彼女の心のケアが必要だな。俺の素性、本当の名前も伝えないと……)
シュバリアはショーツカ大森林を抜けた先にある祖国、バッファロード王国に思いを馳せながらシシラとの今後を考えていた。
大森林の中で魔物と戦うことになることも知らずに。




