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婚約者を寝取られた姉が真の聖女だった!? ~祖国の人たちが戻ってきてと言ってももう遅い!~  作者: mimiaizu


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第23話 変装

国境門にいくつかの馬車が向かって走っていく。そのうちの一つに商人の身なりに着替えたシシラとシュバリア達が乗っていた。計画通りに商隊と装ってバッファロード王国に向かうためだ。



「どうやらタイミングが良かったようです。国境門にまで騎士団長の手が届いていない様子ですね」


「思ったよりも難易度はまだ高くはないわけか。確かにチャンスだ」



つまり、シシラを捜索していることが伝わっていない今こそシュバリアの言う通りチャンスなのだ。逆に言えば、今を逃せば国境を超えることは難しくなる。



(騎士団長の手が届いていない? 何だか都合が良い展開だけど、本当に何も起こらないのかしら?)



シュバリア達は運が良いと思っているが、シシラは安心できなかった。


そして、シシラの不安は、国境門を通り過ぎる直前で的中することになった。



「進行止まれ! 人も馬車も止まれ!」



シシラとシュバリアが逃げ切れたんだとホッとした矢先のことだった。後方から騎士の声が響き渡ったのだ。



「門番! 門兵! 急いで全ての馬車を止まらせろ!」



拡声の魔法か魔道具で告げられた怒声にシシラは気づかれたのではと青褪めた。後ろから複数の声と足音が聞こえ始めるとビクリと震える。そんなシシラにシュバリアは小声で囁いた。



「大丈夫。絶対になんとかする」


「シュバリア様……」



シュバリアの言葉にシシラは励まされるが、不安は拭えない。何故なら、おそらく騎士達の声と思われる者たちの中に聞き覚えのある声が混じっていたからだ。



「私は騎士団長ウォルフ・オルフノク! 国王陛下の命を受けて公爵令嬢シシラ・アリゲイタの捜索を受けてここに来た! 国境門の責任者は誰だ!」


「「っ!?」」



騎士団長ウォルフ・オルフノク。シシラもその名と声は確かなものだったとシシラは記憶している。話をしたなどはなかったが王宮に来たときに騎士団長の顔と声を知った程度だ。その男がここに来たのだ。



「本当に……探しに……」


「このタイミングで来るとは……ギューキ」


「お任せください。お二人は静かに」



騎士たちにはギューキが対応することになっている。もしもの時は馬車に乗っているシシラとシュバリアの顔を見せることになっているが、その時の対処はできている。



「この馬車は何だ? これは平民が使うには随分と立派ではないか?」


「そうでしょうか? 私どもの国はバッファロード王国ですが一般的な二頭馬車ですよ?」


「我々には貧相な馬車だが……しかし、何だか違和感が感じられるのだがな」


「凡庸性の高いものですから似たりよったりがあるのでは?」


「まぁ、取ってはどう見ても安物のようだし……」



ギューキは本当に上手く対応してくれているとシシラは思った。怪しむ騎士たちを相手に慌てずに飄々とした態度で通している。魔術師のシュバリアの側近というだけあって堂々としていた。



「……おい。この窓のカーテンを開けて顔を見せろ」


「またですか? 一体何度目になるやら……」



ギューキの合図とともにカーテンが開けられた。そこで見えたのは複数の男女の姿だった。



「何かあったのでしょうか? 私達はバッファロード王国に戻りたいのですが」



カーテンを開けられた時、シュバリアが騎士に向かって声を掛ける。ただし、その声はシシラがいつも耳にしているシュバリアの声ではなかった。そして、いつものシュバリアの顔でもなかった。



(……本当にすごい。顔と声を変える魔法なんて……)



今のシシラとシュバリアは顔と声を変えていた。それはシュバリアの部下たちの施した魔法の細工であり、細かいが高度な魔法だった。このような状況になった時のために事前に施すことで正体を隠したのだ。



「……いないな」


「誰がですか?」


「いなくなった公爵令嬢を探していたんだ。お前たちは何か知らないか?」


「いいえ」



嘘だ。この馬車には騎士たちが探している公爵令嬢シシラ・アリゲイタ本人が乗っているのだ。



「……もういい、通れ」



騎士たちが通り過ぎる際、シシラは息を止めてしまった。それほど緊張していたのだ。



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