第22話 偽りの身分
シシラとシュバリアはバッファロード王国に向かう準備をするために、まずはシュバリアの部下たちと合流することになった。
そして、待機していた部下たちと合流して早速行動に移そうということになったのだ。
「シュバリア様、すでに国に帰る準備は整っています」
「そうか、ありがとうギューキ」
茶髪で褐色の瞳の鋭い目をしたガタイのいい青年がシュバリアと帰る際の手段について詳しい話をしている。この青年はギューキ・タウルス、シュバリアの側近であり従兄弟であるから一番信頼できる部下だという。
「――というわけで、『血眼』の情報によるとジュンメウキ王国側は騎士団長ウォルフ・オルフノクを中心にシシラ嬢の捜索を開始したと思われます」
「やはりか、思ったよりも動きが早い。国境門を難なく通れるか怪しくなってきたな」
「そんな……騎士団長が動いているということは国王陛下が命じて……!?」
「その通りですシシラ嬢。この国の王子はともかく国王陛下は高齢のようですが無能というわけではないようです」
シシラの顔はこわばった。学園や実家から追放されれば自由だと思っていたのだが、そう簡単にはいかないものだと気が重くなる。
「そこで我々は『血眼』の準備の甲斐もあって国と国を行き来する商隊と装って行くという方針になったのです」
「なるほど、それなら怪しまれないな。いざという時は俺の本当の素性を明かせばいい」
「それは逆に怪しまれる可能性があります。シュバリア様の立場を考慮されれば不審に思われるでしょう」
「!」
本当の素性……と聞いてシシラはやっぱりと思った。隣国の留学生のシュバリアは一般貴族の子息というが、シシラは一般貴族以上の気品を感じていた。
(何か事情があって身分を偽ってるなんて想像したけど、まさか本当に……?)
シシラの視線を感じたシュバリアは要らぬ発言をしたと気づき、シシラに気まずそうな顔で笑いかけた。
「あ~……シシラ、実は俺は少しばかり身分を偽って学園に留学してきたんだ」
「やはりそうでしたか」
「君にまで黙っていたことは申し訳なく思っている。ただ、決してやましい目的があったわけではないんだ。友好国であるジュンメウキ王国と付かず離れずの関係にある以上は俺のように留学する形で内部観察する必要があったんだ」
「シュバリア様! それ以上は、」
「構わんさ。シシラになら」
ギューキはシュバリアが秘密を口走るのだと焦るが、シュバリアは笑って大丈夫だと答えた。しかし、シシラは首を横に振ってシュバリアをたしなめる。
「シュバリア様、留学した時から秘密にしていることを打ち明けるのはシュバリア様の故郷バッファロード王国に着いてからでも構いません。長くなる話ならこの国を出た後からでも遅くはないでしょう」
「しかし、シシラ……」
「私は貴方を信じています。どんな秘密だろうと受け入れます」
「シシラ……」
シシラの言葉に嘘はない。シュバリアにどんな秘密があろうとも学園でシシラの心の支えになってくれた時間が無条件で信じるだけの理由なのだから。
「分かった……この国を出たらすぐに話そう。今はこの国を出ることが重要だ。ギューキ」
「分かりました。お二人共こちらへ」
シシラとシュバリアはギューキの手配で用意された馬車まで案内された。




