第13話 勝利して変化
見ていた生徒と教師の反応は、シシラを称賛しアビスに失望というものだった。そして、最も衝撃を受けたのはシシラに近しい男とアビスに近しい男、両者を知る者も同じだった。
「シシラが聖女に勝った! シシラならば防ぐことはできると思っていたが、ここまでとは!」
「シシラの魔法がアビスを上回っていた? こんな圧倒的に? そんな……それじゃあ、成績の入れ替えという話は事実……」
「ば、馬鹿な……聖女アビスの魔法をシシラ・アリゲイタが防いだ!? あの娘の魔法にそこまでの力が!?」
シュバリアにユーム、学園長の衝撃は周囲の生徒や教師よりも大きい。シュバリアはシシラがそう簡単に負けるとは思ってはいなかったが、ここまで圧倒的な差を見せつけるとまでは予想外だった。最悪、自分がという覚悟があったのだが、そんな心配も無用だったようで嬉しい半分寂しい半分な気持ちになった。
(俺としては頼ってほしい気持ちもあったのに……いや、これは素直にシシラを称賛しないと)
ユームはというと、アビスの豹変ぶりに恐怖すら感じたが、そんなアビスの聖女の力を全く寄せ付けないようなシシラの圧倒的な力に目を見開いて驚かされた。てっきりシシラが魔力量が少なくて弱くて役に立たないと思い込んできただけに自分の目を疑ってしまう。
(あれがシシラ? 僕の名ばかりの婚約者……弱くて役立たずで馬鹿な女……それがどうだ? アビスもあれが本性だったというのか?)
そして、学園長も仮にも教師という立場という視点からシシラとアビスの実力について周りとは少し違った驚き方をしていた。
(シシラ・アリゲイタ……あの娘の魔法は光属性、上位互換の聖属性には弱いはず……それなのに聖女アビスに勝てたのは技術力の差だ。あの光の障壁と銀色の槍を見比べれば分かる)
ライトウォールとホーリーランス、壁と槍。壁の方は大きくて分厚くて完璧な『壁』そのものだった。それに対して槍の方はと言うと、数は多くても形は歪で大きさもバラバラ、とても『槍』とは言えない代物と見える。つまり、聖女の作った槍は雑だったのだ。
(後から形成して放たれた魔法も同じ、聖女アビスの魔法はどれも見栄えだけで中身は雑な作りの魔法ばかり……それに比べてシシラ・アリゲイタの魔法は見栄えだけではない。その全てが内包する魔力が練り込まれている。光属性で聖属性に勝てるのはありえなくもない……それに……)
アビスは誰が見ても疲れ切っているようにも見える。魔力を大幅に使用したことによる反動、もしくは単純に魔力切れによる姿だ。それに対してシシラは息切れ一つ無い。映像の魔法に障壁や魔法解除まで使ったというのに。
(魔力量は聖女のほうが圧倒的に多い……そんな話だったはずなのに、これはどういうことだ!? 明らかに姉の魔力が多いようにしか見えないではないか! シシラ・アリゲイタの魔力が急激に増大したというのか!?)
聖女とその姉、いつの間に力の差が逆転していたのかと学園長は呆然とした。しかし、呆然としている間にもシシラは疲れを見せないような顔で周囲を見回す。そんなシシラにシュバリアはそばまで来た。




