第12話 VS聖女
「アビス……僕は君のことを信じて婚約者のシシラとの婚約破棄を決めた。それなのに……」
「お姉様の馬鹿! お姉様は私のためにいればいいの! 【ホーリーランス】!」
「「「っっ!?」」」
アビスの体から銀色の魔力が放出されていくつもの銀色の槍が形成される。聖属性の魔法攻撃だ。ただ、槍にしては形は歪でどれも大きさが違っている。しかし、強力な攻撃魔法であることはかわりないため、周囲の生徒や教師は激しく動揺した。
「アビス! ここで攻撃魔法を!?」
「アビス嬢、気は確かか!?」
「おい、誰か止めさせろ!」
「聖女の魔法だぞ! 止められるのか!?」
学園長の攻撃魔法よりも強力な聖女の魔法。そんなものを止められるものはここにはいないと誰もが思っている。だからこそ、恐怖したり離れていくものばかりだった。聖女の姉を除いては。
「アビス……予想はしていたけど姉であるこの私に攻撃魔法? 聖女ともあろうものが落ち着きのない子ね」
「うるさい! 魔法を撃たれたくなければ早く全部嘘だって謝罪して!」
「今までのアビスが嘘で、今の傍若無人なアビスが事実だって言うなら間に合ってるわ」
「そういうことじゃないのよ! 分からず屋ああああ!」
「アビス! 止めてくれ!」
シシラは魔法の槍を向けられても一切動じることはなかった。そんなシシラの静かな態度が癇に障ったアビスは怒りのままに魔法の槍を全てシシラに向かって放ってしまった。ユームが止めるのも虚しく。
「シシラ! 逃げろ!」
「いいえ、逃げるまでもありません。シュバリア様は下がって! 【ライトウォール】!」
シシラは金色の光の障壁を再び形成して、アビスが形成した歪な形の銀色の槍を防いだ。槍は障壁にぶつけっても破ることもなく消えてしまった。
「な、何でよ!? 私の聖女の魔法を何でお姉様ごときが防げるのよ!?」
「努力の差だと思うけど?」
「何が努力よ! 私には聖女の才能があるのよ! 【ホーリーファイヤー】!」
「【ライトアクア】!」
アビスは両手の掌をシシラに向けて銀色の炎を放った。聖属性の攻撃魔法だ。それに対してシシラは金色に光る水の柱を出して銀色の炎を消した。
「火は消火しないと火の粉が飛び散るからね」
「うるさい! 【ホーリーサイクロン】!」
「【ライトディスペル】!」
銀色に輝く疾風が荒れ狂う。これもアビスによる魔法だが、シシラの魔法解除の魔法により何事もなく終わった。
「風系統の魔法は範囲が広いから気をつけて使いなさいよ」
「そ、そんな……どうしてよ。どうして私の魔法がお姉様なんかに……」
自分の使える攻撃魔法の中で強力な魔法をシシラに向けたのに、その全てが防がれたり消された。その事実をアビスは受け入れられずにブツブツとつぶやきながらうずくまる。そんな姉妹の戦いと結末に周囲の反応は大きかった。
「すごい! 光魔法で聖女の魔法を防ぐなんて! 聖属性の魔法は光属性の上位互換のはずなのに!」
「シシラ嬢ってこんなにすごかったのか! 流石は聖女の姉だ!」
「こんな結果なら映像は事実なんじゃないの? シシラ様のほうが強いみたいだし」
「今までの聖女アビス様が嘘だったってわけか」




