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異変
その夜、私はふと、自分の手元に目を落とした。
箸を持つ指の感覚が、いつもより鋭く研ぎ澄まされていることに気づく。
おでんの熱さ、汁の温度、具の重さ……どれも微細に感じ取れて、自然に手が動いてしまう。
「……あれ、どうしたの?」
母が首をかしげる。
「いや、なんでもない」
言葉にした瞬間、自分でも少し笑ってしまった。
これが普通じゃないことだと知っているから。
この家の空気に馴染みすぎて、つい忘れてしまいそうになるけれど、私は――普通じゃない。
父も、母も、そのことにはまだ気づいていない。
けれど、私の体が無意識に反応してしまうのを、私は隠せない。
箸先がわずかに早く動くのを見て、父が一瞬眉をひそめたような気がした。
でもすぐに、いつもの穏やかな表情に戻る。
この家庭は、表面上は完璧に普通。
でも、私は知っている――ここには、ほんの少しだけ戦場の匂いが残っていることを。




