おでんが冷める前に
私の両親は、最強のバディだったらしい。
でも、それは私が生まれるまでのことだ。私が生まれてから、両親はただの人になった。
その事実を、私は誇りに思っていいのか、それとも忘れるべきなのか、まだ決められずにいる。
「今日のご飯、美味しい?昨日から下準備したのよ」
温かいおでんを食べている私に、母が楽しそうに聞く。
母の髪は茶色みがかかっていて、少しふわふわしている。とても美人で、並んで買い物に行くと、いつも姉妹に間違われた。
私が姉の方で。
母は年の割に幼い顔つきをしているが、私は逆に大人びた顔つきをしている。
「うん、とても美味しい」
「良かった」
母はふんわりとした笑顔を見せる。湯気の向こうで、その表情は少しだけ滲んでいたけれど。かつて殺し屋だったことなど一切感じさせない―――幸せな家庭の笑みだった。
そのとき、玄関の鍵が回る音がした。
「ただいまー」
間延びした声と一緒に、父が帰ってくる。
くたびれたスーツに、緩んだネクタイ。手にはスーパーの袋。
どう見ても、普通のサラリーマンだ。
「おかえりなさい。今日は早かったのね」
「定時で追い出された。若いのに気を遣われるの、結構つらいぞ」
ははは、と父は笑いながら席についた。
母がおでんをよそい、父の前に置く。そのやり取りは、ごくありふれた夫婦のものだった。
――でも。
父が箸を取るその一瞬。
箸先が一度も迷わず、最短距離で具を掴む。その動きは、料理ではなく「処理」に近かった。
思わず息を飲む。これが、かつて母と背中を預け合った男の所作だとは、表情だけではまったくわからない。
「学校はどうだった?」
「普通」
「普通が一番だな」
父は湯気の立つおでんを口に運ぶ。
母はその様子を、穏やかに微笑みながら見つめている。
あの最強バディの二人が、今、この温かい食卓を囲んでいる―――信じられないくらい、普通の家族の顔をして。
でも、私は知っている。
この両親は、かつて何度も死線をくぐり抜け、互いの背中を預け合った裏社会の人間だったことを。
そして、今も無意識に、その片鱗を指先や背中に残していることを。
この作品では、一部AIを使用しております
御了承ください
あらすじとか文章とかは自分で考えました!




