第3話 明智光秀、まさかの相談
「蘭丸殿、少し話がある」
ある日の昼下がり。
信長の使いで岐阜城の廊下を歩いていた俺は、背後から静かな声に呼び止められた。
振り返ると──やはり、明智光秀。
穏やかな表情の裏に、どこか張り詰めたものが見える。
「光秀殿……いかがなされましたか?」
「いや、少々胸の内を聞いてもらいたくてな。
そなた、不思議な男だ。信長様に仕えたばかりなのに、まるで長年の家臣のように落ち着いておられる」
(やば、フラグ立ってる。裏切りフラグとかじゃないよな?)
でも今の俺は、“本能寺の変”を防ぐために動く立場だ。
光秀の心を知るには、この機会を逃せない。
「どうぞ。……この蘭丸、微力ながらお力になれれば」
光秀は少し迷った末、ため息をついた。
「……最近の信長様のご様子、見ておられるな?」
「はい。まるで風のごとく勢いがございますね」
「勢い、か。だが、あれは風ではなく炎だ。
燃え広がるものを見境なく呑み込み、やがて己をも焼き尽くす炎よ」
光秀の瞳が一瞬、深い影を落とす。
俺の脳裏に、あの“裏ステータス”の文字がよぎった。
【裏目標:織田信長を討つ】
(……これか。こうして心の奥に少しずつ溜まっていくんだな)
だが今なら、まだ間に合う。
俺は心の中で「スキル鑑定」を再起動した。
【対象:明智光秀】
忠誠:高
感情:不安定(悩み/葛藤)
裏目標:織田信長を討つ(確率:6%)
(6%!? 下がってる……?)
昨日までは“固定”表示だったのに、今は確率表記になってる。
もしかして──光秀の気持ちが変わり始めてる?
「光秀殿。信長様は……確かに厳しい御方ですが、その厳しさの裏には“理”がございます。
人の上に立つ者として、民を導くための……」
「理、か。おぬし、若いのによく見ておるな」
光秀の口元がわずかに緩む。
その瞬間、ウィンドウに新たな表示が出た。
【光秀の好感度が 中立 → 好印象 に変化しました】
【裏目標:討つ(確率:4%)】
(下がった! やっぱりこれ、会話で変わるんだ!)
「……そうか。蘭丸殿の言葉、不思議と胸に響くな。
わしも、信長様の志を信じたいとは思っておる」
その声音は穏やかだった。
俺は心の底でガッツポーズを取る。
──だが次の瞬間、彼はふと遠くを見た。
「……ただ、わしの心の奥にある“違和感”が、どうしても消えぬ。
あの方の“先”に、本当に平和はあるのかと」
その言葉と同時に、再びウィンドウが点滅する。
【裏目標:織田信長を討つ(確率:8%)】
「っ……戻った!?」
俺は思わず顔を引きつらせた。
会話一つで上下する“裏切り確率”とか、怖すぎるだろ……!
(光秀って、まじで繊細すぎるんだな……)
その後、光秀は静かに立ち上がり、去り際に一言残した。
「蘭丸殿。おぬし、奇妙な者だな。まるでわしの心を見透かすような……」
「そ、そんなことは……!」
「……また話そう。信長様の未来について」
背中を見送る俺の心臓は、バクバクだった。
でも、今のでわかった。
“歴史はまだ変えられる”。
このスキルがある限り、俺は“人の心”を操作できる。
──信長を守り、光秀を変える。
それが、俺の「まったり天下統一プラン」第一歩だ。
……とはいえ、精神的にまったりできる日は、まだまだ遠そうだ。
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✦次回予告✦
第4話「信長、未来を変える一言」
──光秀の心を揺らす“信長の叱責”。蘭丸、初の決断の時。
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