第2話 信長に仕えることになったけど、早速バグってる
信長に「気に入った」と言われてから、もう三日が経った。
まさか、初対面で緑茶を出しただけで信長の側近ルートに入るとは──自分でも思ってなかった。
「蘭丸、茶をもう一服」
「は、はいっ!」
信長公、まさかの連日リピート。
お茶が完全に信長の“日課”になっている。
俺の“ネットショップ”スキルが、こんな形で役立つとは思わなかった。
(いやでも高級宇治茶、残り少ねぇ……戦国で1800円の出費は重いぞ……)
とはいえ、今さらやめるわけにもいかない。
信長の目の前でお湯を注ぎ、香りが立ち上るのを見守る。
ほんのり微笑むその横顔を見て、俺は思った。
──本能寺の変まで、あと数年。
この人が死ねば、戦国は混乱の極みに落ちる。
でも、もし俺が“知識”と“スキル”を駆使すれば……。
「天下を統一して、のんびり余生を過ごす。それが俺の第二の人生だ」
「何をぶつぶつ申しておる、蘭丸」
「い、いえ! 茶の淹れ加減を少々……!」
信長の目が鋭く光るたびに心臓が跳ねる。
この人、ほんとカリスマが桁違いだ。
ステータスを見た時の数値、今でも覚えてる。
【織田信長】
レベル:???(上限不明)
カリスマ:SS
政治:A+
戦闘:S
気性:荒い(要注意)
(要注意って……スキルさん、やけに親切だな)
と、そこに別の足音が近づいてくる。
浅葱色の羽織に、鋭い眼光の男。
織田家臣団の中でも群を抜いて冷静沈着な──。
(お、来た……! たぶんあれが……)
「光秀殿、参られました」
「うむ、入れ」
現れたのは、まさに“教科書の肖像画そのまんま”の男。
明智光秀。後に信長を討つ裏切り者。
いや、“本能寺の変の首謀者”だ。
(こいつをどうにかしなきゃ、俺の“まったりライフ”が崩壊する)
試しに【スキル鑑定】を起動する。
本来なら、名前と基本ステータスだけのはずだった。
【スキル鑑定】起動中……
対象:明智光秀
年齢:三十五歳
忠誠:高
知略:S
感情:不安定(抑圧中)
裏パラメータ:■■■■■■
「……ん? 裏パラメータ?」
そこに表示された黒い文字列をタップした瞬間、画面がバグった。
ウィンドウがちらつき、ノイズが走る。
そして一瞬、信じられない文が浮かんだ。
【裏目標:織田信長を討つ】
「……っ!」
思わず茶碗を落としかけた。
こぼれた茶が畳を濡らす。信長がこちらを見る。
「どうした、蘭丸?」
「す、すみません! 手がすべりまして!」
(マジかよ……まだ裏切ってもいないのに、もう“討つ”って出てる!?)
つまり、未来の“本能寺の変”はもう彼の心の奥底で芽吹いてる。
しかも俺のスキルは、まだ誰も知らない“裏の感情”まで読み取ってしまうらしい。
……バグというか、強すぎじゃね?
「光秀殿、どうされた?」
「いえ、少々……胸騒ぎが致しまして」
(やべぇ……今の、気づかれたか?)
信長と光秀、二人の間に静かな空気が流れる。
その間で俺だけが汗だく。
心の中では警報が鳴りっぱなしだ。
──このままだと、本能寺の変は必ず起きる。
でも、俺にはそれを止める“情報”がある。
だったら、やるしかない。
「(信長を守って、天下を取らせる……そのためには、光秀を変えなきゃならねぇ)」
俺の“まったりセカンドライフ”計画は、早くも波乱の幕開けを迎えていた。
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✦次回予告✦
第3話「明智光秀、まさかの相談」
──光秀が信長への不満を語り始めた!? 転生蘭丸、運命の分岐点に立つ!




