虎にはなりたくないので
私は元来、非常に臆病な人間です。しかし、九州人の常として、プライドはとても高い方です。
ですから、私が小学生の頃から小説とも呼べない何かを書き続けてきたことを知っている古い友人からは、常々言われてきました。「気をつけないと李徴みたいに虎になっちゃうよ?」
私は長いこと、何処かに投稿することもなく、書きたいものだけ書いてきました。文芸部で同じ部に所属していた子から、自作を勝手に下品な作品に改変されたことがあってから、心許せる相手にしか、本気で書いた作品を見せることもなくなりました。
それから二十年近く経ち、好きなライトノベル作品やアニメ作品から、この「小説家になろう」という投稿サイトの存在を知りました。
そして、このサイトに投稿されている作品を幾つも拝見して、思ったのです。文章を書くのが上手な作者様も、そうではない作者様もいらっしゃる。でも、どの作品にも勢いがあって――とても、とても楽しそう!
こういう世界があったのだ、と感動しました。
この感動を作者様方にお伝えしたくて、ユーザー登録し、九州人らしく暑苦しい感想と応援の意を書きました。全身全霊、真剣勝負にも似た気持ちで。
迷惑に思われる方もいらしたかもしれません。しかし、「書庫裏様の目の付け所がユニークなので採用しても良いですか?」と採用してくださる方もいらっしゃいましたし、私の長過ぎる感想を迷惑がらずに喜んでくださる方もいらっしゃいました。
ここには、私のような者の発想や発言を温かく受け入れてくださる方々がいらっしゃって、運営には勿論、参加していらっしゃる方々にも、誰かの作品を下品に貶めることは許さない意識をお持ちの方々が多い。
そう感じられるようになって、ある作者様から背中を押して頂いたこともあって、作者側になりました。
そして、その方々を通じて他の作者様方とも交流をするようになりましたし、憧れの個人企画にも参加させて頂くようにもなりました。
これは馴れ合いでしょうか?
いいえ、励ましと切磋琢磨と挑戦の場だと思います。私の誤りや足りない点は遠慮なく指摘されますし、私から忠告することもあります。個人企画では限られたテーマや日頃書かないジャンルが指定されますが、参加を表明してしまうと後には引けません。
仲間内でのポイントのやり取りですか?
その辺りはシビアですね。「この作品は素晴らしい」「この作者様の書く作品が好き」という作者様方とのみ交流させて頂いていますから、自然と星を付けることが多いだけで。
知り合った作者様方に「私の作品も是非読んで見てくださいね」と宣伝している?
ジャンルとしてはホラーやダークファンタジーに分類されるような作品ばかり、好きなように書いておりますから、積極的にはお勧めしにくいです。悲鳴混じりのご感想を頂いて慌てて前書きで注意喚起したことも一度ならずありますし。
確かに作者同士での交流を悪用しようとする人々が存在することは否めません。いつかはAIで作成した通り一遍の感想を他の作者様方に送ることで繋がりを作り、pv数とptを稼ごうなどと目論んだのではないかと思われる人もいましたね。彼らはどれだけ多くの作者様方を困惑させ、不快にしたことでしょう。そもそも小説家になろうと思いながら、他者の書いた文章の内容をきちんと読むことも出来ず、自分の思いを自分の言葉で書くことも出来ない己の滑稽さにも気付かずに。
とはいえ、一部の怪しい輩に不快な思いをさせられたからと言って、孤高を貫くことを選んで、せっかくの学びと挑戦の機会を自分から放棄することもない、というのが私の考えです。
中島敦の『山月記』の李徴は、自分が努めて詩友と交わって切磋琢磨に励むことを怠り、内なる虎(自尊心と羞恥心)を肥え太らせて、外形まで虎となったことを、取り返しがつかなくなってから後悔することになりました。
私は虎にはなりたくないのです。




