自分の犯した罪の重さ
時は凛が誘拐されてから8日が経った日の昼過ぎ。いつもの様にアリスが凛の食事を運び、2人はあれから毎日お互いの事を話す様になっていた。今まで起きた事、これからやりたい事など色々な話しをした。
『さて、そろそろ時間だ私は戻るとしよう。また夕方来る。』
『分かりました。お待ちしております。』
凛は笑顔でアリスを見送った。
家に戻る途中アリスは
(・・・・・・・・何であんな顔が出来る。いつ殺されてもおかしくないんだぞ。あの子は怖くないのか、不安ではないのか。死と隣り合わせの状態なのに何で笑っていられる。クソッ!)
凛の笑顔を見て自分のした事がいかに愚かな事だと思い知るアリス。そんな事を考えながら自分の家へと戻る。
アリス達は今、王都から少し離れた村のさらに奥にある今では人1人住んでいない集落にいる。ここで今、魔王軍の使者を待っている状態だ。
魔王軍は、村を襲いそこの人間を脅して駒につかい、魔王復活に向けて着々と準備をしている。魔王復活にあたって最も重要な【聖女の血】を今回手に入れる事に成功した。
今回の功績で、ここにいる人間は全て解放されると約束されているのだが、アリスが自宅へと戻る時、今回の盗賊のリーダー宅から衝撃の事実を聞く事となる。
『フッハッハッハッ。これで我々は解放される。まったく馬鹿な奴らだ。解放されるのは今ここに居る4人だけという事を知らずにまんまと騙されて聖女を誘拐してきてくれたのだからなあ!笑わずにはいられん。
それにあのメイド服を来たアリスとか言ったか?あいつも何処まで馬鹿なんだ。あいつの妹はもうとっくに売られて何処に居るのかもわからんと言うのに。哀れなやつよ。
まあ、魔王軍が来たらメイド服の女を含めあの聖女も用無しだから始末するしなっ。どんな顔で命乞いするのか楽しみだ。はっはっはっはっはっ。』
アリスはもうレイナ(アリスの妹)が近くには居ないと言う事実を知る。
『そ、そんな。レイナが売られただと?そんなまさか。私は騙されていたのか。この仕事が終わっても妹に会えないと知らずに。なんて事だなんて事をしてしまったのだ私は。取り返しのつかない事をしてしまった。』
『・・・・・・・・・・・・。』
アリスは動揺していた気持ちを抑えて冷静に考える。この後どう動くべきか。
『どうする。私だけでも今から逃げるか・・・・・・否。せめて凛様だけでも逃して直人様に会わせなければ。それが私に出来る最大の償い。その後は聖女誘拐で殺されても構わない。そうと決まれば直ちに動かなければ!魔王軍が来る前に。』
そしてアリスは直ぐ様家に戻り、いつも身につけている武器を取り凛の所に向かう。
凛の部屋の前に居る見張り2人所へ来ると見張りを気絶させる。
その後、凛の部屋へと入るアリス。すると凛が
『あら?アリスさんどうしたんですか?外で物音が聞こえましたが。』
『凛様!今すぐ逃げますよ!案内します。ついて来てください。』
『えっ!?え!?ど、どーいうことですか?』
『状況が変わりました。今すぐここから離れます。ここに残って居るといずれ殺されてしまいます。細かい説明は走りながら話します。さっ、行きますよ。』
アリスは凛の手を取り外へと向けて走り出した。その間に、これから魔王軍の刺客が来る事、レイナともう会えない事、凛を王都まで無事に送り届けることなどを凛に説明した。
『そ、そんな・・・・。それじゃアリスさんはもう妹さんとは・・・・・・・。』
『いいんです。売られてしまったって事でまだ死んだって事ではないので。いずれ会える機会があれば・・・・。
でも、私は王都に行ったら聖女誘拐の罪で死刑は確定です。どちらにせよここにいても殺されてしまいますし、なら凛様を直人様に会わせると言う結論に辿り着きました。
これは私に対する罰なのです。自分の私欲の為にもたらした・・・・。さぁ、そろそろ出口ですよ!舌を噛まない様にしてください。』
そうして2人は出口に着いたのだがすでに出口では盗賊達が2人を待ち構えていた。
『おや!?お2人とも何処かお出掛けですか?いけませんね、勝手な事をしてもらっては。あなた方お2人はもう用済みなのでここで死んで頂くのだから。さあ、皆の者やってしまいなさい。』