呪いの真実
ガロードの葬儀が終わった王城の一室で直人達は、今後の事について話し合っていた。そこには、王都アグリアスで共に戦ったメンバー達が集まっている。
「今日はみんなに話しがある。これからの事なんだが・・・」
【バチッ】【バチッ】【バチッ】【バチッ】【バチッ】
子供姿のシーレの周りに紫色の電流が流れる。そしてシーレは堕天使化する。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「シーちゃん!?」
突如堕天使化したシーレに皆驚いている。初めて堕天使化を見た、エリー、ローグ、シェリー、フレデリカは言葉を失う。正門でアザゼルが引き上げた後すぐにシーレは元の姿に戻ってしまった為、四人は堕天使化したシーレを見ていない。そんな姿を見たエリーは、
「シーちゃん、その姿は・・・・・・。」
「あぁ、今の姿は私がアザゼルによって堕天使にされる前の姿だ。」
「えっ!?シーちゃん喋れるの!?」
「この姿の時は可能だ。ただ、子供の姿になってる時はうまくしゃべれない。」
「そうだったのね。」
「で、直人。これからどうする!?私は、ガロードを殺した堕天使どもを殺しに向かう。あいつらだけは絶対に許さない!この手で皆殺しだ。」
「あぁ、その事なんだが俺に一つ提案がある。」
「提案!?」
直人の発言にエリーが首をかしげる!?その話しをみな黙って聞く。
「俺と凛、そしてラファエルは、これから先も凛の呪いを解くために旅に出る。凛の呪いを解くことが出来たら、その後は堕天使を倒す。」
直人がこれから先も変わらず凛の呪いを解く旅を優先すると言った後、シーレがとんでもないことを言い出す。それは、呪いを解くための方法だ。
「直人。その事なんだが、私は凛の呪いを解く方法を知っている。」
「「「えっ!?」」」
ここに居る誰もが、シーレの発言に驚く。今まで、どの文献にも載っていなかったのにシーレは呪いを解く方法を知っていたのだ。
「どうすれば解くことが出来る。」
【ゴクッ】
皆、唾を飲みシーレの言葉を真剣に聞く。
「それは、アザゼルを倒せば解けるはずだ。凛の中にはアザゼルの魔力を感じる。そいつが呪いの原因だ。アザゼルを殺せば凛の呪いを解くことが出来る。」
「な、なんだと!?本当か!?」
「あぁ、間違いないだろ。私にも、アザゼルの魔力が少し混じっており、それを父さんとガロードが取り除いてくれて、堕天使化出来るようになったのだからな。」
「シーレの堕天使は治らないのか?」
「それは無理だな。私はあいつに体をいじられ時からだいぶ時がたってしまったからな。だが、凛にはアザゼルの魔力だけが感じられる。それを取り除くことが出来れば呪いは解かれ、昔のように目が見えるようになるだろう。」
「そうか。なら、俺達はシーレと共に行動しよう。同じ目的を持った仲間は多い方がいい。」
「すまない直人。感謝する。」
「おいおいシーレ、何を謝ることがあるんだ!?むしろ謝るの俺の方だ。もう少し早く到着していればガロードは助けられた。なのに・・・・・」
「もう、その話しはいい。今は、これからの事を考えないと。」
「シーちゃん・・・・・・・。」
ガロードが殺され、悔しくて悲しくてたまらないはずのシーレは誰も責めることなくただ今は前を向いて歩く事を考えていた。
「そこでだ、アリスとレイナ!お前たちは、王都アグリアスに残れ。そして、ここで二人で暮らすんだ。」
「なっ!」
直人は、アリスとレイナを見て言った。
「アリス、お前は妹のレイナを探すことが目的だっただろ?それがついに叶ったんだ。なら、これ以上俺達に付き合うことは無い。これからは姉妹で今まで出来なかった姉妹での時間を大切にしろ」
「何でだ!?私はこれから先も直人と共に行く!もちろん、レイナも一緒にだ!」
「ダメだ!お前は、せっかく会えた妹までも危険にさらすのか?俺はそんな事をさせるためにお前を助けたわけではない。これは、俺達兄妹の考えだ。」
「そうですよ、アリスさん。私達は、幾度となくあなたに助けられました。ですので、これからはレイナさんと共に生きてください。」
「そ、そんな・・・・・」
「ちょっと、待ってください!」
ここで、今まで沈黙を続けてきたレイナが口を開く。
「私も納得できません!私も直人さん達と一緒に堕天使を倒すために行きます。ガロードが殺され、これから先のうのうと暮らしているなんて出来ません。」
「ダメだ!ガロードが繋いでくれたその命大切にしろ。もし、ガロードが生きていたって俺と同じことを言うはずだ。二人はここで静かに暮らすべきなんだ。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
直人の言葉に何も言えなくなるアリスとレイナ。唇をギュっと噛みしめ耐えるしかなかった。
「そして、他のみんなの事なんだが・・・・・・・」
直人のその問いにまずはフレデリカが口を開いた。
「私は、直人さん達についていきます。王都イザークが占領され、行くところもないしデモンズウォーリアズのみんなの仇もうちたい。」
「そうか。」
続いて、シェリーが口を開く。
「私はここに残るよ。エドワードの爺さんだけじゃ、エリー女王の護衛も心配だからね。それに、またいつあいつらが襲ってくるかも分からないし。」
「シェリーめ、儂を年寄り扱いしおって。」
「老いぼれは黙ってな!現に、この前の戦いで王都アグリアスの戦力はだいぶ減っただろ?Sランクのあたしが居ればその分埋められるさ!」
「確かにそうじゃが。本当にいいのか?」
「くどい爺さんだね!あたしがいいって言ったらいいんだよ」
続いてローグも
「あっしもあっしの部下達もここに残ります。凛姉さん達について行っても足手まといになるだけだし。ここに残ってエリー女王の為に王都アグリアスを守るでやんす。」
「二人ともありがとう。」
エリーは、シェリーとローグの申し出に感謝する。
「よし、じゃこの話しはこれでお終いだ。」
こうして、話し合いは終わりそれから一か月が過ぎた。直人達はこの一か月間街の復興に手を貸していた。そして、ある日の事、
「レイナ。この後少しいいか?」
堕天使化していたシーレがレイナを呼び止める。
「ん!?この後!?いいよ、暇だしね。それにしてもそんな真剣な顔をしてどうしたの!?」
「レイナに渡しておきたいものがある。ついて来てくれ。」
レイナは黙ってシーレについていく。そこは、直人と凛とシーレが寝泊まりしている部屋だった。そして、シーレは置いてあったガロードに買ってもらったカバンからあるものを出す。
「こ、これって・・・・・・」
「あぁ、ガロードがいつも身に着けていたブレスレットだ。これをお前に渡しておきたくてな。私達は来週ここを離れるつもりだ。だからその前にと思って。」
「!!!!!!」
「これはレイナが持っておくべきだ。きっとガロードも喜ぶだろう。」
「ガロード・・・・・・・」
レイナはシーレからブレスレットを受け取り、胸の前で強くブレスレットを抱きしめる。
「ちなみに私はこれだ!どうだ!?いいだろ!?」
シーレは、ネックレスレイナに見せる。ネックレスにはガロードがはめていた指輪が一つ。
「ああああああああああああああ!ずるい!あたしそっちがいい!交換してよ!」
「な、何を言う!これはダメだ!絶対に渡さんぞ!ど、どうせレイナの事だ、左手の薬指にでもはめるのであろう!」
「そんなの当り前じゃない!私の夫はガロードだもの!薬指にはめて何が悪いのよ!だから早くそれをこっちに渡しなさい!」
「な、何を言っているんだお前は!ガロードに後にも先にも妻などいない!」
「うるさいわね!あたしがガロードのお嫁さんなの!これは決定事項!誰にも覆させない!だから早く!ほら!ほらっ!その指輪をこっちに」
シーレは、途端に子供の姿に戻り歯を剥き出しにして怒り始める。
「シーレちゃん、そんなことしても無駄よ!もう、怖くないんだから!」
じわりじわりとシーレとの距離を詰めるレイナ。そんなレイナみたシーレは子供の姿を活かして、その部屋から出て全力疾走で逃げる。
「まーーーーてっ!逃げるなっ!!!!!!」
そんな事をやっていたところを直人と凛は目撃する。
「あの二人何やってんだ?」
「さあ!?何か楽しそうに追いかけっこしてるね。」
「平和だな・・・・・。」
「そうだね。」
こうして、時は過ぎ直人達が旅立つ日を迎える。
第5章 分断されたSky Saint編へ続く




