最愛の人との最後の別れ。
王都アグリアスで戦いから一週間がすぎた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
直人は今、王城の一室に居る。そこには、直人、凛、アリス、エリー、エドワード、レイナ、シェリー、フレデリカ、ラファエル、ローグの十人が居た。ただ、その部屋にシーレの姿はない。
「シーちゃん大丈夫かな・・・・・・・。」
「あぁ。あれから一週間部屋から出てこないし、ご飯も食べてないし。」
「無理もないわよ。一番優しくしてくれた人が居なくなり、それが弟だったなんて。それに記憶が戻ったと思えばすぐにお別れだもの。普通の精神じゃとても耐えられないよ。私じゃ絶対に耐えられない。」
「う・・・う・・・・うう・・・ガロード・・・・。なんでよ・・・・・何で私の前から居なくなっちゃうのよ・・・こんな事になるなら最初から私に優しくしないでよ。辛すぎて耐えられないよ。」
「レイナ・・・・・・。」
「私がもっと聖女として力があれば。私に、もっと・・もっと力があれば・・・・。」
「私、ちょっとシーレちゃんの所行ってくる。ガロードまでとはいかないけど、少しは懐いてくれてたから。」
「そうね、レイナさんにお願いするのが一番だと思います。」
「そうでございますな。私もそれがいいと思います。いつまでもこのままというわけには。それに明日は、今回の戦いで命を落とした者たちの葬儀が行われますし。」
「レイナお願いね。今のシーレさんをどうにか出来るのはあなたしかいないわ。」
「うん、じゃ行ってくるね。」
直人達は静かにレイナを見送った。見送った後も沈黙は続いた。
【トン、トンッ】
「入るわよ、シーレちゃん。」
そこには、子供の姿に戻ったシーレがベットの上で壁の方を向き座るシーレの姿があった。横には、ぬいぐるみ化したケルベロスがいて、シーレの頭の上でぬいぐるみ化したフェニックスが飛んでいた。シーレは、ボロボロになったぬいぐるみ化したガルを抱いてガルを見つめていた。
レイナは、そっとシーレに近づき後ろから優しく抱きしめ泣きながらシーレに謝る。
「ごめんね・・・私にもっと力があれば姉さんがガロードの助けにだって行けたのに。私が弱いばかりに。」
すると、シーレがレイナの方に向き泣きながらレイナに抱き着く。
「んー。んー。んー。んー。」
「ごめんね、シーレちゃん。ガロードを守れなくて。」
するとシーレは、レイナの胸に抱き着いたまま首を左右に振る。ケルベロスもフェニックスもレイナに近寄る。
「ねぇシーレちゃん、明日はガロードとの最後のお別れなの。一緒に来てくれるよね?」
「んー。んー。んー。んー。んー。」
だが、シーレは行きたくないのか首を左右に振り行くのを拒否する。そんなシーレをみたレイナは、頭を撫でながら
「シーレちゃん、それじゃガロードが悲しむよ。最後のお別れの時に大好きなシーレちゃんが居ないと。それでもいいの?ガロードもきっと最後にシーレちゃんに会いたいと思ってるはずだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ね、シーレちゃん。一緒に行こう!?最後ぐらい笑って送り出してあげようよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
すると、シーレは小さくうなずく。
「んー。」
「よし、よし。シーレちゃんはいい子だね。」
こうして、レイナはシーレを説得して葬儀の日を迎える。各自着替えを終え、正門から城外へとむかう。外では、多くの人が集まっていた。急ピッチで舞台がつくられその壇上には女王のエリーが立ちあいさつを始める
「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。私達は、今回の戦いで大きな犠牲を伴いました。私達は彼ら、彼女等がいなければ今こうして晴れた空の下で暮らしていることが出来なかったでしょう。
そして、今回の戦でもっとも要となった正門での戦いで勇敢にも散っていった一人の英雄を紹介します。
彼は、この街の出身ではありませんでした。ただ私の友人ってだけで遠くからわざわざ駆けつけてくれました。そして、堕天使達の侵攻をいち早く教えてくれたのも彼でした。
エドワードの話しによると、鬼神の二つ名をもつエドワードも手も足も出ないという状況の中、彼は諦めず王都アグリアスの為に命を懸けてくれました。そんな彼は、自らの命と引き換えに王都アグリアスを堕天使達に奪われることなく勝利へと導いてくれました。
私達、いえ私は勇敢な彼の事をこの先ずっと忘れることは無いでしょう。彼は、王都アグリアスの英雄であり私個人の英雄でもあります。女王の権限で彼を、王都アグリアスの英雄の称号を与えます。以上が私のあいさつになります。」
外に集まった人たち全員が大きな拍手をする。そして、代表して、直人達がガロードの棺に花を入れていく。レイナに手を繋がれシーレの為に用意された踏み台の上に乗るシーレ。その手にはぬいぐるみ化したガル抱えられており、ガロードの顔の横に置く。
「いいの?シーレちゃん。」
ガロードの顔を見たシーレは泣くのを堪え小さく頷く。
「そうね、ガルもガロードの事大好きだったもんね。最後もガロードがやられた時も、真っ先に怒って飛び出していったもんね。ガロードとガルはお互い信頼しあっていたものね。ガロードもガルもこれなら喜ぶね」
再び小さく頷くシーレ。そして、全員花を置くといよいよガロードとガルの入った棺は火葬される。直人達は、一つのたいまつをみんなで持ち、棺に火をつける。シーレは、これだけはやりたくなかったらしく、レイナに抱っこされ胸に顔を埋めている。そこには少しすすり泣くシーレが居た。
こうして、無事ガロードの葬儀は終わり次の日を迎える。




