聖女の誘拐計画その2
『何事ですか!?』
争いの音を聞き、エリーとエドワードそれから王城の兵士何人かが、部屋に入ってきた。
『やられた。凛が何者かに攫わらた。クソっ』
直人は壁を叩いて悔しがった。するとエドワードが天井がくり抜かれている事に気がつき、
『天井からの奇襲!?でもそんな事が出来るのは王城内にいるものだけ。入り口も厳重に警備されているし、元々中に居る者にしか出来ない・・・・・・・んっ!?アリスはどうした?』
いつもならエリーの側には必ずアリスが居る。だがこの騒ぎにもかかわらずアリスの姿が見えない。どう考えてもおかしい。皆がそう思っていた。
『全兵士に伝達!何としてでもアリスを探し出せ!あいつはきっと何か知っているはずだ!いいな!』
『はっ!』
『お気を確かに直人殿。』
『ああ、わかっている。わかっているけど!』
明らかに動揺している直人。するとエリーが
『申し訳ございません。私達の不手際でこの様な事が起きてしまい。何とお詫びを申し上げたら。』
『王女様達は悪くない。俺が油断したからこうなった。クソッ・・・・・・・凛。』
『王都全体に特別警戒態勢を発令させます。ネズミ一匹外に出しません。ですので直人さんは今夜はお休みになって下さい。』
エリーがそう言うのだが、凛は直人にとって唯一の肉親。眠ってなどいられない。
『お気遣いありがとうございます。ですが俺も探索に加わります。黙って寝ているなど出来ません。』
『そうですか。わかりました!でもくれぐれも無理はなさらぬようお願い致します。私達も冒険者ギルドに依頼を出し情報を、集めます。』
『ありがとうございます。俺も俺なりに出来る事をやるつもりです。』
そう言って直人は夜の街へと繰り出すのだった。
(クソッ!俺とした事が、妹1人も助けられないのか。何で俺はこんなに弱い。何で俺はこんなに力がない。どうして。)
その後、1週間が過ぎた時にようやくアリスの居場所が判明した。王都の少し離れた村の魔物討伐クエストをしていた冒険者パーティーがアリスに似た人物も見たと言うのだ。王城では、そのパーティーに話しを聞きアリスと特徴が一致した為、直ぐに凛奪還作戦が開始される。そのころ・・・・。
【???にて】
『よくやった、アリスよ。これで魔王様が復活出来る。魔王様が復活なさったらお前の妹を解放してやる。その後は好きにするが良い。いずれ世界は終わるがなっ。さぁ、世界の破滅へのカウントダウンといこうか!フッハッハッハッハッ』
(これでようやく妹と暮らせる。すまない直人さん凛さん、でもこうするしかなかったんだ・・・・・こうするしか。)
直人達は、アリスに似た女性が目撃されたとされる村に向かっていた。
(頼む凛、無事でいてくれ!お兄ちゃんが何としてでも助けてやるからなっ。)
【???にて】
アリスは凛の食事を手に凛が隔離されている部屋へと来た。その顔は何処か悔しそうにしていた。
『食事だ、食べろ。何も食べないとこのまま餓死にだぞ。』
そう言ってアリスは凛の目の前に食事のトレーを置いた。そると凛は
『ありがとうございますアリスさん。』
『私はお礼を言われる事など何一つしていない。盗賊に襲われた時に助けてもらった恩があるのに、それを仇で返しているんだからな。お礼を言われる資格などない。』
『それでも、いつも気にかけてここに来てくれているではないですか。私はそれだけで十分です。
それにアリスさんにも何か理由があるのでしょう?そうじゃなければエリー様達を裏切ってまでこんな事するはずがないんです。
アリスさん、一体何が今のあなたをそうさせているのですか?お話しを聞かせてください。私達にも何が出来る事があると思うので。』
そう凛が言うと、アリスが語り出した。
『私には妹がいてな、昔村が人攫いの盗賊に襲わらたんだ。その時に両親は私達姉妹を逃すために死んだ。
私達姉妹は必死に逃げた。でもまだ幼かった妹は2人が逃げ切るには自分が足手纏いだと思い、自らを囮にして私を逃した。
妹が奴らに捕まる姿を見て私は何も出来なかった。
それから私は離れ離れになり生きている事さえわからない妹を探す旅に出た。
そうして、ようやく妹を見つけ出し2人で逃げようとした時に今の盗賊団に捕まった。
私は、妹を助けたいなら魔王復活の鍵となる聖女を探し出せと言われて王城なら聖女に関わる情報が手に入ると思い、エリー様を利用した。
私はエリー様の侍女になる為必死に努力した。やがてその功績が認められてエリー様の侍女になる事が出来た。それから数年が経ちついに聖女を見つける事が出来た。
それが凛様だ。凛様を連れてくれば妹を解放すると言われ私は行動に移した。すまない、私の身勝手な振る舞いのせいで凛様や直人様を巻き込んでしまって。
どうしようないクズだとは分かっている。でも仕方なかったんだ。私にはそれしか出来なかったから。本当すまない。』
『そんな事があったんですね。アリスは何も悪くありませんよ。自分と妹さんの為に他人を利用した。きっと兄さんでも同じ状況になればそうしたと思います。
もしかしたら兄さんならもっと酷い事をしていたかもしれませんね。兄さんは本来自分が受けるであろう呪いを唯一の肉親の私が受けてしまった事をいまだに引きずっていますからね。
私は何とも思っていませがむしろ兄さんがかからなくて良かったとすら思っています。兄さんが呪いを受けていたら私は、今の兄さんみたいに強く生きてはいないと思っています。
何処で挫折して一生悔いて生きていたと思います。だから呪いを受けたのが私で良かったんです。』
『凛様はまだお若いのお強いのですね。それに比べて私は・・・・・・・・。さて、話しが過ぎました。そろそろ見張りが戻って来るので私は戻ります。またお話しを聞かせてください。』
『分かりました。その時を楽しみにしています。』
そうしてアリスは何処かへ消えていった。