窮地に現れたのは・・・。【其の4】
「おーい、直人何処に行った?おーい。ほんと、妹の事になると周りが見えないのかよ。どんだけシスコンなんだよ。」
1人の男の子が上空から直人を探している。見た目は人間だが、背中には少し小さめな白い羽が生え、頭上には光り輝く輪がある。まさに天使である。歳はシーレより少し上ぐらいだろうか。歳の割には、幼さもなく顔だちもはっきりしている。
「あ!居た!って、もう戦ってるよ!どんだけ戦いが好きなんだよ。」
「坂柳流奥義 インフィニット・ブレード(無限の刃)
直人がスキルを放つと、アリスの横に立っていたナアマに無数の刃が襲い切り刻まれる。
【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】
ナアマは、両手、両足、胴体を切り刻まれバラバラになる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
両腕のない上半身だけのナアマが言った、
「何なのよ!あんたは!次から次へと何処から湧いて出てくるのよ!痛いじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何とか言いなさいよ!聞こえているんでしょ!?」
「とっとと再生したらどうだ?出来るんだろ!?」
「うるさいわね!いちいち言われなくても再生するわよ!」
ナアマの両腕、両足、下半身が上半身へと近づきくっついていく。元の姿に戻ったナアマは立ち上がる。そして、
「おーい、直人!やっと見つけたぜ。まったく、早すぎなんだよ!って、げっ!何でこんな所に堕天使が居るんだよ!最悪じゃねーか!」
少年はナアマを見た途端、顔が引きつり冷や汗をかく。
「お前が遅すぎなんだラファエル。俺はついて来れなかったら置いて行くと言ったぞ!」
「直人の疾風迅雷が早すぎなんだよ!誰もあんなのついて行けねーよ!」
天使の少年の名前はラファエル。四大天使の一人で回復を司る天使だ。ここに来る途中に直人と出会った。
「ラファエル、さっそくで悪いそこで倒れてる女性の手当てをしてくれ。大事な人なんだ。」
「あー、この人が直人の言ってた思い人か!なるほど!」
【カチャ】
「あーーーーーーー!嘘!嘘っ!わかった!わかったから!頼むから、その剣を抜くな!俺が死ぬ。」
冗談で言ったつもりが、状況が状況なだけに直人には通じない。そこには、全身ボロボロになったアリスが倒れているからだ。ラファエルがアリスに近づく。
「あ・・・あなたは。」
「俺の名前はラファエル、四大天使の1人!回復を司る天使さ!わけあって、直人と共に居る。そんじゃ、今から回復魔法をかけるから。」
「エンジェル・ヒーリング(天使の癒し)」
ラファエルが魔法を唱えると、アリスの傷口、状態異常が見る見るうちに回復していく。引きちぎられそうになった腕の神経も何ともない。
「す、すごい。こんなことあり得るの?」
「ま、俺は天使だからな!」
「な、何てお礼言えば。ありがとう。」
「いいのいいの!気にすんなって。」
ラファエルは両手を頭の後ろで組みニカッと笑う。何処かガロードに似ていると思うアリス。アリスは、ガロードに続き2人目の弟が出来た気分だった。
「ねぇあなた達、私の事忘れてない?黙って見てればそこの女まで回復させちゃって・・・。またいたぶらなきゃならないじゃない。それはそれで、疲れるんだけど?」
「え?堕天使のねーちゃん、そんな事気にしてんの?気にするだけ無駄だよ!?」
「それは、どー言う意味かしら?」
「えぇ!?そんなのも分からないの!?もしかして、堕天使になったばかり?」
「あなた、なめてるの?殺すわよ?」
「こわっ!このねーちゃん超怖いんですけど。」
「もう、いいわ。坊や死になさい。」
「それは無理。」
ナアマがラファエルに魔法を放とうとした時、ラファエルは右指を鳴らす。
【パチンッ】
【ドバンッ】
すると、ナアマの目の前で爆発が起き、一瞬にしてナアマの上半身が消し飛ぶ。
「だから言ったじゃないか。ねーちゃんでは、俺達には勝てまいよ。絶対ね。」
【ボコッ】【ボコッ】【ボコッ】【ボコッ】【ボコッ】
「ふーん、少しはやるようね。でも、いくらあなたが強くても私は何度でも再生出来る。永遠にね。あなた達は私に勝つことは不可能なのよ。わかった!?」
「ふーん。だから!?それがどうしたの!?そんなのやってみないと分からないじゃん!」
「だったら試してみる?私は一切攻撃しないわ。思う存分、攻撃しなさい。さぁ、ほら、ほら、ほら。」
ナアマは両手を広げ無防備な状態になる。そして、ラファエルはナアマに対して次々に魔法を放つ。
【ドバン】【ドバン】【ボコッ】【ボコッ】【ドバン】【ボコッ】【ボコッ】【ドバン】【ボコッ】【ドバン】【ボコッ】
いくらラファエルが魔法放ってナアマを攻撃しても、ナアマはすぐに身体を再生させる。
「そろそろ頃合いかしら?」
「いけない!そいつに触れられてはダメ!与えたダメージが反転して自分に返ってくるわ!」
「もう遅い!」
ナアマは、ラファエルの目の前にまで一気に進み、右手でラファエルを掴む。が、
【ザンッ】
【ボトッ】
伸ばした手は、ラファエルには届かず切れて落ちる。
「なっ!」
「悪いな堕天使。残念だが、お前がこの先俺達に触れることは出来ない。俺には未来が見えているんだ。」
疾風迅雷で速さを底上げしている直人は、まるで見えていたかのようにラファエルの横に立ち、ナアマの右手を切り落とした。
「み、未来だと!?」
「あぁ、まだ2秒先までしか見えないけどな。でも、それだけあれば十分だ。」
「貴様はいったい・・・・・・・・」
「時間が惜しい。一気に決めさせてもらう。行くぞラファエル!」
「了解!」
坂柳流奥義 インフィニット・ブレード
【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ】【ザンッ」
見事にバラバラになるナアマ。だが、すぐに再生を試みるのだが、
「いまだ、ラファエル」
「おうよ!」
「シャイン・ライト(輝く光)」
ラファエル両手を前で組み祈るような形で魔法を放つ。すると、地面に広範囲の魔法陣が浮かび上がり、地面から上空へと光の柱が放たれる!
【キィィィィィィィィィィィィィィィィィィン】
【ドーーーーーーーーーーーーーーーッン】
チリ一つ無くなるナアマ。
「す、すごい。あの堕天使をこうもあっさり。」
「へへへへへっ!どうだ、すごいだろねーちゃん!これが俺様の実力だ!」
【ゴンッ】
「痛っ」
「調子に乗るな!ラファエル!立てるかアリス。」
直人は、座っているアリスに手を伸ばす。アリスはその手をとり立ち上がる。
「えぇ、ありがとう直人。」
「悪い、色々あって遅くなった、すまない。」
「直人・・・・・・。生きてて良かった。本当に良かった。心配したんだから。」
アリスは、直人の胸に顔を埋め泣きながら声を発する。
「大丈夫だ俺は、ちゃんと生きてる。それより、アリスも無事でよかった。」
直人は、アリスの頭を撫でながらアリスが生きていてくれたことに感謝する。
「そういえば、凛とあの魔道士は何処に居るんだ?」
アリスは直人の胸から顔を離し、涙を拭いて説明する。
「凛様は今、あそこでガロードと共に堕天使と戦っています。魔道士のフレデリカは、その奥でアザゼルに操られたタクトと戦っております。」
「何!?ガロードも居るのか!!」
「はい、ガロード達は私達が来るより先にアグリアスを守ってくれていました。それにシーレの眷属のフェンリル。それから私の妹のレイナいます。レイナはガロードが助けてくれたみたいです。それと、シーレは、何処に居るかわかりませんが、フェンリルが居るとなると、エリー様の所かと。」
「アリスの妹もか。良かったなアリス!じゃ、こんな戦い早く終わらせよう!そして、みんなの再会を祝おう!」
「はい、そうですね!行きましょう、ガロード達の元へ!」
直人、アリス、ラファエルの3人が正門の方に移動しようとした時だった。
【ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン】
「な、何だ!何が起きた!?」
正門の方でもの凄い爆発がした。
「急ぎましょう直人」
「あぁ。」




