窮地に現れたのは・・・。【其の2】
「では凛さん、あたしもタクトの方に向かいますね。お気を付けて。」
「はい、わかりました。フレデリカさんもお気を付けて。」
そして、フレデリカが到着した時、すでにガルはガロードの方に向かっており、シェリーと低ランクの冒険者達はタクトを倒し残りの魔物を討伐していた。
「あれ!?タクトは何処!?」
凛が確認した時には確かに存在していたタクト。だが、フレデリカが到着した時にはタクトの姿はなかった。フレデリカの存在に気が付いたシェリーが、
「お!?嬢ちゃんどうしたんだい!?こんな物騒所に何か用か?」
紫色の血の付いた大剣を片手に持つシェリーがフレデリカに声を掛けた。血が滴り落ちる大剣を見たフレデリカは唾を飲む。そして、
【ゴクリッ】
「あ、あのここにアザゼルに操られた剣士が居たと思うのですが何処に居ますか?」
「アザゼル?操られてた?ああ、さっきのとんでもなく強かった剣士か。それならついさっき私が倒したぞ。ほら、そこに残骸が・・・・・・・・・。なっ!」
シェリーが、大剣でタクトの肉片が散らばる所を差すのだが、そこには剣も装備も何もなかった。そして次の瞬間、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
冒険者達の悲鳴が飛び交う。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。」
そこには、シェリーによって粉々になったはずのタクトが冒険者達を襲っていた。
「な、なんで、死んだんじゃないのか?ぎゃゃゃゃゃゃ。」
「タクト!!!!」
「何だと!確かに私が粉々にして倒したはずなのに。あそこから再生したとでもいうのか。」
「ガァァァァァァァァァァァァァ!」
「チッ!全く面倒だね!跡形もなく消滅させないとダメってのかい!」
「やめてタクト!お願い、正気に戻って!」
「無駄だ嬢ちゃん。こいつは既に死んでいる。化け物になっているんだよ!」
「違う!タクトは操られているだけ!死んでない!」
王都イザークで確かにタクトは堕天使の攻撃を胴を受けただけ。死んでいる所は見ていない。なら、アザゼルに操られているだけだと都合よく考える事しか出来なかった。そんなフレデリカにシェリーは現実を突きつける。
「じゃ、そこで黙って見てな。今あたしが現実ってのを見せてやる。」
シェリーは一気にタクトとの距離を詰める。そして、タクトと斬りあう。両者譲らず激しい攻撃を繰り出す。
「お願いやめて!タクトを傷つけないで!タクトを・・・タクトを殺さないで!!」
シェリーは、フレデリカの言葉を無視して攻撃を加速させる。徐々にタクト体に傷が付き始める。そして、タクトがシェリーの攻撃を捌ききれなくなって、2~3歩後退する。そこをシェリーは見逃さず、タクトの首を刎ねる。首が無くなった胴体は地面へと倒れる。
「イヤーーーーーーーーーー!タクトォォォォォォ。」
大粒の涙を流し大声を上げ必死にタクトの名前を呼ぶフレデリカ。その光景を黙って見ているシェリー。そんなシェリーを殺気だって睨みつけるフレデリカ。しかし、ここでタクトの体が起き上がり顔の再生を始める。
【ボコッ、ボコッ、ボコッ、ボコッ。】
完全に元通りになったタクト。そんなタクトを見たフレデリカは言葉を失う。もう、フレデリカの知っているタクトではないと現実を突き付けられたフレデリカ。
「これが現実だ。あいつは首を刎ねても蘇る不死身の存在だ。わかったか?」
「い・・・や・・・・・・。い・・・・・・・・や・・・・
イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。」
フレデリカは頭を抱え地面へとへたり込む。そんなフレデリカをみたタクトは、彼女に向けて斬撃を放つ。
【バシュッ】【ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ】
現実を拒否しているフレデリカは立てない。斬撃が飛んで来ようと、頭を抱えたまま乱心状態のフレデリカ。フレデリカにタクトの斬撃が当たる直前でシェリーがフレデリカを突き飛ばす。
【ドンッ】「きゃっ」
「何やってるんだいあんた!そんなに死にたいのかい?ここは戦場だよ!何があろうと不思議じゃない!」
「でも、でもタクトは・・・」
「現実をみな!首を刎ねられても生きてる、そんなのが人間であるはずないだろ!いい加減現実を受け入れろ!じゃないと、次は確実に死ぬぞ!」
未だに現実を受け入れられないフレデリカ。座りながら頭を抱え言葉を発するフレデリカ。
「違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。あれはタクトじゃない。違う。絶対に違う。タクトはあたし達に攻撃などしない。違う。違う。違う。違う。違う。違う。」
完全に心が折れたフレデリカ。呪文唱えるかのように永遠と言葉を発している。
「嘘。噓よ。嘘に決まっているわ!あんなのタクトじゃない・・・・・・・・あんなに優しかったタクトがあたし達に攻撃するはずないのよ!・・・・・・・。ああ、そうか・・・これは夢だ。きっとあたしは嫌な夢を見ているだけなんだ。目が覚めればまたみんなと冒険できる。そうよ、あたしにはみんなが居る。そうよね、ミント!?ムラサメ!?ガイル・・・・・・・!?ねえ、みんな何処に居るの?意地悪しないで返事してよ!あたしはここに居るよ!?」
「おい!誰でもいい!その邪魔な女をどこかに連れて行け!戦いの邪魔だ!」
「は、はい」
他の冒険者がフレデリカを安全な場所に連れて行こうとするのだが、フレデリカが抵抗する。
「イヤ!放して!あたしに触らないで!」
「チッ!世話が焼ける子娘だね。」
シェリーはフレデリカに近づき、フレデリカの頬を思いっきりビンタする。
【パッーーーン】
「痛っ!何するのよ!」
「それはこっちのセリフだ!あんたがこうしている間も、他の冒険者は戦い、命を落としている。周りを見てみろ!あんたが殺したんだぞ!あんたが現実を受け入れずもたもたしてる間に何人死んだと思っているんだ!」
フレデリカは、ビンタされた頬に手を当て周りを見渡す。そこには、冒険者が必死に戦っている。中には、心臓を貫かれ息絶える者、手を斬られる者、悲鳴を上げ逃げようとして背中を刺されもがき苦しむ者。まさに地獄絵図だ。
「貴様はここに来て何がしたかったんだ!?ここに来てしたかった事が、乱心状態になり死ななくて良かった者を殺したかっただけか!?」
「違う。私はただ、タクトを止めたかっただけ。それだけなの。」
「だったら、お前の手で止めて見せろ!お前の手で楽にしてやれ!あいつだって仲間だったあんたにそれを望んでいる!」
「タクト・・・・・・・・。」
「ガァァァァァ・・・フ・・・・フレデリ・・・・フレデリカ・・・・たの・・・・む・・・ガァァァァ・・・お・・・
お前・・・・お前の手で・・・・お・・・俺を・・・・・・
コ・・・・コロ・・・シテ・・・・クレ・・・・頼む・・・
これ以上・・・ガァァァ・・・罪なき人を・・・・・コロ・
殺したく・・・・ない・・・・お願い・・・・・だ」
フレデリカは、涙を拭って決意を胸に立ち上がる。両手で杖を握り、涙をこらえタクトを見る。そして、
「わかったはタクト。私が今、あなたを楽にしてあげる。ねえ、あなた。すこし時間を稼いでくれないかしら?とびきりの魔法を撃つわ!」
「やっとその気になったか。任せな!あんたは集中して魔法を唱えな!」
フレデリカは正面に杖を横にして構え魔法を唱え始める。フレデリカの足元に魔法陣が現れ、徐々に大きさを増していく。その間、シェリーはタクト動きを止めに入る。そして、フレデリカの魔法が完成する。
「出来ました!みなさん、離れてください。」
シェリーと冒険者達はタクトの周りから離れる。皆が離れた事を確認したフレデリカは魔法を唱えた。
「最上級火炎魔法 ヘル・フレイム(地獄の火炎)」
タクトの遥か上空に巨大な魔法陣が現れ、そこから真下に向けて巨大な火の玉が落ちる。タクトは、上空の巨大な火の玉をただ見つめる。そして、何の抵抗もせず火の玉を受ける。
【ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ】
「ありがとうフレデリカ。これでやっと楽になれる。元気でな。さよなら。」
フレデリカは最後にタクトが言った言葉を確かに聞いた。微笑むかのようにこちらを見たタクトを見た気がした。
「タクトーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
タクトの居た所は、火柱があがりすべてを燃やし尽くした。チリもなくなり、焼け焦げた地面だけがそこにはあった。
「何がありがとうよ。礼を言うのはあたしの方よ・・・・・
天国でみんなと見ていてね。タクト・・・ありがとう。」




