それぞれの戦い 【レイナ編 其の2】
レイナの放ったペネトレイトアローがナアマに直撃をする。舞っていた砂埃は晴れそこには、腰から上が無くなったナアマの下半身だけ立っている。やがて、バランスを失った下半身も地面へと倒れる。ピクリとも動かないナアマの下半身を見た冒険者達は、一斉に声を大にして叫ぶ。
「うおっしゃーーーーーーーーーーーーー!」
「やったぞ!あの、恐ろしい怪物を倒せた!」
「この嬢ちゃんが居れば、俺達の勝ちが見えてくるぞ!」
「魔物ごときが人間様に楯突くからこうなるんだ!わかったか、魔物ども!」
「嬢ちゃんすげーなっ!どうだ、うちのパーティーに入らにか?優遇するぜ?」
「てめー、俺が先に声を掛けようとしたんだぞ!横取りするな!」
「うるせー!こーいうのは早い者勝ちなんだよ!」
「何言ってるの!この子は私達のパーティーに入るのよ!ね、こんな野蛮な男達が居ない女子だけで結成された私達のパーティーに入らない?」
【ボコッ、ボコッ、ボコッ・・・・・・・】
「い、いえ。私はもう別のパーティ・・・・・・・・」
【ドンッ】
「えっ!?」
「あらあら、みなさん油断しすぎですよ。敵はちゃんと、跡形もなく消さないと。再生能力のある魔物も居るんだし!?まさか知らないわけじゃないわよね?」
一斉に声のする方向を見る冒険者達、そこには先程まで下半身のみが残っていたナアマが元の体に再生し立っていた。そして、冒険者達が浮かれている時レイナに向けて魔法を放った。ナアマの魔法はレイナの脇腹に当たり、脇腹をえぐられたレイナはその場に倒れこみ声にならない悲鳴をあげる。
「あああああああああああああああああああああああああ」
「お、おい嬢ちゃん大丈夫か!今、神官を呼んでくるからな!待ってろ!」
「・・・あ・・あ・・・ああ・・・・・あああ。」
レイナは既に死の一歩手前まで来ていた。直ぐに神官の回復を受けないと体がもたないと他の冒険者もわかっていた。だがしかし、そんな事を許すナアマではない。仮にも自分にあそこまでダメージを与えた冒険者、回復でもされたら面倒なことになるのが分かっているからだ。そして、再びナアマの牙が冒険者達に向く。
「私が、回復を許すとお思いで?残念。その子は今ここで死ぬのよ。そして、あなた達もね。痛みを感じることなく殺してあげるから感謝しなさい。」
「くそ!誰でもいい!この子を王城へ連れて行け!あそこなら神官が居るはずだ!」
「あら!?そうなの!?これは良いことを聞いたわ!そこさえ潰せばあなた達は回復する手段がなくなるのね?なら、まずそこを潰さないとね。」
「しまった!」
「ねえ!アザゼル!聞いてるんでしょ!?王城に誰か向かわせてそこを潰してくれないかしら!?生憎、私はここを離れるわけにはいかないから。」
「わかりました。サマエルを向かわせます。ラハブもベリアルもそれぞれ現場で戦っていますので。」
「十分よ!ありがとう。さてと、じゃあなた達は死んでちょうだい。そこに転がっている子と違って雑魚を相手にする時間はないのよ。」
「くそ、なめやがって!みんな!かかれ、あいつをここで倒す!」
「雑魚がいくら束になっても同じなのにね?何で分からないのかしら・・・・。可哀想な人間。」
ナアマは、向かってくる冒険者達を次々と殺していく。容赦なく、笑いながらただ一方的に。
【ヒュッ、ヒュッ、バンッ、バンッ、ザシュ】
【ボトッ、ボトッボトッ、ゴロン】
圧倒的だった。冒険者達は見る見るうちにその数を減らしていく。1人、また1人。最終的には、レインが最初に声を掛けた冒険者だけになる。
「すまね、嬢ちゃん。俺達が油断したばかりに・・・。」
「あ・・・・・ああ・・・にげ・・・・げて・・・にげて・・。」
「ありがとよ嬢ちゃん。でも、ここで逃げたら俺は一生自分を恨んで生きていくことになる。それだけは勘弁だ。最後まで冒険者でいたいからな。先に、あの世に行ってるぜ。じゃぁな」
「あら!?あなた逃げないの?てっきり逃げるのかと思ったのだけど。」
「ぬかせ!誰が逃げるかよ!あんたに1撃食らわせるまで死ねねーんだよ!」
「そう、残念ね。わかったわ、じゃ、その勇敢さに免じて1撃だけ攻撃していいわよ!?私は攻撃しないから全力でかかってきなさい!ほら、どうぞ!」
ナアマは両手を広げて、攻撃をうける体勢をとっている。隙だらけな構えでただ立っているだけ。
「後悔しても知らねーからな!行くぞ!」
剣士の男は、魔力を剣に集中させて渾身の1撃をナアマに食らわせる。
【ガキンッ】
全力の1撃はナアマに当たったと同時に、傷一つつけることが出来ずに剣が折れる。
「残念でした。はい、終わり。」
【ザシュッ】【ボトッ】【ブシューーーーー。】
冒険者は胴体を真っ二つに斬られ、血しぶきが舞う。ナアマは斬られた冒険者に見向きもせず、レイナの元に向かう。地面に横たわっているレイナをみてナアマは、
「やっぱりダメね。そこらの冒険者じゃ私には傷一つつけられないのだから。その点あなたは優秀よ!私の上半身を消し飛ばしたんだからね。せめて楽に殺してあげる。あの世で他の冒険者と仲良くね。バイバイ。」
ナアマの右手に魔力が溜まり、目の前で地面に横たわっているレイナへと魔法が放たれる。
【ドンーーーッ】




