決戦!王都アグリアス 其の1
王城は、堕天使の侵攻を阻止しようと人の流れが慌ただしくなっている。エリー達も、不備が無いか入念に作業を進めている。そんなある日の朝の事だった。ついに堕天使の軍勢が王都アグリアスに向けて侵攻してきたとの情報が入る。
「失礼します。つい先ほど、近くの村に魔物の群れが押し寄せてきました。村で防衛線を張っていた者達は全滅し、ついに王都アグリアスから目視できるほどまで魔物の群れが近づいてきました。いかがいたしますか?」
「直ちに、各冒険者に連絡し手はず通りに作戦の開始を宣言せよ!」
「はは!かしこまりました。」
「ついにこの時が来ましたね。エドワード準備はよろしいですか?」
「はい。完了しております。しかし、本当に良いのですか?私が前線に出てしまっても?」
「問題ありません。私だって自分の身は自分で守れます。それに、この国で1番強いエドワードが前線に出れば他の者の士気も高まりましょう。」
「かしこまりました。何かあれば直ぐにお伝えください。」
「ええ、そうするわ。エドワード、死ぬんじゃないわよ。」
「姫様も。」
そう言って、エドワードは王都の要でもある正門に向かっていった。
「さて、私も出来ることをしないとね。」
エリーも精霊の力を借りて王都全体に結界を張る。結界を張り続けている間、エリーはその場から動くことを許されない。なので、エリーの周りにはAランクパーティーがいくつか護衛として居る。
そのころ、凛達も王城アグリアスに向けて進んでいる。直人の事が気がかりで仕方ない凛は、どうも落ち着かない様子。そんな矢先、王都アグリアスに近づくにつれて魔物が増えてきている。指揮をとっているのはアリスだった。
「フレデリカさん、前の魔物をどうにか出来ますか?」
「ええ!楽勝よ!任せてちょうだい。」
ここ数週間で、フレデリカも凛達に心を開いていた。初めのころは不器用だったものの、今では友達感覚で話せるようになっていた。
「食らいなさい!エクスプロージョン!」
フレデリカが魔法を唱えると、前方で炎の爆発が起き辺り一面の魔物が灰とかしていた。
「相変わらずすごいですね、フレデリカさんの魔法は。」
「そんなことないよ!凛ちゃんのホーリーレインに比べたらまだまだだよ。あれは凄すぎ」
「でも、ホーリーレインは燃費が悪くて何発も打てないのが欠点。フレデリカさんのMPの多さが羨ましいと思いますよ。」
「2人も、無駄話しはそこまでですよ!王都が近いこともあって魔物が増えて来てますからね。気を抜かないように!」
「「わかりました」」
こうして、凛達も順調に王都アグリアスに近づいている。一方、エドワードたちは、
「おい、見ろ!エドワード様だぞ!ついに鬼神様のおでましだ!」
「「「うおおおおおおおおおおおおお。」」」
エドワードが、正門に到着すると一気に士気が高まる。すると、大剣を背負った1人の女冒険者がエドワードに話しかける。その女はエドワードがSランク冒険者の頃、共にパーティーを組んでいた女性である。彼女もまたSランク冒険者の1人だ。
「よう!エドワード!元気そうだな!またお前と共に戦える日が来るとはな!」
「なんだ、シェリーか。儂はお主には会いたくはなかったがな。相変わらずそんな物騒な物をぶら下げおって。」
「何だい?照れてるのかい?いい歳こいた爺がなに言ってやがる!もっと喜んでもいいんだぞ?」
「はあ。その口調と性格どうにかならんのか?パーティーを組んでいたころから何一つ変わってないなお主は。」
「ははははは!誉め言葉として受け取っておくよ!んで、どうすんだ?エドワード?お前は正門担当か?」
「ああ、ここは絶対に落とせないからな。ここが崩壊すれば一気に魔物が王都へと雪崩れ込むからのう。」
「じゃ、私は西門でも行くかな?あそこは冒険者は居るがランク低いのばかりだからな。」
「そうしてくれると助かる。お前の強さを知ってる俺からしたら十分にありがたい申し出だ。」
「はっ!らしくないこと言うなこの爺は!ま、せいぜいくたばんなよ!じゃーな!」
「まったく、口の利き方と性格さえ良ければ立派な冒険者なんだがな。」
各自、持ち場に着いたところでついに戦闘が開始される。倍は居るであろう魔物の群れに対してエドワードが叫ぶ、
「魔道士部隊、放て!」
エドワードの掛け声と共に一斉に城壁の上に居る魔道士部隊が魔物の群れに向かい攻撃魔法を放つ。それと同時に、攻撃をうけた魔物の群れも一斉に王都へと走り出す。
「続けて弓部隊放て!」
その後すぐに、各属性の弓矢が放たれる。少しの動揺があった魔物達も遠距離からの攻撃を仕掛けてくる。
「各自散開!手はず通りに!必ず1体1では戦うな!いいな!」
「「「はい」」」
ついに始まった人類対魔物の戦い。ここからさらに戦場は過激になっていくのであった。




